●特集『平成21年 研究成果発表会』
アセチル化とは,木材成分をお酢の成分である酢酸(さくさん)と反応(エステル化)させて結びつける処理です。アセチル化木材は,見た目や風合いは無処理木材とほとんど変わりませんが,次のような特長を持ちます。
1.腐朽菌やシロアリ,フナクイムシに強くなります(耐久性の向上)。
2.水分による伸び縮みが小さくなります(寸法安定性の向上)。
3.紫外線や風雨に強くなります(耐候性の向上)。
4.音響的性質が向上します。
5.お酢の成分しか含まないため,人や環境に対して安全・安心です。
各性能の向上はもちろん,人や環境に対する高い安全性は,これからの時代に大きなセールスポイントになると期待されます。今回は,これまで林産試験場がアセチル化木材の製品化・実用化を目指して行った取り組みについてご紹介します。
(1)気相アセチル化法の検討
薬剤蒸気中で処理する方法(気相アセチル化法)を検討しました。この方法は耐圧容器を必要とせず,浸漬処理のように木材全体を薬剤に浸す必要がないため,比較的簡易な処理装置と少ない薬剤使用量で処理できることがわかりました(図1)。
(2)気相アセチル化に伴う木材の変形や欠点の発生を抑える方法の検討
アセチル化は,反応に伴って材が元寸法より膨らむという特徴があります。これは反りや割れなどの発生要因となります。そこで,木材乾燥時のねじれ防止の知見を利用して抑制方法を検討した結果,変形や割れを抑制できました(図2)。
(3)木材乾燥機を活用した実大処理装置の検討
実大材による製造試験を行うため,材長180cm(六尺材)が処理可能なステンレス製処理槽を試作し,その熱源として木材乾燥機の利用を検討しました(写真1)。
今回の研究によって,板材から正角材まで,部材形状に対応した気相アセチル化木材の製造技術が開発できました。また,実大サイズの処理装置についても見通しを得ました。この成果を基に,安全・安心な性能強化木製品の提案・普及促進に努めてまいりたいと考えております。