●特集『平成22年研究成果発表会』パートII
バイオガス製造時の発酵残渣である消化液の用途として,液肥利用が有望ですが,農地散布時等のアンモニア揮散を抑制する技術の開発が課題です。この課題解決に向け,木材の熱処理物のアンモニア揮散抑制効果,揮散抑制に適した熱処理物の製造条件等について検討しました。(共同研究: (独)土木研究所 寒地土木研究所)
消化液農地散布時,貯留時の利用を想定し,木質熱処理物のアンモニア揮散抑制効果,吸着効果,揮散抑制に適した製造条件に関する実験室スケールでの試験を行いました。
アンモニア揮散抑制効果
消化液に含まれるアンモニアとほぼ同濃度のアンモニア水(約0.2%)に木質熱処理物を投入し,揮散するアンモニア濃度を比較しました。その結果,アンモニア水のみ(◇)や原料(無処理チップ ◆)を投入したものと比べ,木質熱処理物(▲,●等)投入により,アンモニアの揮散が抑えられました(図2)。
アンモニア吸着効果
熱処理物の粉末を上記のアンモニア水中に入れ,溶液中での吸着効果を試験しました。その結果,各熱処理物が速やかにアンモニアを吸着することが示されました(図3)。(アンモニア吸着量は熱処理物重量当たりの重量%で示しており,1%で相当量のアンモニアが吸着除去されたことになります。)
アンモニアの揮散抑制・吸着に適した熱処理物製造条件
これらの結果を原料(カラマツ材,広葉樹混合材),処理温度別に比較した結果,両樹種とも300~400℃処理物で高い吸着効果(図4) ,揮散抑制効果が示されました。
これらの試験結果から,木質熱処理物が高いアンモニア揮散抑制効果,吸着効果を有すること,また,アンモニアの揮散抑制に適した熱処理物製造条件(300~400℃処理)が示されました。
今後,技術的課題の解決と資源循環に向けた技術開発のため,より大きなスケールでの評価試験等を予定しています。