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●特集 2009木製サッシフォーラム

空気流通窓と温熱環境

道立北方建築総合研究所 環境科学部 居住環境科 月館 司


 はじめに


 最近事務所ビルや商業ビルで,大きなガラス面を使った建物や設計が,本州ばかりではなく北海道でも増えています。しかし,窓を広く取る,あるいは外壁全体をガラスにすることによって,暖房に必要なエネルギーが増える,あるいは日射がたくさん入ってきて冷房に必要なエネルギーが増えるということが起きます。また,ドラフト,冷たい気流が発生して足元にあたるなど快適性に問題が生じる場合が多いという欠点があります。それを解決するために,ダブルスキンやエアフローウインドウというものが考え出されました。

・ダブルスキンとは

 ダブルスキン(図1)は,当初はガラスの外にブラインドをつけたもので,日射がブラインドで吸収されて中に熱が入らず,冷房を削減する効果があるというものでした。ところが窓の外にブラインドがあると,風で傷んでしまいます。それを改善しようと外にもう一枚ガラスをつけたのが始まりだとされています。外側のガラスと内側のガラスの間にブラインドがあって,そこを自然換気します。

・エアフローウインドウとは

 エアフローウインドウ(図2)は,ダブルスキンと同じような構造で,ガラス2枚の間にブラインドがあります。ガラスの間を自然換気するのではなく,主に室内の空気をファンで送り込んで通気します。どちらも日射の遮へい,通気によって内側のガラスの温度が高くなります。それによって熱放射も改善されますし,ドラフトも防ぐことができます。

図1 ダブルスキンの模式図 図2 エアフローウインドウの模式図

・ペリメータレス化とは

 大きなビルでは窓側の空調と建物の奥側の空調を分けて行います。冬は窓側では暖房負荷が生じますが,建物の奥側は熱が逃げるところが無いので,人間や機器からの発熱で冷房負荷が発生します。すると窓側では暖房をしなければならない,奥のほうでは冷房をしなければならないということがまれに生じます。それを防ぐために,窓側がペリメータで奥側がインテリアといいますが,窓側を高性能にすることによって,そのペリメータを意識しないで空調できるようにするというのがペリメータレスという考え方です。

 快適性と熱の伝わり方


 快適性と言ってもここで取り上げるのは暑さ寒さのみです。どのように暑さ寒さが決まるかを示したのが図3です。人間から出る熱がたくさん周りに放熱されれば寒くなりますし,放熱する量が少なくなれば暑くなります。放熱の仕方にはいろいろ種類があります。

図3 快適性を決定する要因

・放射

 放射は,窓や床などの表面と人間との直接の遠赤外線のやり取りです。よく遠赤外線の効果という話がありますが,遠赤外線は何か特別なものではなく,この空間はすべて遠赤外線に包まれています。空気の温度とは無関係な,表面と表面の温度の伝わりが放射です。

・対流

 対流は,表面から空気で熱が伝わるものです。表面を流れる風が速ければたくさん熱が失われますし,風の温度が低ければたくさん熱が失われます。

・蒸発

 汗をかくと水分が蒸発します。汗をかかなくても1時間に40gは蒸発します。蒸発量が多くなれば多くなるほど体から熱が奪われて寒くなります。回りの湿度によって暑さ寒さというのは違うのですが,22℃程度の普通の暖房環境では湿度が高くても低くてもあまり影響はないとされています。

 ガラスの熱収支


・日射の作用

 日射には紫外線と可視光と赤外線と三つあります。一番エネルギーが大きいのは可視光ですが,図4に模式的に示したように普通のガラスでは80~90%はそのまま透過します。一部はそこで反射されて外に出て,一部はそこで吸収されます。吸収されたものは熱に変わって,つまり赤外線に変わって放射されます。さらに,吸収されることによってガラスの温度が高くなりますから,ガラスから空気に向かって対流で熱が移動します。
 これらの熱は,放射や対流による移動でそれぞれ室内側と外側に移動します。これらがどちらに振り分けられるかによって,断熱性,日射の遮へい性能が変わります。入ってきた熱が,室内側に出る分が少なくて外側に多く出れば,たいへん遮へい性能が高いガラスで,室内側に多く出れば遮へい性能が低いガラスです。
 日射はガラスを透過しますが,赤外線はほとんど透過しません。Low-Eや熱線反射ガラスなどがありますが,金属コーティングをしたガラスはこの吸収や放射を小さくして反射を大きくするという特性があります。日射を全部反射したり,室内側からの放射も反射したりというような作用があります。

