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Q&A 先月の技術相談から

床暖房用フローリングについて



Q: 改築して全室床暖房にしようと思っています。工務店からは床暖房用フローリングの使用を薦められていますが,通常のフローリングよりかなり高価で予算がオーバーしてしまいます。通常のフローリングと床暖房用フローリングを見比べても,素人目には全く違いがわかりませんし,全室床暖房にすれば,床暖房の設定温度も低くて済むと聞いていますので,フローリングが割れたりする心配はないと思うのですが,普通のフローリングを使用するわけにはいかないのでしょうか?



A: なかなか難しい問題を含んでいます。
 現在,床暖房用フローリングにはJASやJISといった明確な性能の規定がなく,メーカー各社が自主規格に基づいて床暖房用フローリングを供給しています。ですから,床暖房用フローリングを使用したからといって,一定の性能を備えているとは限りません。一つの目安としては,大手ガス会社,電力会社の床暖房規格に適合したものであるかどうかを確認するとよいでしょう。大手ガス,電力会社の床暖房規格は非常に厳しく,床暖房用フローリングの性能試験も厳しいものとなっていますので,それに適合したものであれば,ひとまず安心だと考えられます。
 注意したいのは,トラブルが起きた際の保証の仕方を契約文書の中で,明確にわかりやすく記述しておく事だと思います。

 床暖房用フローリングに発生するトラブルには,大きく分けて二つのものがあります。一つはフローリングが乾燥し,収縮して生じる目地の隙間(目すき)の問題。もう一つはフローリングが湿気を吸って伸長し,押し合って浮き上がり,床に凸凹が生じる場合(突き上げ)です()。特に本州の梅雨時や,風呂場前の更衣スペース,台所などの水廻りにフローリングを使用して悪条件が重なった場合や,新築住宅の場合で,コンクリートの土間が十分に乾燥する前にフローリングを施工した場合などに見かけられる代表的なトラブルの一つです。

図 床暖房用フローリングの代表的なトラブル

 これらに関しては,「床暖房の稼働の有無に関わらず,○mm以上の隙間が床全体の△%以上に生じた場合には適切な補修を行う」「床に浮き上がりや凹凸が生じた場合には,平坦に戻すように補修を行う」など,なるべく具体的に取り決めを交わせれば良いと思います。また,補修を行うのはメーカーなのか,設計者なのか,工務店なのか,責任の所在をはっきりさせておく必要もあるでしょう。

 床暖房フローリングには外見ではわからない様々な性能向上のための工夫がなされています。例えば,合板を基盤(台板)に用いたものでは,通常品が5層の合板を使っているのに対して,7層や9層の合板を用いたり,表面の化粧板の直下の層に,化粧板と木目の直交する単板を挟み込んだり,不織布や樹脂シートの層を設けたりと,熱の負荷や乾燥~湿潤に対する様々な防護策が講じられています。ただし,中には通常品と変わらないような性能のものを床暖房用として販売している場合もあるようですので,注意が必要です。「フローリングは木なんだし,呼吸する素材だから,伸び縮みして当たり前」というような逃げ口上を口にする業者は避けた方が賢明でしょう。

 何よりも床暖房用フローリングを使うメリットは,価格が高いなりの保証が受けられる事だと考えてください。もし,床暖房の場所に普通のフローリングを敷設してトラブルが起きても,どこからも保証は受けられないでしょう。また,適切な保証を受けるためには,契約書に保証条項を設けるなどして,確実・適正な保証が受けられるようにしておきましょう。
 床暖房用フローリングでトラブルと呼ばれるものは,メーカーと工務店などの間で責任の押しつけが長引いて,ユーザーが取り残されるケースがほとんどだと思います。迅速に適正な対処がなされるように,ユーザーの皆さんも自己防衛を心がけてください。

(技術部 成形科 澤田哲則)

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