●特集『平成22年研究成果発表会』パートII
近年,食品の偽装表示(産地・原材料偽装や消費・賞味期限偽装など)やBSE(いわゆる狂牛病)対応などが問題となりました。このため,食品全般に◎消費者は安全を,◎生産者・加工業者等は信頼性の回復・確保を求めることが多くなりました。
これに対応できる有効な手段として,「トレーサビリティシステム」があります。
トレース(なぞる。跡をたどる。)とアビリティ(能力)を組み合わせた言葉で,「跡をたどり,さかのぼって調べられる」という意味です。日本語では「生産履歴管理」といいます。このシステムは,下の例のように,食品の生産や処理・加工,流通・販売等の段階で,仕入れ先や販売先などの記録を取り,識別番号等を用いて,情報の追跡を可能とする仕組みです。
このシステムは牛肉などで実施されていますが,きのこに関してはまだ整備されていません。しかし,業界に導入・運用される際に,即応できるように準備しておくことが必要です。
上図のようなシステムの前段となる生産履歴情報管理体制の確立(図中の点線による囲み部分)を主な目的に,道内で生産履歴管理の導入を希望するきのこ生産者に対し,参考として「原材料や栽培・作業条件などの記録票(様式)」を用意し,実践していただきました。また,既に独自に実践している生産者に対しては,この記録票(様式)を基に改善の有無等について意見交換しました。
そして,約2年間の実践後に,再度意見交換しました。
これらの生産者の取組み内容をまとめ,導入事例集として公表しています(記録票のダウンロード可)。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/rrm/kinokoseisanrirekikanri.htm
Q1.きのこの生産履歴管理は,生産者にとって何かメリットがありますか?例えば,売価が高くなるとか?
A1.金銭面でのメリットはありません。しかし,食の安全・安心が求められていることから,生産履歴管理がなされていない生産者からの買取りを控える小売店なども出てきています。また,消費者などからのクレームに早急・適正に対応(情報提示)できるようになります。さらに,生産工程に係るトラブル発生に対し,記録を見直すことで短期に原因特定が可能となり,安定した経営にもつながります。
Q2.生産履歴管理の導入は難しくないですか?また,費用はどのくらい必要ですか?
A2.現時点では,例えば北海道の記録票を使いやすくまた記入が負担にならないようにアレンジして記録するだけですので,費用はほとんど発生しません。将来,システムが確立される時には,パソコンの導入などが必要になると考えられます。
現在,システム自体は発展途上ですが,システムの導入に向け生産者に求められる内容も変わってくる可能性があります。今後は,必要に応じて記録内容等を見直していく必要があります。