図4 ガラスの熱収支

・ガラスの日射に対する特性

 ガラスの日射に対する特性には,反射率・透過率・吸収率・遮へい係数・日射取得率のような値があります。例えば3mmの普通ガラスだと,反射が7~8%程度,透過が85%程度,吸収が6%程度です。遮へい係数は3mmの普通ガラスを基準にして,このガラスの性能のときに1になります。3mm普通のガラスの透過率は,日射全体でみると85.8%となっていますが,そのうち可視光は90%入ってきます。紫外線は64.8%と,波長によってもかなり違います。

 快適さ


 快適と感じる時の皮膚温は,33℃から34℃に保たれています。体の中では熱が作られていて,人間が何をしているかによって作られる熱量が変わってきます。それ以外に衣服の影響があります。これは断熱材と同じようなもので,その着ている組み合わせによって熱が逃げやすかったり逃げにくかったりします。対流や放射の前にこのような熱抵抗が加わります。

・温熱環境の指標

 温熱環境を評価する指標が各種ありますが,一番良く耳にするものが不快指数だと思います。不快指数が75以上だとやや暑いとか,80以上だと暑くてたまらないというような指標です。
 建築の中の環境をあらわすものは不快指数ではなくて,PMV(予想平均温冷感申告)や作用温度のような指標であらわされます。人間からどれだけ熱が逃げるのか,あるいは体の中でどれだけ熱が作られているのか収支の式を立てて計算したものがこれらの指標です。

・PMV

 PMVは最近良く使われます。人間の代謝量から対流・放射で出て行く熱量と呼吸によって出て行く熱量を引いたものの収支から計算します。PMVと予測不満足度割合(その温熱環境に不満足,不快さを感じる人の割合)の割合がリンクしているのでたいへんわかりやすく,良く使われます。PMV -0.5から0.5の範囲だと,その環境を不満足に感じる人は10%くらいです。-2や+2のような値になると大部分の人が不満足に感じます。

・作用温度

 作用温度は,空気温度と平均放射温度との平均です。たとえば,空気温度が20℃で,放射温度が15℃なら,作用温度は17.5℃です。これは人間が感じる温度に近い温度です。
 平均放射温度は,人間と壁との位置関係によって変わりますが,簡単に言えば表面温度の平均値です。例えば天井の表面温度に面積をかけたものと,壁の表面温度に面積をかけたものの和を全体の面積で割ったものが平均放射温度です。ですから,空気温度が低くても壁の温度が高ければ暖かく感じます。
 逆に空気温度が高くても壁の温度が低ければ寒く感じます。ガラスの空間ですと空気温度が高くてもガラスの温度は低いですから,通常の環境よりも寒く感じるという問題点があります。

 快適性を阻害する要因


 ドラフト・上下温度差・放射の非対称性は不快を招きます。国際規格のISO 7730に,多くの人を満足させるにはこれらの数値がどのような範囲に入ればよいのかが示されています。

・ドラフト

 ドラフトは空気の温度・風速・風速の標準偏差から決定されます。風速の標準偏差は風速が一定であれば0になりますが,空調などは実際には風が強くなったり弱くなったりします。空気温度が24℃で,風速が0.15m/sec,これは普通の空調をしているような環境です。それに0.18~0.12m/sec程度の風速の変化が加わると,それを不快だと感じる人の割合は7.5%です。気温が低いほど,風速が速いほど,乱れが大きいほど不快に感じます。

・上下の温度差

 上下の温度差はISOの規格では床上0.1mと1.1mの温度差で規定されています。その温度差が3℃以下であれば,不満足に感じる人はおおよそ5%以下とされていて,目安とされています。温度差が大きくなればなるほど不快に感じる人は増えてきます。

