本文へ移動
 

 

平成21年度 林産試験場の試験研究紹介

企画指導部 企画課


 林産試験場では,平成21年度に46課題(うち新規18課題,平成21年4月末時点)の試験研究に取り組みます。その内訳は,北海道の研究予算で実施する重点領域特別研究6課題および一般試験研究13課題と,政策主導のトップダウン型研究として行う特定政策研究1課題に加え,国や法人等の委託や補助金を利用した外部資金活用研究15課題,民間企業等との共同研究10課題,受託研究1課題となっています。各研究課題の概要は以下のとおりです。

 重点領域特別研究及び一般試験研究,特定政策研究


I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1) 木造住宅の新構法開発のための部材接合部の応力伝達メカニズムと設計・評価手法に関する研究(重点:H21〜22)
 長期優良住宅の実現へ向けて有効な長スパン架構の設計技術を整理し,工務店等が道産材を使用して開発できるよう支援するための技術資料を整備します。特に接合部の仕様と性能について重点的に検討します。

2) 木材・アルミ複合サッシを対象とした遮炎性能付与要素技術の検討(一般:H21〜22)
 防火規制の厳しい都市部では窓などの開口部に遮炎性能を求められる場合が多いのですが,木材・アルミ複合サッシは国土交通大臣認定の取得が困難で,また,各メーカーは試行錯誤的に仕様を開発している状況です。そのため,遮炎性能を付与する要素技術の整理・検討と,耐火試験による性能確認を行います。

3) 木材保存剤の迅速性能評価技術の開発(一般:H20〜21)
 木製品を腐朽や蟻害から守る木材保存剤は,その性能の高さのみならず,安全性や環境への配慮,リサイクル性などが求められています。現在,新規に木材保存剤を開発する場合には,日本工業規格(JIS)や日本木材保存協会規格(JWPA)などに定められた試験による評価が必要ですが,試験に多くの費用や期間がかかるため,企業の製品開発のハードルが高くなっています。そこで,安価かつ短期間で木材保存剤の性能を評価し,候補物質を絞り込むための技術を開発します。

4) 可視光応答型光触媒を用いた室内空気浄化建材の開発(一般:H20〜21)
 住宅等の室内には多くの化学物質が放散されており,これまでもそれらを吸着する製品が数多く市販されてきました。しかし,これらの製品は吸着した化学物質を分解・無害化するものではないため,いずれ交換が必要となっていました。近年,新技術として注目されている光触媒は,これら化学物質を分解する機能があり,室内光でも作用可能な可視光応答型製品も性能が飛躍的に向上してきています。そこで,これら光触媒材料と吸着材料を組み合わせることによって,これまでにない空気浄化機能を持つ建材を開発します。

5) シックスクール対策用木質内装材料の開発(一般:H20〜21)
 平成15年度に施行された改正建築基準法以前に建築された学校施設について室内空気中の化学物質濃度を測定したところ,半数以上の学校でホルムアルデヒド濃度が厚生労働省の指針値を超えており,その中には教室の使用禁止等の対応をとっている学校もあります。学校における化学物質については躯体や下地から発生するケースが多いため,化学物質を遮断・吸着し室内へ流入させないような性能を持つ内装材料を開発します。

6) バイオガス利用促進に向けたアンモニア揮散抑制技術の開発(一般:H21〜23)
 バイオガスプラントでは,大量に発生する消化液の貯留時と農地散布時におけるアンモニアガスの揮散が問題となっていますが,その抑制方法として,吸着効果を有する木質熱処理物の効率的な利用技術や揮散抑制・土壌改良効果の検討,利用に適した性状を有する木質熱処理物製造技術の検討を行います。

7) 通年実施可能な優良原木選抜技術の開発(一般:H21〜22)
 林産試験場で開発した原木選別システムを凍結材へも対応可能に改良することで,通年実施可能とする技術を開発するとともに,選別の経済的メリットの明確化,選別基準値のルール化を図ります。

8) 野外木質構造物に発生する腐朽菌の遺伝子情報の整備と検出技術の開発(一般:H20〜22)
 野外木質構造物の適切な維持管理体制の構築に向けて,野外で主に発生する腐朽菌の遺伝子情報のデータベースを整備し,腐朽診断に活用するための,腐朽菌を容易に検出・同定する技術を確立します。

