(担当:企業支援部普及調整グループ) |
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NHK 今日は林産試験場で開発した「色彩浮造り合板」という合板についてお話していただけるということですが,名前に「浮造り」や「合板」という聞きなれない言葉があります。浮造り,浮くに造りと書いて浮造りなのですが,まず,言葉の意味を教えてください。
松本 浮造り,というのは木材の伝統的な加工方法の一つです。マツやスギなどの針葉樹の表面をブラシなどでこすることで,木の柔らかい部分だけが削り取られて,堅い木目の部分だけが残る,木目を浮き出させる加工法のことをいいます。
NHK 木目の模様をはっきりさせるということですね。それでは,合板というのは,一般にいわれるベニア板のことでしょうか?
松本 そうですね,合板というよりは,ベニア板といった方がみなさんには,とおりが良いと思います。
NHK こういった物も最近では,いろいろな所で手に入りますからね。
松本 ホームセンターなどでも簡単に入手できますし,実際には自宅の押し入れの内装などにも使われている身近な材料です。
NHK 以前に比べると,カラフルなものなど,さまざまな種類のものがあるかと思いますが,その中でも,色彩浮造り合板とは,どのような合板ですか?
松本 色彩浮造り合板は,北海道の山から採れるトドマツやカラマツなどの針葉樹を原料とした合板です。
色彩浮造り合板は,合板を製造するときに針葉樹の薄い板を,何枚も何枚も張り合わせますが,張り合わせる接着剤に色のついたものを使い,板と板の間に色のついた層を作ります。できた合板の表面を先程説明した浮造りという加工法で削り取ることで,柔らかい部分が削られて下の色の部分が見えてきます。そして,木目の周りに色が出てくる仕組みになっています。
NHK なるほど,先に入れておいた色が出てくるということですね。どんな色が使われることが多いのでしょうか?
松本 着ける色は顔料で調整するので,赤や,青,黒,パステルカラーなど,本来の木材とは違った木目を楽しむことができます。また,堅い木目の部分が浮き出た形で残りますので,手で触れてみると木目に沿った凹凸がついているのが感じられます。
このように浮造りという加工方法を使って,合板の表面の木目を様々な色彩で彩ることから,色彩浮造り合板という名前を付けました。
NHK こうした形で作られる浮造り合板ですが,開発のきっかけは何だったのでしょうか?
松本 もともと林産試験場では,北海道の山から採れる木材の有効な利用方法の開発を仕事としていますが,トドマツやカラマツのほとんどが住宅の構造材や梱包材に使われています。もっと付加価値が出て,人が直接目にしたり触れたりできる,住宅の内装用や家具部材に使えないかと思い,見た目に鮮やかな木目をもつ色彩浮造り合板を開発しました。
写真 色彩浮造り合板を使った
オープンシェルフ
NHK なるほど,そうして開発した色彩浮造り合板ですけれど,広く目にするようになっているのでしょうか?
松本 家具用としては,林産試験場独自の取り組みに加えて,旭川市や札幌市の民間企業と共同で製品の試作に取り組んできています。
平成20年度には,札幌市のデザイナーがデザインを,旭川市の建具店が組み立てを,林産試験場が材料の製造をそれぞれ担当して製作したオープンシェルフ(写真)が,東京のビックサイトで行われた家具のデザインコンペでデザイン大賞を獲得することができました。今後の製品化が期待されています。
NHK 今,お話のあったオープンシェルフですが,実物を見ることができますか?
松本 実物は林産試験場内に展示しています。今回説明した色彩浮造り合板という材料やシェルフに興味をもたれた方がおいでになりましたら,是非,林産試験場にお問い合わせください。
NHK 実際に見たり触ったりすることで,これまでのものとは随分と違った感覚が得られるのでしょうね?
松本 そうですね,浮造りをかけることで木目が表面に残っていますので,凹凸も感じられると思います。
NHK なるほど,今後に期待のできる合板になると思うのですが,このあと,どのように研究が進んでいくのでしょうか?
松本 家具材の方では順調に実用化が進んでいますが,建物の内装材としてはクリアすべき課題がいくつかあります。色彩浮造り合板を実際の建物で活用していくために,耐火性や,薄型化など,現場のニーズを考慮しながら実用化を進めていきたいと考えています。
NHK カラフルな北海道らしい家や家具が実際のものになっていきそうですね。
松本 そうですね,住んでくださる方や,見てくださる方に楽しんでいただける木材を提供したいと思っています。(以上)