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色彩浮造り合板を用いた家具のデザイン開発と試作

技術部 合板科 松本久美子


はじめに


 林産試験場では,北海道の人工林から出材される針葉樹材の有効利用に関する様々な研究を行っています。その一環として,主に構造用や梱包用などに使われるカラマツやトドマツの高付加価値化と用途の拡大を目指し,家具や内装用に使用可能なデザイン性の高い色彩浮造り*合板を開発しました。ここでは,色彩浮造り合板を用いた製品開発の試みについて紹介します。

 *針葉樹は春から夏にかけて形成される早材部が夏過ぎに形成される晩材部よりも柔らかいため,材の表面をブラシなどで研削すると早材部のほうが深く削れて晩材部が浮き出てきます。このことを利用して年輪を引き立たせてみせる加工法を浮造りといいます。

色彩浮造り合板とは


 色彩浮造り合板は,まず表層となる単板を顔料等で着色した接着剤を使って接着し,合板内部に着色層を形成します。次に合板の表面を浮造りすることで,表面の早材部が削りとられて着色部が露出し,木目に沿って色彩が現れます。着色には顔料を用いるので任意の色を設定することができます。例えば,赤や青などの原色を用いて存在感を演出したり,黒灰色を使って落ち着いた古材調にするなど,様々なイメージを創出することが可能になりました。
 また,色彩と同時に凹凸が付くことで,特徴的な風ぼうを持つ合板となりました。色彩浮造り合板は,現在特許申請中です(特願2008-114522)。

製品のデザイン開発と試作


 家具材や内装材といった用途が考えられる色彩浮造り合板ですが,使う色を変えることで自由に表現したいイメージをコントロールできるといった特徴を活かして,オフィス,店舗,住宅など様々な場所での使用を想定した家具のデザイン開発をおこない,その一部を試作しました。

○パーティション

 オフィスでの使用を想定して,色彩浮造り合板とわん曲集成材を組み合わせてパーティションを制作しました(写真1)。合板,集成材がどちらも積層材であることから,その利点を生かし,わん曲部材の表面に色彩浮造り合板を配しました。わん曲部材と組み合わせることで,曲面による柔らかさと木材の持つ温かさを表現しました。また,色彩浮造り合板の特徴的な彩りや模様を効果的に強調するために,製品への採用を一部のパーツにとどめ,木材本来の木目と対比させました。

写真1 パーティション

○シェルフ

 店舗等の商用施設での使用をイメージして,シェルフを考案し,試作しました(図1)。  独特の表現力を持つ色彩浮造り合板を透明なアクリル板と組み合わせることにより,色彩浮造り合板の躍動感やアクリル板の落ち着きが見る角度によって異なった趣を与える棚となっています。
 4枚の色彩浮造り合板は折りたたみが可能な接合となっていて,たたむことで容易に運搬することができます。また,つなげる浮造り合板の枚数を増減することで棚の幅を調節することができ,さらにそれらの広げ方でも微調整ができるなど,設置スペースや用途に合わせた使い方が可能な設計になっています。

図1 シェルフ

○トイボックス

 色彩浮造り合板にパステルカラーを配色して,子供用のトイボックスを考案しました(図2)。
 木の持つ柔らかさや温かみに触れることが情操教育の一助となるだけでなく,パステルカラーの色彩浮造り合板によって強調された木目の面白さやかわいらしさが子供の興味を引くことで,玩具の片付けや整理整頓を促す効果が期待できます。

図2 トイボックス

 また,これら以外に,家具・インテリアデザイナーの吉本亜矢氏(有限会社Y.IMAGINE),有限会社 杏和建具とコラボレーションしてオープンシェルフ「IRO」を制作しました(写真2)。「IRO」は,平成20年11月19~21日に東京ビッグサイトで開催されたIPEC2008デザイナーズ・ショーケースに出展され,大賞を受賞しました。

写真2 オープンシェルフ「IRO」

おわりに


 林産試験場で開発した色彩浮造り合板を用いた製品の事例を紹介しました。デザイン開発と試作の過程を通して,色彩浮造り合板の持つ表現力を製品に近い形で提案できたと思います。また,民間企業とともに製品開発をおこなうことで,よりデザイン性の高い製品を開発することができました。
 今後は,色彩浮造り合板の表面の凹凸や色彩の分布など,色彩浮造り合板の意匠性の評価を進めていきたいと考えています。

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