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平成22年度 林産試験場の試験研究紹介

企業支援部 普及調整グループ


 林産試験場では,平成22年度に41課題(うち新規10課題,平成22年4月末時点)の試験研究に取り組みます。その内訳は,道の交付金で実施する戦略研究1課題,重点研究6課題および経常研究12課題に加え,国や法人等の委託や補助金を利用した公募型研究12課題,民間企業等との一般共同研究10課題となっています。各研究課題の概要は以下のとおりです。

 戦略研究,重点研究および経常研究


I.建築用材の失地回復と加工・流通システムの高度化のための研究開発

1) 地球温暖化と生産構造の変化に対応できる北海道農林業の構築(戦略:H21~25)
 地球温暖化への対応・適応策として,農林業においても生産構造の変化に対応した低コスト・省エネルギーなバイオマスの生産・利用方法が求められています。そこで,林業分野において求められている,二酸化炭素固定能の高い品種や,効率的な二酸化炭素の固定と排出削減を図る木材生産・利用システムを開発します。

2) カラマツ大径材による建築用材生産技術の検討(重点:H21~23)
 今後出材が増加すると見込まれているカラマツの大径材は,品質や性能の確かな構造用の柱・梁に利用することで,付加価値を向上させることが求められています。その実現に向けた体制を整えるため,効率的な製材木取り補助システムと高品質乾燥技術を開発します。

3) 道内資源の使用量拡大を目指した建材開発と利用法に関する研究(重点:H21~23)
 圧縮木材はスギ材を中心に床材等の用途で普及が進んでいるものの,道内においては未だ生産拠点がありません。道産針葉樹材の新たな需要創出に向けた高付加価値化が求められていることから,木材の新しい圧縮技術を開発するとともに,内装用建材等としての利用に向けた検討を行います。

4) 通年実施可能な優良原木選別技術の開発(経常:H21~22)
 林産試験場で開発した原木選別システムを凍結材へも対応できるように改良することで,優良原木の選別を通年で実施が可能となる技術を開発するとともに,選別の経済的メリットの明確化,選別基準値のルール化を図ります。

5) 北海道産針葉樹の樹皮タンニンを用いたフェノール樹脂接着剤の改良(経常:H21~22)
 針葉樹構造用合板の製造の効率化を図る上で,低い温度で硬化し,高含水率単板に使用可能なフェノール樹脂接着剤の開発が求められています。そのために,タンニンを含む道産針葉樹樹皮の利用を検討します。

6) トドマツ原木の密度計測による水食い材判別技術の検討(経常:H22~23)
 トドマツは心材部に「水食い」と称される高含水率領域を含む部位がしばしば現れるため,乾燥材の生産現場において水分むらや割れの発生,乾燥時間の長期化などの問題を抱えています。乾燥効率を向上させるために,原木の段階で水食いの発生程度を予測し選別する技術を検討します。

II.付加価値が高く,安全・安心・快適な木材製品・木質構造物づくりのための研究開発

1) 木造住宅の新構法開発のための部材接合部の応力伝達メカニズムと設計・評価手法に関する研究(重点:H21~22)
 長期優良住宅の実現へ向けて有効な長スパン架構の設計技術を整理し,工務店等が道産材を使用して新たな構法を開発できるよう支援するための技術資料を整備します。特に接合部の仕様と性能について重点的に検討します。

2) 木製遊具における安全・安心と長寿命化に関する研究(重点:H22~24)
 木製遊具で遊ぶ子供の安全性の確保,道産材の遊具への利用拡大,木育を推進するとともに,部材交換を容易にすることで長寿命化を図ったハイブリッド構造遊具の開発,既存木製遊具の補修方法の開発,および補修時期を判断するための劣化遊具部材データベースの構築を行い,木製遊具の円滑な普及を図ります。

3) 木材・アルミ複合サッシを対象とした遮炎性能付与要素技術の検討(経常:H21~22)
 防火規制の厳しい都市部では窓などの開口部に遮炎性能を求められる国土交通大臣認定の取得が必要ですが,サッシメーカーでは試行錯誤的にサッシを開発している状況です。そこで,遮炎性能を付与する要素技術の整理・検討と,耐火試験による性能確認を行い,メーカーによる開発を支援します。

4) 野外木質構造物に発生する腐朽菌の遺伝子情報の整備と検出技術の確立(経常:H21~22)
 野外木質構造物の適切な維持管理体制の構築に向けて,主に野外で発生する腐朽菌の遺伝子情報のデータベースを整備し,腐朽診断において腐朽菌を容易に検出・同定する技術を確立します。

5) 積雪寒冷地域における道産木材の耐候性の向上(経常:H22~24)
 積雪寒冷地域における道産木材(トドマツ,カラマツ)の耐候性向上に必要な塗装処理方法を明らかにします。また,積雪寒冷地域の影響を考慮した促進劣化試験方法を検討し,耐候性を短期間で評価可能な技術を確立します。

III.森林資源の総合利用の推進のための研究開発

1) 食用きのこ生産工程における副産物の高次利用を目指した物質変換プロセスの開発(重点:H21~22)
 きのこ生産では規格外品や整形残さ,廃培地が大量に発生しており,その有効利用と付加価値向上が求められています。そのため,食品やエネルギーとして活用可能な有用成分への変換プロセスの開発と製品化の検討を行います。

2) 改質木材を利用した育苗培土の開発(重点:H20~22)
 農作や園芸作で利用される育苗培土には,保水性や通気性,軽量性に優れたピートモスや広葉樹バークなどが用いられていますが,近年,資源の枯渇や環境保全による採取規制などにより供給や品質が不安視されています。そこで,伐根や枝条等の資源量が豊富で未活用な木質系廃棄物を改質して育苗培土資材として利用する技術を検討します。

