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Q&A 先月の技術相談から

木工品製作における割れなどの補修方法について



Q: 本立てや花台等の小木工品を製作するとき,木材の割れ,節の欠け,接合部のすき間などをどのように補修するのか知りたい。



A: 割れやすき間などの程度(幅,深さ),補修後の仕上げ(透明塗装,着色塗装)などによって適当な補修方法を選択する必要があります。以下に,一般的な補修方法3例を紹介します。

■ 市販パテによる補修(その1)

 木材の補修に用いるパテにはさまざまなものが市販されています。その中で,浅くて幅の狭い割れや欠けなどの補修に適したパテとしては,溶剤(セルロース系)と水性タイプ(アクリル樹脂エマルジョン系)のものがあります。これらは安価で入手しやすく,チューブから適量ずつ絞り出し,ヘラで簡単に埋め込むことができます。水性タイプは引火性や刺激臭がなく,F☆☆☆☆対応型で安全性に優れています。

 補修にあたって注意すべき点は二つあります。一つは,深いすき間や割れなどには乾燥に伴って肉やせ(収縮)が起きやすいため,これらのパテは不向きです。深さの限界は諸条件で異なるため明言できませんが,大まかな目安は2mm程度と思われます。なお,深いすき間の場合はパテを薄く埋め込み,乾燥後に同じ行為を何度も繰り返すことが可能ですが,実用的ではありません。もう一つは,オイルステインでは塗料が乗りづらく,パテのカラーバリエーションが極めて少ないため,透明塗装ではパテの色がすごく目立ちます(「こくそ」による補修でも説明します)。

■ 市販パテによる補修(その2)

 前出のパテは深い釘穴や幅の広い欠けなどに不向きでしたが,エポキシ樹脂系パテはこのような用途に適しています。このパテは1回で埋められる量が多く,乾燥・硬化に伴う収縮もほとんどない特長があります。また,硬化前でも手のみや研磨紙で削ることが可能で,耐水性も高いので浴室や屋外用途にも対応できます。価格は2液型90gセットが約800円で,前出のパテよりもやや高くなっています。


 補修にあたって注意すべき点は,前出のパテと同様に,オイルステインによる着色やニスによる透明塗装に難があることです。

■ 自分で作った「こくそ」による補修

写真1 カラマツの板にあけた穴

写真2 こくその材料(木分とご飯)

写真3 こくそと市販パテの埋め込み

写真4 のみで削り,研磨紙掛け

写真5 透明塗装による仕上げ

 市販のパテではなく,自作の「こくそ」で木材の割れや欠けを補修する方法を紹介します。「こくそ」の歴史は古く,語源は諸説あるようですが,古くは仏師や漆職人などが木彫像や木地の凹みや傷を補修するために,漆に木粉と米糊(のり)を加えて作ったようです。
 「こくそ」は漢字で木屎や刻苧と書くようです。

 「こくそ」の作り方と,それを用いてどのように補修するのか,実際に試してみましたので順追って説明します。補修を行うのは写真1のカラマツの板とし,これにドリルで直径8mm,深さ約2mmの穴を二つあけ,左側に「こくそ」で,比較のために右側にセルローズ系パテでそれぞれ補修します。

1) 小木製品の補修に用いる「こくそ」は,木粉とご飯だけで作るのが一般的です。木粉は部材の切れ端を手のこで挽いたのこ屑(くず)を用います。のこ屑は両刃のこよりも胴付きのこで挽くと細かいものが得られます。

2) 写真2 は今回作った「こくそ」の材料です。木粉はカラマツを胴付きのこで挽いたのこ屑を,すり鉢とすり棒でより細かくしたものです。木粉を細かくしたのは,補修箇所の色あいを周囲と違和感なくするためと,塗装前の下地調整を奇麗にするためです。ご飯は弁当箱から取り出した白米です。木粉とご飯をヘラで丁寧に練り合わせて「こくそ」の出来上がりです。両者の配合比に決まりはありませんが,水分を含んだご飯の量が多くなると乾燥後の肉やせが大きくなります。穴1個分の「こくそ」に用いたご飯は約2粒です。ご飯の代わりに事務用糊や接着剤などを用いる場合もあります。

3) 「こくそ」を穴の中にヘラで丁寧に押し込みます。「こくそ」は乾燥に伴う収縮を考慮して,写真3のように材表面よりも高くなるように盛り上げます。深い穴などの場合は,奥に粗い木粉の「こくそ」を埋め込み,それが乾いてから細かい木粉のものを充填する場合もあります。乾燥時間は温湿度や補修内容によって差がありますが,今回は「こくそ」と市販パテとも約半日です。

4) 乾燥を終えたら,「こくそ」とパテの盛り上がったところを鑿(のみ)やカッターで平らに削ります。写真4は塗装の前処理として,♯240の研磨紙で素地調整を行った状態です。この工程まで進みますと,いずれも材表面の平滑性は確保されていますが,市販パテは色むらがはっきりしてきます。

5) 写真5は,素地調整後にウレタン樹脂塗料を2回刷毛(はけ)塗りしたものです。市販パテの補修箇所は透明塗装で仕上げると,無塗装のときよりも目立ちやすいことが分かると思います。これに比べて,「こくそ」の補修箇所は周囲との違和感がかなり改善されています。このように,少し手間は掛かりますが,小規模な補修箇所を奇麗に仕上げたいときには「こくそ」がお薦めです。ただし,この方法は,溶剤および水性タイプの市販パテと同様に,乾燥に伴って肉やせが起き,深いすき間や水かかり部位の補修には不向きですのでご注意を。

 以上,小木工品における木部の補修方法3例を紹介しました。ぜひ用途や規模などに見合った補修方法をいくつかチャレンジし,その中から最適と思われるものを探してみて下さい。

参考資料

 輪島漆器商工業協同組合(http://www.wajimanuri.or.jp/fsyuuri.htm)

 

(技術部 加工科 金森勝義)

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