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カラマツの強度を引き出して建築用材に使う

技術部 加工科 松本和茂


 はじめに


 道内のカラマツ人工林資源は成熟期を迎えている一方で,林業の採算性の低さから再造林は停滞し,将来にわたる持続的な供給が危ぶまれています。カラマツ材の付加価値向上のためには,強度的優位性を活かした建築用材としての需要拡大が不可欠であり,道内のカラマツ製材業界では従来の流通資材(梱包材・パレット材)中心の需給体制から,建築用材生産へのシフトが叫ばれています。一方,その需要先である建築分野では,住宅の品質確保に関連した法整備が進み,使用される建築材料に対して性能の明示が求められつつあります。

 こうした状況の下,平成19年から4か年の計画で道内の四つの林業・林産試験研究機関(森林総合研究所北海道支所,同林木育種センター,道立林業試験場及び林産試験場)が,川上と川下の連携を目指して「道内カラマツ資源の循環利用促進のための林業システムの開発」(農林水産省:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業)に取り組んでいます。

本稿では,この事業の中で,建築用材に適したより強度性能の高い材を得るための方策として,林産試験場が行った次の二つ研究について紹介します。
(1)原木段階での強度選別の効果の検証(集成材製造を例に)
(2)施業(間伐)の違いが材の強度に及ぼす影響の評価

 原木段階での強度選別の効果の検証


 製材前の原木のヤング係数の分布(図1)と,そこから製材したラミナ(集成材を構成する挽き板)のヤング係数の分布(図2)の関係から,原木段階での強度選別はラミナの強度向上に有効であることがわかりました(林産試だより2009年5月号「カラマツの建築用材としての需要拡大に向けた技術開発」)。ここでは,これらが集成材の製造においてどれくらい効果的なのかを検証してみます。

図1 原木のヤング係数の頻度分布,図2 ラミナの等級の頻度分布

 住宅などの構造材として用いられる集成材は,一本一本強度等級が明示されています。そして,その強度等級ごとに組み合わせるラミナの等級も定められています。例えば,図3に示したのはE105-F300という強度等級の集成材の断面構成で,図中のL○○というのがラミナの等級を表しています。梁などの横架材として用いられる集成材では,内層<外層となるようにラミナ等級を配置します。集成材製造においては,特に外層に用いる高い等級のラミナを所定の割合で確保できるかどうかが生産効率に大きく影響します。そこで,ラミナ等級L110以上の割合に着目してみると,図3の集成材を製造する場合,L110以上は10層中4層なので40%必要となります。ここで,図2のラミナのヤング係数分布をもう一度みてみると,L110以上の出現割合は,選別なしでは26%なのに対し,基準値10GPaで原木を選別した場合は40%に向上しています。このことから,図3の集成材を製造するのに必要な原木の量は,強度選別しない場合に比べ選別した場合は約2/3で済むという計算(26÷40)になります。

図3 集成材の断面構成

 実際の集成材工場では,製造する集成材の強度等級や断面構成は何種類もあり,ラミナ等級の組合せを工夫して少しでも歩留まりを上げるよう努めているので,この計算ほど極端にはなりませんが,原木段階での強度選別によるラミナの強度向上が集成材の生産効率向上に有効であることは間違いありません。また,現状では無垢の建築構造材で強度性能が明示されたもの(機械等級区分製材)はほとんど市場に出回っていませんが,建築用材に対するニーズの変化から今後は需要・供給ともに増加すると予想され,これらに対しても同様に原木の強度選別の考え方が適用できると考えられます。

 施業(間伐)の違いが材の強度に及ぼす影響の評価


 40年生の間伐試験地で,間伐率が異なる五つの試験区から各20本の原木を採取し,そこからラミナを製材してヤング係数の分布を調べました。間伐試験地の概要は表1,表2のとおりです。

表1 間伐試験地の概要,表2 各試験区の概要

 間伐率ごとのヤング係数の分布(図4)をみると,無間伐→20%間伐→30%間伐→40%間伐と間伐率が高くなるにつれてヤング係数の分布が高い方へ少しずつシフトしているのがわかります。ただし,40%間伐→50%間伐では分布がまた低い方へ戻っています。この傾向はヤング係数の区間ごとの出現割合(図5)にも現れており,ヤング係数9GPa未満の割合は間伐率が高くなるに従って減少しています。逆に11GPa以上の割合は間伐率が高くなるに従い増加しますが,間伐率40%をピークに50%ではまた減少しています。当初の予想では,間伐率が低い方が年輪が詰まってヤング係数は高くなると思われましたが,結果は全く逆の傾向となりました。ただし,間伐率が高ければ高いほどよいという訳ではなく,適度な間伐が行われた林分の材が最も強度性能に優れ,建築用材としての適性が高いということが言えそうです。間伐率の違いがヤング係数に及ぼす影響については,年輪内の晩材の割合・密度などが関係していると考えられ,現在ラミナの製材と同時に採取した円板試料を用いて詳細な年輪解析を行っているところです。

図4 間伐率ごとのヤング係数の分布,図5 ヤング係数の区間ごとの出現割合

 おわりに


 本研究は,道内の四つの林業・林産試験研究機関が連携して実施しているものです。本研究の成果は,川上側(施業・育種)における評価指標である「生長量・収穫量」に,「強度性能」という川下側の指標を絡めた形で,建築用材に適したカラマツ材を生産するための指針としてまとめる予定です。この成果を基に,今後道内カラマツ業界の建築用材生産をサポートする情報提供及び技術支援を行っていきたいと考えています。

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