Q&A 先月の技術相談から
A: 現在の建築基準法では,要求性能を満たすのであれば,使われる材料や仕様は限定されないことになっており,木材であっても構いません。
木製サッシにどのような防火性能が求められるか判断するには,採用する建築物の用途・立地・規模から,建築物自体の防火基準を考えます。
公共施設などの不特定多数の人が集まるような大規模建築物なのか,あるいは一般住宅等の個人向けの小さめの建築物なのかなどによって,建築物自体に求められる防火基準が異なります。当然,不特定多数が集まるような建築物では『耐火構造』や『準耐火構造』という,一般的な木造建築物では建てられない厳しい性能が必要とされています。
建築物の立地が都市計画法で定められた『防火地域』『準防火地域』内なのか,その他の地域なのかによっても,建築物に必要とされる防火性能が変わります。これも当然のことながら,その他の地域より防火地域,準防火地域の方が求められる基準は厳しくなっています。たとえばその他の地域では,一般的な木造建築物では延べ床面積で3,000m2まで建築可能ですが,防火地域では建てられないことになっていますし,準防火地域では延べ床面積500m2以下で2階建てまでとされています。この制限以上の建築物を建てようとする場合には防火上の厳しい性能が要求されます。
これらの判断により建物に求められる防火基準が決まり,それに伴い開口部の防火基準も決まります。
規制がかかる範囲は『延焼のおそれのある部分(法第2条第6号)』であり隣地境界線や道路の中央線,同一敷地の他の建物などから一定の距離内の範囲について防火規制がかかります(図)。
開口部に関しての防火基準では,『特定防火設備』(令第112条第1項)と『防火設備』の二つに分類されており,防火設備は,さらに『遮炎性能』(法第2条第九号二ロ・令第109条2)と,『準遮炎性能』(法第64条・令第136条の2の3)の二つに分かれています。
準耐火構造以上の建築物であれば,延焼のおそれのある部分の開口部は防火設備として遮炎性能が求められます。また,準耐火構造未満の建築物であっても防火地域,準防火地域内であれば延焼のおそれのある部分の開口部には準遮炎性能が求められます。一方,特定防火設備は『防火区画』として扱われる開口部で,防火壁の貫通部の扉などとして使用されるものです。
木製サッシは告示の仕様(平成12年度建設省告示第1360号第1四は除く)には含まれていないため,防火設備とするには性能評価試験を受け,国土交通大臣の個別認定を取得する必要があります。その際には,遮炎性能には屋内と屋外からそれぞれ火災を想定した加熱をして20分間燃え抜けないこと,準遮炎性能には屋外からの加熱で20分間燃え抜けないことが要求されます。また,特定防火設備には屋内と屋外からそれぞれ加熱して60分間燃え抜けないことが要求されます。
以上,まとめますと表になります。このほかに,3階建て以上では非常進入口の設置が必要となる(令第126条の6)場合や,隣地境界から1m以下のものについてはめ殺しであることなど(令第136条の2)が要求されます。