9) カラマツ人工林材の性能予測技術の開発(一般:H19〜21)
 道内のカラマツ人工林は成熟期を迎えつつあり,付加価値の高い建築用材としての利用促進が求められています。カラマツ材の効率的利用を促進する技術の一つとして,集成材用ラミナや製材の強度性能や材質を,立木や原木の段階で予測する技術を開発します。


II.木質資源の有効利用を図る技術開発

1) 廃棄物系バイオマスを利用した固形化燃料に関する研究(一般:H20〜22)
 家庭用燃料として開発された木質ペレットは,産業用燃料としては価格が高いため需要が伸び悩んでいます。そこで,コストダウンのために原材料として資源量が豊富で安価な建築廃棄物や農産残さ等の廃棄物系バイオマスを活用した固形化燃料を開発し,その安全性や品質の調査および製造技術を検討します。

2) 木材成分の溶解に適したイオン液体の開発(一般:H21〜22)
 木材はセルロースとヘミセルロースとリグニンが複雑に絡み合った複合体のため,既存技術では化成品の製造には利用できていません。そのため,各木材成分を溶解させるのに適した溶媒系を検討します。

3) 改質木材を利用した育苗培土の開発(重点:H20〜22)
 農作や園芸作で利用される育苗培土には,保水性や通気性,軽量性に優れるピートモスや広葉樹バークなどが用いられていますが,近年,資源の枯渇や環境保全による採取規制などにより供給や品質が不安視されています。そこで,伐根や枝条等の資源量が豊富で未活用な木質系廃棄物を改質して育苗培土資材として利用する技術を検討します。

4) DNAマイクロアレイ法を用いたきのこの食品機能性評価(一般:H20〜21)
 きのこは食物繊維やミネラルなどを豊富に含む低カロリー食品で,健康機能に関しても脂質代謝改善効果や血圧上昇抑制効果などがあるといわれています。しかし,それらの機能性については検証が十分ではなく,科学的確証の蓄積や消費者への適切な情報提供が必要です。そこで,食品機能性の探索に有効とされるDNAマイクロアレイ法を用いてきのこの機能性を解明し,きのこの消費拡大につなげるための科学的な根拠の取得を目指します。

5) 食用きのこ生産工程における副産物の高次利用を目指した物質変換プロセスの開発(重点:H21〜22)
 きのこ生産では規格外品や整形残さ,廃培地が大量に発生しており,その有効利用と付加価値向上が求められています。そのため,食品やエネルギーとして活用可能な有用成分への変換プロセスの開発と製品化の検討を行います。

6) 菌根性きのこ感染苗作出技術の開発(一般:H21〜27)
 本州のアカマツ林ではマツタケの林地栽培が行われていますが,道内においてはそこまでは至っていません。また,道内でマツタケが採取される天然林では林地栽培は困難なため,人工林での栽培技術の開発が必要です。そのため,北海道産マツタケ感染苗作出技術を開発し,道内人工林でのマツタケ感染苗の移植技術を検討します。


III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

1) 北海道産針葉樹の樹皮タンニンを用いたフェノール樹脂接着剤の改良(一般:H21〜22)
 針葉樹構造用合板の効率的な製造を図る上で,硬化温度を低下させ高含水率単板が使用可能となるフェノール樹脂接着剤の開発が求められています。その手法として,タンニンを含む道産針葉樹樹皮の利用を検討します。

2) 針葉樹合板の節脱落防止自動処理装置の開発(重点:H20〜21)
 針葉樹から合板を製造する過程で節が抜け落ちるのを防止するための処理方法を確立して,工場内で実用可能な自動処理装置を開発します。

3) カラマツ大径材による建築用材生産技術の検討(重点:H21〜22)
 今後出材が増加すると見られているカラマツの大径材は,品質や性能の確かな構造用の柱・梁の原料とすることで,従来の用途から付加価値を向上させることが求められています。その実現に向けた体制を整えるため,効率的な製材木取り補助システムと高品質乾燥技術を開発します。技術を開発します。

