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連載「道産木材データベース」


 林産試験場では,樹木の生態・形態,木材の性質・用途および関連の文献情報等を樹種ごとに取りまとめたデータベースを制作中ですが,ホームページへの公開を前に,記事部分を順次本誌で紹介しています。

(担当:企画指導部普及課)



ミズキ


写真 ミズキの樹形

名称  和名:ミズキ
     別名(地方名):ミズクサ,ミズノキ,クルマミズキ等
     アイヌ語名:イナウニニi-naw-ni-ni(神事に使う木幣の材をとる木)
    等
     漢字表記:水木
     英名:Table dogwood
学名  Cornus controversa Hemsley
分類  ミズキ科ミズキ属
分布  日本,朝鮮半島,中国,インドシナ,ヒマラヤ

生態・形態  低山,原野で普通に見られる落葉樹。陽樹。湿潤で肥沃な土壌を好む。
 大きなもので高さ10~15m,太さ30~50cm。樹皮は灰褐色で浅く縦裂が入る。枝は扇状に四方へ広がり階段状になる。小枝は紫紅色で光沢があり,枝先が上向きにわん曲する。葉は互生し,先端部に集まる傾向がある。葉身は広卵形~楕円形,長さ5~14cm,幅3~9cm,先がとがる。葉縁に鋸歯は無く,少々波状となる。葉の側脈は明瞭で弓形に5~8対。葉柄は赤褐色。花は白色で,枝先の散房花序に多数着く。果実(石果)は球形で径6~7mm,秋に黒熟する。
 春先に枝を切ると水が滴り落ちることが「水木」の名の由来。

写真 ミズキの枝ぶり,上向きにわん曲する枝先,樹皮,葉,花

木材の性質  散孔材。白色~淡黄白色~灰褐色で辺材・心材の区別は不明瞭。早材から晩材への移行が緩やかで年輪ははっきりしない。緻密で肌目は精。気乾比重が0.67程度でやや硬い部類に入るが,一般に加工は容易であり塗装仕上がりもよい。耐朽性は低い。

ミズキ材の性質,写真 ミズキ材の三断面

※上記の木材の性質に関する数値等は,(社)日本木材加工技術協会発行の「世界の有用木材300種(農林省林業試験場木材部編 1975)」から引用しました。
 木材の性質それぞれの意味については,連載1回目の2007年12月号で説明しています。

主な用途  建築材,ろくろ・寄木細工,漆器木地,箸,杓子,玩具,下駄,彫刻材,印材,薪炭など用途は広い。「鳴子のこけし」など東北地方のこけしは,使う材の多くがミズキ。冬期に赤みを強める若枝は正月の繭玉飾りに用いられる。アイヌ民族はミズキ材で神事に用いるイナウ(木幣)を作った。街路・公園樹に使われる。

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【I】:北村四郎・村田源 保育社 1971
・落葉広葉樹図譜 冬の樹木学:四手井綱英・斎藤新一郎 共立出版(株) 1978
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976
・樹の事典 美しい森と自然の素材:朝日新聞社 1984
・(財)日本木材総合情報センター:http://www.jawic.or.jp

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