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 ●特集「若松のアカエゾマツ人工林 76年生大径材の利用試験」

合板としての各種性能

技術部 合板科 古田直之



 はじめに


 近年,建築部材への国産材利用の気運が高まってきていますが,合板業界においてもここ数年で使用原木の国産材化が大きく進展しています。道内ではカラマツ,トドマツに加えて,アカエゾマツも現在の主要な造林樹種であり,これらの有効な利用法について検討しておくことが必要ですが,合板への利用はその一つと考えられます。そこで北見市若松産の76年生アカエゾマツ人工林材を用いて構造用合板と内装用合板を製造し,各種性能について評価しました。

 原木と単板乾燥について


 試験には表1に示す5本の原木を使用しました。これらの原木は,前処理として60~90℃の温水中に約3日間浸せきした後,1mまたは2mに玉切りし,構造用は厚さ3.15mm,内装用は厚さ1.57mmでロータリー単板を切削しました。単板はすべてベニヤドライヤを用いて含水率が5%未満になるように乾燥しました。また,一部の3.15mm厚さの単板については,単板サイズ96×55cm,乾燥温度150℃,風速3m/s,1回の送り時間2分で繰り返し絶乾まで乾燥し,その特性を調べました。
 初期含水率と乾燥時間を過去に試験した他の針葉樹材と合わせて表2に示しました。乾燥時間は初期含水率から10%まで乾燥するのに要する時間で示しました。アカエゾマツは比重が比較的小さいこともあり,心材部の乾燥時間は短めでしたが,辺材部は初期含水率が高く,乾燥にも長い時間を要しました。

表1 試験に使用した原木,表2 初期含水率と乾燥時間

 構造用合板の製造と各種性能


 厚さ3.15mmの単板を用いて9mm(3ply),12mm(4ply),15mm(5ply),24mm(8ply)の構成で,実大サイズ(91×182cm)の構造用合板をそれぞれ9枚ずつ製造しました。なお,24mm合板のみ表裏に道産カラマツ単板を使用しました。接着剤にはフェノール樹脂接着剤(DIC北日本ポリマ(株)製HD-2305)を使用しました。

(1)曲げ性能

 合板のJAS(構造用合板1級)に準じて,3等分点4点曲げ試験を行い(写真1),曲げヤング係数と曲げ強さを求めました。試験体の長手方向に対する表板の繊維方向が0度と90度の両方向について試験を行いました。
 試験結果を表3に示します。合板の曲げヤング係数と曲げ強さは,単板の積層数が増すにつれて0度方向での値が減少し,90度方向での値が増加しました。9mm~15mmでは合板のJAS1級のE80-F270,24mmではE70-F220の基準を満たす性能が得られました。

写真1 曲げ試験の様子,表3 曲げ試験結果

(2)面内せん断性能

 合板のJAS(構造用合板1級)に準じて,面内せん断試験を行い(写真2),せん断弾性係数と面内せん断強さを求めました。せん断弾性係数はJASに基準はありませんが,今回は試験片中央部の表裏面にひずみゲージを貼付して測定したひずみから算出しました。
 試験結果を表4に示します。面内せん断強さは積層数が異なっても大きな差はありませんでした。また,製造したすべての合板でJAS基準の3.2MPaを大幅に上回っていました。

写真2 面内せん断試験の様子,表4 面内せん断試験結果

(3)耐力壁水平せん断性能

 (財)日本住宅・木材技術センターの定める「木造の耐力壁およびその倍率性能評価業務方法書」に従った無載荷の柱脚固定式により,実大耐力壁の水平せん断試験を行いました(写真3)。試験体数はそれぞれ3体としました。本試験では柱や梁等の軸組にはすべてトドマツを使用しました。
 試験体の主な仕様と試験により得られた壁倍率を表5に示します。建設省告示第1100号では厚さ9mmの構造用合板を使用した軸組構法耐力壁の壁倍率は2.5と定められていますが,本試験では,9mm,12mmを使用した試験体の壁倍率は3.4となり,告示よりも高い値が得られました。また,スギを用いた合板の壁倍率は9mmで2.9,24mmで5.8との報告1)があり,アカエゾマツ合板はこの値を超えていることから,同等以上の性能があることがわかりました。

写真3 水平せん断試験,表5 耐力壁試験体の仕様と評価結果

写真4 試作した内装用合板

 内装用合板の製造


 アカエゾマツは輪生状に枝が出ることから,内装用合板を製造するためには,節の少ない単板を選んだり,節が連続して並ばないよう分散させる必要があると考えられます。今回は外観上節の少ないと思われる原木(原木No.3の元口側)1本を選び,厚さ1.57mmのロータリー単板を得ました。単板は割れや節等の欠点の少ないものを表板に使用し,厚さ7.5mm,5plyの実大サイズ(91×182cm)の合板を製造しました(写真4)。接着剤には,合成ゴムラテックス系樹脂を主体としホルムアルデヒドを含まない三井化学(株)製ストラクトボンドNF-6830を用いました。今回使用した原木からは無節の単板が多くとれたこともあり,比較的良質な内装用合板が製造できたと考えています。

 おわりに


 今回用いたアカエゾマツ原木からは,一部に無節の単板も取れましたが,節が連続して出現する単板もあり,その品質は非常にばらついていました。しかし,手入れの行き届いた高齢人工林材から製造した合板は,構造用としての十分な性能が確認でき,内装用としても十分な品質を持った製品が製造できることが確認できました。アカエゾマツ人工林は今後大径化していきますが,枝打ちなどの手入れを適切に行い,良質な原木の出材に期待したいところです。

参考文献

1) 青木謙治:木材工業,63(6),256-261(2008)

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