4) 地球温暖化と生産構造の変化に対応できる北海道農林業の構築(特定政策:H21〜25)
 地球温暖化への対応・適応策として,農林業においても生産構造の変化に対応した低コスト・省エネルギーなバイオマス生産・利用方法が求められています。そのため林業分野において求められている,二酸化炭素固定能の高い品種や,効率的な二酸化炭素の固定と排出削減を図る木材生産・利用システムを開発します。

5) 道内資源の使用量拡大を目指した建材開発と利用法に関する研究(重点:H21〜23)
 圧縮木材はスギ材を中心に床材等として普及が進んでいるものの,道内においては未だ生産拠点がありません。道産針葉樹材は新たな需要創出に向けた高付加価値化が求められており,そこで木材の新しい圧縮技術を開発するとともに,内装用建材等としての利用に向けた製品検討を行います。


 外部資金活用研究


 外部資金活用研究は,各省庁や所管独立行政法人等の委託や補助金等,各財団の研究助成事業等,競争型研究資金の公募に応募して採択された場合に実施される研究です。比較的大規模な研究予算を活用して,事業によっては他の研究機関や企業とも連携しながら製品開発・技術開発を行います。

1) 木質材料による「剛」なコーナー要素の開発と究極の木質ラーメンの実現(H20〜22)
2) 動的応答特性を考慮した木材接合部の耐力評価(H21〜23)
3) 地域材を活用した保存処理合板の開発(H19〜21)
4) 土壌成分や木材の腐朽生成物が関与する塩化ベンザルコニウムの溶脱メカニズムの解明(H20〜21)
5) 教室における木質二重床からのホルムアルデヒド発生の調査と対策(H20〜22)
6) 相乗効果発現薬剤による木材の発熱性,ガス有害性の抑制(H20〜22)
7) TOF-FTハイブリッドNIRシステムによる木質材料の総合非破壊診断(H19〜21)
8) 膨潤処理による木材の特性の変化(H20〜21)
9) 樹木の分子系統と動植相互作用系に着目した化学的防御と投資配分機構の実証的研究(H20〜22)
10) 防腐剤(CCA)処理木材の自動判別方法および有効利用に関する研究(H20〜22)
11) 道内カラマツ資源の循環利用促進のための林業システムの開発(H19〜22)
12) 木質炭素材料の化学構造解析と電磁波シールド性能に及ぼす影響の評価(H21)
13) 道産針葉樹を用いた圧縮木質内装材等における表面加工技術と官能・温冷感・接触感に関する評価技術の開発(H21)
14) アンチエイジング機能を有するきのこを利用した新規健康食品の開発(H21〜22)
15) 海岸流木のリサイクルに向けたシステム提案(漂着ごみ問題解決に関する研究(H19〜21)


 民間等共同研究


 民間等共同研究は,林産試験場と民間企業等が共同で製品開発や技術開発のための研究を行う制度です。研究の成果は,共同研究を行った企業が優先的に使用することができます。また,研究成果により得られる特許等の知的財産権は北海道と企業との共有となります。

1) 国産針葉樹や廃木材を原料とした構造用MDFの検討(H20〜22)
2) 高品質防火タモ材の製造条件の確立(H21)
3) 超高断熱窓の開発(H20〜21)
4) 外断熱改修システムを用いたダブルスキンカーテンウォールによる熱負荷低減効果の実証(H20〜21)
5) 床暖房用フローリングの性能試験の効率化(H21〜22)
6) 自然エネルギーと木質系資材を用いた除排雪作業軽減化システムの開発(H20〜22)
7) ゴムチップパネル床暖房システムの機能性向上に関する研究(H20〜21)
8) 畜産廃棄物を用いた食用菌の生産性向上に関する研究(H19〜21)
9) 針葉樹の利用に適したブナシメジ新品種の安定生産技術開発(H20〜21)
10) 住宅におけるペレット暖房システムに関する研究(H20〜22)


 受託試験研究


 受託試験研究は,民間企業・団体等からの委託を受けて,林産試験場が保有する技術蓄積をもとに,企業の技術向上や製品開発につながる研究を実施する制度です。共同研究との違いは,民間企業には研究の分担が無く林産試験場のみで実施すること,研究成果により得られる特許等の知的財産権は北海道に帰属することなどがあります。

1) 構造用合板の耐朽性向上技術の検討(H20〜21)

次のページへ