●特集『平成22年研究成果発表会』パートII
バイオ燃料は,燃焼によるCO2排出をカウントしないことから温暖化防止に貢献しうるエネルギーとして期待されていますが,真に「環境に優しいか否か」を判定するには,原料の入手から燃料製造までにわたり環境負荷を算出するLCA (ライフサイクルアセスメント) による評価が不可欠です。本研究では,原料であるヤナギの収穫試験およびそれを用いたベンチスケールでのエタノール製造実験から得られた原料・エネルギー消費量のデータを基に,設備の断熱,バイオマスボイラーの利用等を想定して,LCAを用いたエタノール製造のエネルギー消費量およびCO2排出量の試算を行いました。
○対象とする製品・評価単位 : 90%エタノール 1.11L (無水エタノール1Lの製造に必要な90%エタノールの体積)
○評価範囲 : 原料収穫から輸送,前処理,糖化発酵を経て蒸留プロセスまで
○原単位 : JEMAI-LCA Pro Ver.2.1.2に搭載されるデータベース
・得られるエタノールのエネルギー収支は0.89,CO2排出量は同熱量ガソリンと比較して2.4倍となりました。
・糖化発酵プロセスの負荷が全体の約8割を占め,撹拌モーターの消費電力に由来することが明らかとなりました。
よりよい条件を想定してエタノールを製造するとエネルギー収支は1付近まで向上し,糖化発酵プロセスの改善によって得られるエタノールのエネルギーより少ないエネルギーで製造可能であると示唆されました。なお,製造システムの熱源には発酵残渣等バイオマスの利用が必須です。今回の製造実験では高めの撹拌回転数で糖化発酵処理を行いましたが,今後は回転数の減少および撹拌操作自体のカットを検討するとともに,今回評価範囲には含めなかった原料栽培,脱水および排水処理プロセスを含めた試算を行ないます。また,温水抽出による副産物 (オリゴ糖) の活用を考慮したコスト試算も行う予定です。
○本研究は,北海道開発局「北海道に適した新たなバイオマス資源の導入促進事業」の一環として日本データサービス(株)との共同研究により実施しました。