●特集『平成22年 研究成果発表会』-安全・安心・快適な高付加価値製品の開発-
公共施設のような大規模で不特定多数が集まる建築物では,構造部材に一定時間の火災に耐える性能が求められます。それらの大規模建築物の木造化には,これまで火災時に炭化する部分を見込んだ断面にすることで,45分間または60分間の火災に耐える性能(準耐火性能)が付与できる大断面集成材が使用されてきました。しかし,準耐火性能を付与した集成材は,断面寸法が大きくなるため,ラミナの幅方向の接着(幅はぎ)または幅の広いラミナの入手が必要であり,製造コストの上昇や生産効率の低下を招いていました。
本研究では,容易に入手できる寸法のラミナを使用し,幅はぎせずに製造できる幅150mmの集成材への準耐火性能の付与について検討しました。方法は,被覆材を集成材の側面に取り付けることで,火災時での集成材の幅方向の炭化を抑制し,準耐火性能を付与します。被覆材は,製造コストを考慮し,集成材製造時に余るラミナを利用します。
幅150mm×高さ300mmの道産カラマツ集成材を用いて,梁を想定した準耐火性能試験の結果から,被覆材厚さ10mmで45分間準耐火性能,被覆材厚さ22mmで60分間準耐火性能を付与できることが推測されました。
本成果の実用化には,国土交通大臣の認定が必要であり,また集成材の断面寸法についても実情を踏まえた検討が必要です。今後は,この成果に興味をいただいた方々とともに,それらの課題を検討していきたいと思います。ご協力,よろしくお願いします。