●特集『平成21年 研究成果発表会』
平成15年の建築基準法改正以前に建てられた学校では,ホルムアルデヒド濃度が高い場合があります。しかし,ホルムアルデヒドは経時変化による濃度低減が起こりにくく,また発生源が多岐にわたるため対策が難しいことが多いのが現状です。
今回は毎年の夏期定期検査でホルムアルデヒド濃度が「学校環境衛生の基準(100μg/m3 )」の2倍の200μg/m3に近いパソコン実習教室について,放散源の探索と対策の検討を行いました(写真1)。
「学校環境衛生の基準」:学校環境を衛生的に維持するためのガイドライン 。教室内の空気環境以外にも,照明,騒音,温熱環境,飲料水等について検査方法や基準値が示されています。
過去の研究報告や我々の測定から,パソコンは汚染源ではないと判断しました。そこで,室内の壁,床,天井面を部位別簡易測定器で測定しました。その結果,床の継ぎ目からやや高い濃度が測定されました。そこで床を調べてみると,パソコン等の配線を通すための二重床構造になっていました。そこで,二重床の床下空間の濃度を測定したところ,極めて高いホルムアルデヒド濃度が検出されました(写真2,3)。
床の一部を切り取って,小形チャンバー法と呼ばれる日本工業規格(JIS)で定められた方法で測定を行ったところ,極めて高濃度の放散量が検出されました(写真4)。この教室は建築基準法改正以前に改装されたことから,現在の規制に合致しない材料の使用が考えられます(写真5)。
これらのことから,床下地から発生したホルムアルデヒドが床下空間から室内に流入しているのではないかと考えられました。そこで,床面に簡易的なファンを取り付けて床下空間の空気を排出し,空気の流れを室内→床下→屋外に整理して,床下のホルムアルデヒドの室内への流入を防ぎました(図1,写真7)。その結果,28℃換算で室内の濃度を180μg/m3から100μg/m3( 学校環境衛生の基準 )以下にすることができました(図2)。
今回の事例で床下換気による低減効果が見られたため,今後は模型等を用いて検討を重ねて,最小限の換気量で室内のホルムアルデヒド濃度を効率的に下げられる技術を開発する予定です。
本研究の一部は「財団法人トステム建材産業振興財団」の助成によって行っています。