・放射の非対称性

 熱い壁と冷たい壁があったとします。両側の放射の温度差が10℃くらいあると5%位の人が不満に感じます。天井が暖かい場合,例えば,5℃くらい温度差があると,頭が暑くて不快だと感じる人が5%程度います。床の温度は,暖かければ暖かいほど良いのではないかと思われますが,40℃近くなると低温やけどの可能性も出てきますし,そこまでいかなくても温度の高い空間にさらされていると,不快になります。ISOの規格では19℃から29℃の間を推奨しています。

 ダブルスキンの実験


 ダブルスキンを実際の建物で実験した例をご紹介します。写真は北広島の実験棟で,前面がすべてダブルスキンです。図5に示したように一般窓で10熱量が入ってくるとき,ダブルスキンだと3程度しか入ってきません。それだけ冷房負荷を減らす効果が大きいのです。
 これをガラスの組み合わせや,開口の大きさを変えたらどうなるか,効果をいろいろ検討して設計できるように,熱の収支を計算できるようなプログラムを作って検討しています。通常のガラスにブラインドがあるもの,ダブルスキン,エアフローの条件で計算すると,侵入熱量が一般窓では400W/m2近くであるのに対し,エアフローやダブルスキンにするとおおよそ150~200W/m2であるので,日射を防ぐ効果が大きいといえます。

写真 ダブルスキンの実験棟 図5 取得熱の比較

・室内環境の解析

 室温が26℃で,内側に通常の窓とブラインドがあるとしてシミュレーションをしました。ブラインドの表面が35℃だとすると,窓から1mくらいの領域でPMV0.5を超えて不快に感じる人が多くなります(図6上)。ところが,ダブルスキンなどで表面温度が29℃に抑えられたとすれば,1m以下の範囲でもPMV0.5以下ということであまり暑く感じません(図6下)。このように表面温度が変わると暑さ寒さも変わってきます。

図6 ペリメータ環境の改善

 エアフローウインドウ


 奥行き10mの幅方向1mで床面積10m2の事務所を考えます。必要換気量は5m3/m2ですから,50m3くらいの換気量が必要です。50m3すべてをガラスの間を通さずに換気装置から排気したのがエアフローウインドウを使わない場合,ガラス2枚の間にブラインドがあるだけという状態です。この風量を25m3,50m3と変えていきます。12月から3月末まで計算しました。
 単純に換気装置を通して排気した場合は,窓で80Wくらいの暖房負荷が生じます(図7)。それに対して25m3通気して,残り25m3排気すると,窓で発生する負荷は55W程度です。さらに50m3排気すると45W程度になり,窓から排気することによって窓で発生する負荷は,半分近くまで減らすことができます。ところが,換気負荷が若干増えますので,換気負荷と窓負荷の合計は,エアフローにすると若干増えます。しかし,この目的は,ペリメータレス化と,窓付近の環境を改善しようということですから,窓で発生する負荷が小さくなったということは,その窓付近の環境が改善されたということで,その目的では十分効果があります。

図7 エアフローウインドウの暖房負荷

・エアフローウインドウの問題点

 室内の空気をガラスの間に通すと外のガラスで結露が発生します。二重窓で外側のガラスに結露するというのは普段から経験していることですが,そのような結露の問題が生じます。
 東京でシングルガラス2枚のところに空気を通したときにどのくらい結露するかというのを計算しました。50m3くらい通気すると,一番多い日の一番多い時間帯で60g位の結露量が発生します。ところが,シングルガラス同士の組み合わせから,外をペアガラスに変えると結露は発生しなくなります。
 北海道の場合は,外がシングルガラスだと間違いなく結露しますから,外側をペアガラスに,内側をシングルガラスにして同じように計算してみました。その結果,外がペアガラスでもかなり結露するということがわかりました。つまり,寒冷地ではエアフローウインドウの運用は困難です。
 冬は完全密閉型で,ガラス間の換気を運転しない,夏だけ運転するというのが技術的に可能ならば理想的です。夏の冷房負荷を削減する観点からは,外側をシングルガラスにして内側をペアガラスにしたほうが効果的です。外をペアガラスにすると熱抵抗が大きくなってしまいますから,ブラインドの熱が逃げにくくなります。
 夏の冷房負荷削減を目的にするのであれば内側をペアガラスにしたほうが合理的です。内側をペアガラス,外側をシングルガラスの組み合わせは,冬は絶対通気してはいけない,密閉しなければならないという条件がつきます。

