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職場紹介

利用部 成分利用科

 石油などのエネルギー・工業原料資源をほとんど持たないわが国では,国土の6割以上を占めかつ再生可能な森林バイオマスを有効活用する,新たな技術開発を推進することが重要な課題となっており,今後の国家科学戦略のひとつとして位置付けようとする動きもあります。北海道は,全国の森林面積の約4分の1,森林蓄積の約5分の1を有することから,森林バイオマスを利用する上での立地条件は比較的恵まれていると考えられます。

 森林バイオマスの大部分を占める樹木は,木材,樹皮,樹葉などから構成されています。それらには主要成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンや,精油,樹脂,色素,タンニンなどの微量成分(有機溶媒などで抽出される比較的低分子の成分で,樹木抽出成分とも呼ばれる)が含まれています。また,森林バイオマスから得られる木材粉砕物は,人工栽培 “きのこ”の生産培地としても大量に利用されており,北海道は国内でも有数のきのこ生産地となっています。

 成分利用科では,おもに森林バイオマスやきのこの化学的な有効活用に関する研究を行っています。

 最近の研究内容


(1)森林バイオマスのバイオリファイナリーに関する研究
 バイオリファイナリー(biorefinery)とは,非可食で持続的再生可能なバイオマスを原料として,エネルギー燃料やプラスチック樹脂などの化成品を生産する技術体系のことを指します。これは,近年,米国エネルギー省において,石油を原料とするオイルリファイナリー(oilrefinery)の対照的な概念として生まれた造語です。そのため,バイオリファイナリーは,オイルリファイナリーと比較して,地球温暖化対策,資源循環型社会の構築,海外への資源・エネルギーの依存性からの脱却といった点において,きわめて有利であることが指摘されています。

 木材は高分子であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンが複雑強固に絡み合った複合体であるため,これらを化学的に有効活用するためには効率的に溶解分離する溶媒の開発が重要となっています。これまでに本研究では,木質系バイオリファイナリーの構築に向け,近年,高分子の溶解に有効で,かつ環境に優しい溶媒として注目されているイオン液体を用いて,木材の溶解条件と処理後の木材の化学的特性・主要成分の溶解速度との関係について明らかにしています。

(2)微量成分を指標とした優良林木苗の高精度判別技術に関する研究
 林業を取り巻く環境が年々厳しくなる中で,現在,北海道では,林業生産活動の再生に向けて“低コスト林業”の推進を提唱しています。近年,林業の低コスト化を図る最も効果的な方法のひとつとして,成長,材質,病虫獣害・気象害の抵抗性などの点に優れた形質を有する林木種を植栽することにより,育林作業をできるだけ省力化した施業を行うことが重要であることが指摘されています。

 植物は属・種・雑種レベルまたは分布地域の違いによって微量成分の化学組成に相違を示す傾向のあることが多数報告されています。したがって,従来の形態の違いによる分類とは別に,化学成分による分類(ケモタキソノミー)という研究領域としても展開されています。このような点に着目して,これまでに本研究では,微量成分を指標とした針葉樹の優良林木苗の高精度判別に向けて,林木種と樹皮・樹葉中の微量成分の組成との関係を検討し,優良林木の判定指標として寄与の高い微量成分の組成について明らかにしています。

(3)きのこの食品機能性の評価に関する研究
 近年,増加傾向を示している高脂血症,高血圧症,糖尿病などの生活習慣病やその主因である肥満には,食生活が大きな関わりをもつと言われており,健康を維持するためにできるだけ機能性の高い食品を摂取することに関心が高まっています。きのこは食物繊維やミネラルなどを豊富に含む低カロリー食品であるとともに,きのこの摂取と健康に関する研究結果が多数報告されており,きのこによる健康の維持・増進機能に期待が寄せられています。また,北海道産きのこの消費を伸ばすためには,付加価値の向上や加工食品分野などの新たな市場開拓が必要であり,きのこ業界や食品加工業界からも消費拡大につながる食品機能性評価などの科学的判断材料が求められています。

 きのこの摂取による健康増進に関する研究では,脂質代謝改善作用や血圧降下作用などが示唆されていますが,このような機能性の生体内臓器における発現メカニズムの検証が不十分であり,さらなる科学的確証の蓄積が必要とされています。最近,食品機能性の探索に有効とされる,遺伝子レベルの分析法が開発され,食品を摂取したときの代謝変動などを詳細に解析することが可能となっています。このような方法を用いて,本研究ではきのこの食品機能性を臓器における全遺伝子レベルで解析し,そこから得られた有用な機能性についてはさらに細胞レベルでの実証化を図り,機能性発現メカニズムの解明に向けた検討を行います。

 技術支援


 成分利用科では,木材成分の依頼分析や有効利用に関する情報提供をおもに道内企業に対して行っています。また,木材成分の定性や定量に関する分析装置,高温・高圧の水蒸気によって木材を改質する蒸煮装置(写真1),溶液中の水分を除去して粉末化するスプレードライヤー(写真2)などを所管しています。これらの内のいくつかは,試作品の製造を目的として,設備使用が可能(有料)です。

写真1 蒸煮装置,写真2 スプレードライヤー

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