●特集『平成21年 研究成果発表会』
道内のカラマツ人工林資源は成熟期を迎えている一方で,材価の低迷,再造林の停滞から将来にわたる持続的な供給が危惧される状況にあります。
カラマツ材の付加価値向上のためには,強度的優位性を活かした建築用材としての需要拡大が不可欠であり,さらに,一昨年の建築基準法改正以来,建築材料に性能明示を求める声が高まっていることから,強度性能を基軸とした展開がカラマツ需要拡大のポイントになると思われます。
本研究では,ヤング係数等を指標に原木段階で利用適性を評価し,要求される性能に応じた最適な原木選別・供給を行うことによる,建築用材の効率的生産,製品歩留まりの向上等について,集成材ラミナを例に検討を行いました。
道内 3 地域の 8 林分から伐採した原木を用いて,原木のヤング係数と得られたラミナのヤング係数との関係を調べ,原木段階での強度選別によるラミナの等級(L値)向上効果を検証しました(図1,図2)。
また,原木の選別基準値を変化させた場合に,得られるラミナから製造可能な集成材等級の割合をシミュレーションし,選別基準値を高くするほど高い等級の集成材が得られる割合が増えることを示しました(図3)。
集成材は強度等級ごとに組み合わせるラミナL値の断面構成が決められており(図4),製造に際しては各L値のラミナを一定の割合で確保することが肝要となります。原木の強度選別を行うことで,この割合に応じて効率よくラミナを供給できるため,歩留まりの向上が期待できます(図5)。
原木段階での利用適性評価としてヤング係数の計測は有効な手段ですが,実用に際しては計測のための設備が必要となります。そこで,より簡易な手法として,伐採時の林齢,直径,間伐履歴等と,得られる製材の強度分布の関係を調べ,これらを指標とした利用適性評価の可能性を現在検討中です。また,集成材だけでなく,無垢の柱・梁材についても同様の検討を行っていく予定です。