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菌根性きのこホンシメジの菌床栽培
~北海道産ホンシメジ開発に向けた栽培特性の検討~

きのこ部 品種開発科 宜寿次盛生


 ホンシメジとは?


 ホンシメジは,マツタケやハナイグチ(北海道では,ラクヨウキノコと呼ばれています)と同様に樹木の根と共生関係をつくる「菌根性きのこ」です。一般に,菌根性きのこは樹木と共生しているため,共生相手の生きた樹木がいない状態,いわゆる純粋培養での栽培は不可能だと考えられていました。しかし,1993年滋賀県森林センターが,粒状の麦類を主成分とする培地で培養することで,初めて栽培に成功しました。

 ホンシメジは古くから「香りマツタケ,味シメジ」と言われる「シメジ」のことで,食味に優れた新しい栽培きのことして期待されています。現在,本州の大手企業2社で生産されていますが,道内ではまだ栽培されていません。そこで,林産試験場では北海道電力(株)および(財)北海道科学技術総合振興センターとの共同研究で,北海道産ホンシメジの開発に向け栽培方法を検討しました。

 「シメジ」と呼ばれるきのこたち


 かつては,栽培した「ヒラタケ」というきのこを「シメジ」と称して販売していました。また,「ブナシメジ」を「○○ホンシメジ」という商品名にしている場合もあります。どちらも木材腐朽菌である性質を利用して栽培されており,「腐生性きのこ」の一種です。また,最近は腐生性のきのこである「ハタケシメジ」も栽培が出来るようになりました。

 ホンシメジとハタケシメジは近縁の種で,形態的に似ているため(図1)区別が難しいきのこです。それぞれの子実体から採取した胞子から発芽した菌糸同士を交配(かけあわせ)出来るか否かで識別が可能です。しかし,交配試験は時間と手間がかかります。そこで,DNAを用いた識別方法を検討し,ホンシメジとハタケシメジを確実かつ迅速に区別することが可能となりました(図2)。

図1 野生の畑シメジとホンシメジ,図2 DNAを用いたホンシメジとハタケシメジの識別

 ホンシメジの基本的な栽培方法1~3)


(1)培地調製
 ホンシメジは栄養源として,でんぷんをよく利用することから,麦(押し麦)を培地材料として用います。押し麦は乾燥した状態なので,そのままでは培地材料に用いることが出来ません。そこで充分に吸水させるため,培地調製の前日から水に浸しておきます。その際,ホンシメジの成長に有効な成分を含む,pHを調整しておいた「添加液」に浸します。ホンシメジの菌株によっては,培地材料にトウモロコシ粉が適している場合もあることから,品種登録の栽培方法3)では,押し麦とトウモロコシ粉を混合して用いることになっています。培地充填量は培養容器の1/2~2/3程度の深さが適当とされています。

(2)培養~発生
 培養は約22℃で菌糸が蔓延するまで約40日間行います。菌糸が蔓延すると,発生処理としてピートモスで覆土します。ピートモスは,あらかじめ炭酸カルシウムでpHを調整しオートクレーブ滅菌します。これで菌床表面を5mm程度の厚さで覆います。覆土した菌床は22℃で7~14日間,再培養(熟成)を行います。覆土表面に白い菌糸が認められたら,菌床を温度15℃,相対湿度95%以上,照明のついた部屋に移動します。幼子実体が発生するまで,キャップはつけたままにしておき,約1カ月で収穫できます。

 研究の内容と成果


 ホンシメジの基本的な栽培方法には,覆土処理や培地調製など,まだ改善を必要とする部分があります。また,菌株による栽培特性の違いを把握するため,以下の(1)~(3)を検討しました。
(1)まず,ホンシメジ標準品種(A)および市販子実体から分離した菌株(B)を用いて,培養期間および発生処理の際にピートモスで行う覆土処理が,収量に与える影響を調査しました(図3Aおよび図3B)。
 その結果,培養期間が収量に与える影響は大きく,菌株ごとに把握する必要があることが分かりました。また,覆土は必ずしも必要ではなく,菌株によっては収量の低下を招くことが分かりました。

図3 培養期間と覆土が終了に与える影響,A 標準品種,B 市販菌株

(2)次に,栽培条件が子実体の形態に与える影響を検討した結果,生育温度を高くすると柄が太くなることが分かりました(図4)。

(3)さらに菌株によっては,培地調製にコストと手間がかかる「添加液」を水道水に変えても影響は少ないことが分かりました(図5)。

図4 生育温度が子実体の携帯に与える影響,図5 添加液を水道水に替えた場合の影響

 今後の展開


 これまでにホンシメジ数菌株の栽培特性を検討し,栽培技術の改善点をいくつか見いだしました。現在,これらの成果を基に「新品種きのこ事業化モデル事業」として,民間企業で実生産レベルでのホンシメジ栽培を試行しています。また並行して,新品種の開発にも取り組んでいますので,近い将来,北海道産ホンシメジがみなさんの食卓に上る日が来ると思います。

参考資料

1)太田 明:“キノコ栽培全科”,農文協,226-230(2001).
2)太田 明:“2004年度版きのこ年鑑”,プランツワールド,202-203(2003).
3)全国食用きのこ種菌協会:平成18年度種苗特性分類調査報告書きのこ(ほんしめじ),2007, pp.1-13.

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