去る2月5日(木),6日(金)に,日産自動車株式会社テクニカルセンター(神奈川県厚木市)において,『北海道新工法・新技術展示商談会』(主催:北海道・独立行政法人中小企業基盤整備機構北海道支部)が開催され,道内の36社・団体が出展しました。出展者はそれぞれ自動車に関連した新工法や新技術の提案を,会場を訪れた日産自動車(株)とその関連企業からの来場者約1,200人に対して,熱心に説明されていました。
林産試験場からは「軽自動車用木質ガレージと自動車内装用木材加工技術の紹介」というタイトルで,わん曲集成材を使ったガレージ,CNC木工旋盤,色彩浮造り(うづくり)合板に関する展示を行いましたので,ここではその展示内容について紹介します。
展示の様子
わん曲集成材は,挽き板(ラミナ)を数枚重ねて曲げながら接着して作った材料で,曲線的な形状が特徴です。
そのわん曲集成材を使ったガレージは,これまで直線的なイメージの強かった木製ガレージと異なり,柔らかみのある独特な意匠を持っています。今回はこのガレージについて,パネルと動画を用いて紹介しました。来場者からは「関東ではガレージではなくカーポートがほとんどで,カーポートの開発も考えてみてはどうか」という意見もいただきました。
わん曲集成材を使ったガレージのパネル
わん曲集成材ガレージの説明動画 |
CNC木工旋盤は,3次元形状データから変換した加工データに基づいて高度な木材加工が可能な加工機械で,形状測定から加工までを素早く安価に行えることが特徴です。
今回は自動車に関連した提案ということで,シフトノブの加工を例にとり,パネルと動画,そして実際に加工した試作品の展示を行いました。多くの来場者が試作したシフトノブを手に取り,その感触を確かめていました。やはり木材の温かみのある手触りは大変魅力があるという意見が多かった中で,条件の厳しい車内環境に対する耐候性などについて,解決しなければならない課題があることも感じました。
CNC木工旋盤のパネル
CNC木工旋盤の説明動画 |
木材の表面をブラシなどで研削し,早材部と晩材部の硬さの違いを利用して,木目を浮き出させるように凹凸をつける加工を浮造り加工と呼びます。色彩浮造り合板は,接着層を着色した合板を作製し,軟らかい早材部だけを着色部まで削り込み,凹凸の色彩によって独特の意匠を持たせたものです。
現在は内装材や家具の材料として普及を進めていますが,自動車の内装材としても利用できないかと考え,展示を行いました。今回は説明動画とともに,5色の色彩浮造り合板を展示しましたが,初めて見るという方も多く,大変強い関心を示していただきました。ただし,実際に自動車の内装材として利用するためには,前述のシフトノブと同様,車内環境に対する耐候性に加え,他材料との接着性能についても明らかにしていかなければならないことがわかりました。
カラマツを用いて製造された色彩浮造り合板(林産試だより2007年12月号より)
色彩浮造り合板の説明動画 |
今回の展示商談会で出展された技術や製品は,林産試験場を除くと,木材とは縁の薄いものばかりでした。内装の一部で「木」を感じさせるものがあるものの,自動車は木材にとって遠い分野であるのかもしれません。確かに今回出展をし,来場者にいろいろな話を伺って,永く安定した品質が要求される自動車に木材を使ってもらうためには,まだまだたくさんの課題があることもわかりました。しかしその一方で,多くの方に関心を持っていただけたことで,木材の用途の可能性を見たような気がします。もしかすると,木をふんだんに使った車が当たり前のように走っている時代が来るかもしれません。そんな日を夢見て,研究を続けていきたいと思います。