2010年を迎え,初春の御慶びとご挨拶を申し上げます。
昨2009年は,うち続く世界不況や米国新大統領の誕生に始まり,秋の政権交代を経て,12月のCOP15コペンハーゲン合意で暮れました。交渉は難航し,合意ではいくつか前進があったものの,2013年以降をめざすポスト京都の枠組みは,なお産みの苦しみのなかにあります。
地球温暖化対策の取組みは,経済の多極化や人口爆発に伴う資源・食料・エネルギー制約という世界史の流れに適合する新しい経済成長の地平を,各国が世界協調のなかで開いていく試みでもあります。とりわけ90年比で温暖化ガス25%削減を標榜したわが国には,いっそう前向きの取り組みや新しい経済成長のモデルが求められることになりました。
これまでのように,多国籍化する大企業中心の輸出だけでなく,内需拡大も強く念頭においた環境・エネルギー産業を創造し,地場の資源や市場にも光をあて,疲弊した地域の産業経済の立て直しを急速に進めなければなりません。
政府は,そのひとつに,すでに森林・林業再生本部を設置するかまえをみせ,住宅木材産業もあわせ,林業を地域再生の基幹産業に組み込もうとしています。国内の森林資源が史上空前の規模で充実してきた今,林業・木材産業の不振がこのまま続くと,手入れ不足で資源価値も成長量も低い高齢の人工林が増加し,光合成量より呼吸量のほうが多くなって,CO2吸収源としての森林の機能が大きく低下するという事態が進行することになります。伐出・加工・流通という「木づかい」の流れが太くならないと,10年ないし20年後には,森づくりもできなくなる日々が現実になる危険が迫っています。
日本の森林と環境にとって,林業・木材産業再生の鍵となる国産材の需要開発や市場創造,これを支える国際製品競争を勝ち抜く研究・技術開発はまさしく至上命題といえます。
木材利用は,丸太から製材・合板などの各種加工品,次にボード類などの粉砕成形品へと,順次細かく裁断しながら再利用を繰り返し,最後に燃料としてエネルギー利用する,いわゆるカスケード(段階)利用が理想です。
そのため,私たちは,まず,輸入製品に代替された道産建築用材の失地回復,次に高付加価値で安全・快適・健康な木製品の開発,さらに資源の循環利用をめざす森林バイオマスの総合利用を研究開発の三本柱としています。なかでも,最初にあげた建築用材の失地回復がもっとも重要であり,木造木質のエコで健康・快適な住まいを提供しようとする地域の建築・住宅産業と手を組んで,製材業の復興を完璧な資源循環の第1関門として強く意識しながら,今年も前進してまいります。
林産試験場は,昭和25年の開設からことし60周年を迎えます。この節目に,4月から当場を含む道立の22の試験研究機関は,単一の「地方独立行政法人 北海道立総合研究機構」という新体制で,新しい経済成長の北海道モデルを展望し,新しい活動の地平へと歩んでいくこととなりました。ご期待に沿えるよう,いっそうの奮起を期します。
ことしも林産試験場へかわらぬご支援,ご協力を心から願い申し上げます。
北海道と森林・林業・木材産業にとって画期的な2010年となりますよう。