3) バイオガス利用促進に向けたアンモニア揮散抑制技術の開発(経常:H21~23)
  バイオガスプラントでは,大量に発生する消化液の貯留時と農地散布時のアンモニアガスの揮散が問題となっていますが,その抑制方法として,吸着効果を有する木質熱処理物の効率的な利用技術や揮散抑制・土壌改良効果の検討,利用に適した性状を有する木質熱処理物製造技術の検討を行います。

4) 混練型WPCの高木質化に向けた複合成形技術の検討(経常:H22~23)
 木材とプラスチックを混練成形した材料(混練型WPC)は,需要が急拡大している新素材ですが,木材含有率が高くなると成形加工性,耐久性,寸法安定性などが大きく低下するなどの課題があります。木材含有率を高めても成形加工性や材料性能を損なわない成形技術の検討を行い,道内の木質バイオマスを主原料とした木材含有率の高い混練型WPCの開発を目指します。

5) 道産広葉樹資源の育成に向けた人工林材の材質調査(経常:H22~24)
 広葉樹人工林材の材質,および施業と材質の関係を明らかにすることにより,既存の広葉樹人工林資源の有効利用と,持続的に木材利用が可能な広葉樹人工林施業に向けた基礎資料を作成します。

6) 菌根性きのこ感染苗作出技術の開発(経常:H21~27)
 本州のアカマツ林ではマツタケの林地栽培が行われていますが,発生の実態が明らかになっていません。道内でマツタケが採取される天然林では,林地栽培の管理が困難なため,人工林での栽培技術の開発が必要です。そこで,北海道産マツタケ感染苗作出技術を開発し,道内人工林でのマツタケ感染苗の移植技術を検討します。

7) 廃棄物系バイオマスを利用した固形化燃料に関する研究(経常:H20~22)
 家庭用燃料として開発された木質ペレットは,産業用燃料としては価格が高いため需要が伸び悩んでいます。そこで,コストダウンのために原材料として資源量が豊富で安価な建築廃棄物や農産残さ等の廃棄物系バイオマスを活用した固形化燃料を開発し,その安全性や品質の調査および製造技術を検討します。

8) 木材成分の溶解に適したイオン液体の開発(H21~22)
 木材はセルロースとヘミセルロースとリグニンが複雑に絡み合った複合体のため,既存技術では化成品の製造には利用できていません。そこで,これらの木材成分を分離するために,各木材成分を溶解させるのに適した溶媒系を検討します。


 公募型研究


 公募型研究は,各省庁や所管独立行政法人等の委託や補助金等,各財団の研究助成事業等,競争型研究資金の公募に応募して採択された場合に実施される研究です。事業によっては他の研究機関や企業とも連携しながら製品開発・技術開発を行います。

1) 防腐剤(CCA)処理木材の自動判別方法および有効利用に関する研究(H20~22)
2) 木質材料による「剛」なコーナー要素の開発と究極の木質ラーメンの実現(H20~22)
3) 安全・安心な乾燥材生産技術の開発(H21~23)
4) 動的応答特性を考慮した木材接合部の耐力評価(H21~23)
5) フロンティア環境における間伐材利用技術の開発(H21~23)
6) 教室における木質二重床からのホルムアルデヒド発生の調査と対策(H20~22)
7) 相乗効果発現薬剤による木材の発熱性,ガス有害性の抑制(H20~22)
8) 白樺外樹皮からの新規高機能性物質「ベチュリン」の製造開発(H21~22)
9) アンチエイジング機能を有するきのこを利用した新規健康食品の開発(H21~22)
10) 樹木の分子系統と動植相互作用系に着目した化学的防御と投資配分機構の実証的研究(H20~22)
11) 農業残渣等を燃料とする農業ハウス用自動燃焼ボイラーの開発(H21~22)
12) 道内カラマツ資源の循環利用促進のための林業システムの開発(H19~22)


 一般共同研究


 一般共同研究は,林産試験場と民間企業等が共同で製品開発や技術開発のための研究を行う制度です。研究の成果は,共同研究を行った企業が優先的に使用することができます。また,研究成果により得られる特許等の知的財産権は北海道立総合研究機構と企業との共有となります。

1) 住宅におけるペレット暖房システムに関する研究(H20~22)
2) 積雪寒冷地における水系木材保護塗料の塗膜性状について(H21~22)
3) 床暖房用フローリングの性能試験の効率化(H21~22)
4) 国産針葉樹や廃木材を原料とした構造用MDFの検討(H20~22)
5) 自然エネルギーと木質系資材を用いた除排雪作業軽減化システムの開発(H20~22)
6) 運動床における木質系床暖房に関する研究(H22~23)
7) 道産針葉樹による準不燃木材製造条件の確立(H22)
8) わん曲集成材を用いた新製品開発(H22)
9) 地元材の利用促進のための障害者施設ネットワークによる物作り技術の開発(H22)
10) 道産材3層パネルの構造用途開発(H22)


 受託研究


 受託研究は,民間企業・団体等からの委託を受けて,林産試験場が保有する技術蓄積をもとに,企業の技術向上や製品開発につながる研究を実施する制度です。共同研究との違いは,民間企業には研究の分担が無く林産試験場のみで実施すること,研究成果により得られる特許等の知的財産権は北海道立総合研究機構に帰属することなどがあります。
 ※4月末時点で該当課題なし

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