・エアフローウインドウと熱交換換気

 窓の中に空気を通すとそこで空気が温まったり,冷えたりします。それを使って空気の予熱に使えないかと計算した結果をご紹介します。外気温0℃の条件で,ガラス間の空気の温度を計算します。
 日中に400W/m2程度の日射があるとき,外気温が0度に対して通気層の中の温度は13℃程度まで上がります。一番室内側のガラスの温度は,10数℃ですから,外気をこの中に入れると温まって出てきます。実際,窓幅1mのところに20m3通気すると,通気層の温度は7℃くらいになります。通気をするので温度は下がってしまいますけれども,外気よりも高くなります。
 通気をしない場合(図8右)には,透過日射が212W入ると,室内から86Wの熱が逃げて,日射で窓に57W吸収されて,あわせて143W外に出て行きます。それに対して,外気を入れた場合は(図8左),透過日射量は同じで,窓で吸収される熱量も同じ,ただ,ガラスの間の温度が低くなるので,室内から窓に移る熱量は86に対して101と増えます。ところが,通気の熱回収で温度が上がってきますから,そこで50W熱が回収できます。そうすると,通気なしの場合は窓からの熱損失が合計で161W,それに対して通気をすると合計で126Wと,通気をしないで換気を別にしたものと比べると,通気をしたほうがトータルの負荷は小さくなります。
 問題になるのは,熱交換換気を行った場合です。熱交換換気でその効率が50%だとすると,窓の負荷は同じですから86W,換気の負荷は50%の熱回収で半分になります。すると合計で173Wですから,このシステムよりも別に効率50%の熱交換換気装置をつけたほうの負荷が小さくなります。

図8 真dのによる空気予熱のシミュレーション

 まとめ


 ダブルスキンの目的は,冷暖房負荷の削減・ペリメータの環境改善です。夏季にはたいへん効果があります。冬季はどうかというと,ガラスが一枚増えるので,その分多少効果はあります。通気層を夏は開放して,冬はダンパー等で完全に閉鎖すれば,今までガラスが一枚だったものが2枚になりますからたいへん効果があります。その場合は,なるべく内側に高性能のものを使ったほうが合理的です。
 問題はその通気層内の汚れです。実際のダブルスキンの施工例では,何も触らなければほこりは目立たないので気になりませんが,ブラインドを触ると指の跡がくっきりつきます。1シーズン経過するとかなり汚れますので,その汚れをどうするかという問題が生じます。誰も触らないような環境であればたぶん気になりませんが,中途半端に掃除をすると,これは問題になる可能性があります。
 エアフローウインドウも,目的は同じです。夏は,ダブルスキンと同じようにたいへん効果が大きいといえます。冬は,温暖地での負荷の削減効果は,熱交換換気と比べるとやや落ちます。しかし,ペリメータの環境改善ですとか,ペリメータレス化という意味ではたいへん大きな効果があります。
 ただし,外部ガラスに結露する可能性があります。外部ガラスをペアガラスにすれば防ぐことができますが,夏季の冷房負荷削減効果は若干減少します。寒冷地では,冬季に通気した場合,外側ガラスの結露を防ぐのはたいへん難しくなります。
 冬は稼動しないのが条件になりますが,そのときに通気の経路を密閉できるか否かがたいへん大きな課題になります。断熱性能としてはガラスが増えた分だけ効果は増えます。
 冷房負荷を削減することに重点を置くならば内ガラスを高性能,冬季対策に重点を置くならば外ガラスを高性能にします。寒冷地の場合にはいずれにせよ適用は困難です。

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