●特集『平成22年研究成果発表会』パートII
カラマツ人工林は成熟期を迎え,今後,建築構造材等の用途に積極的に活用する機運が高まっています。
集成材のラミナとして活用する場合,立木を無作為にラミナに加工してから強度をランク分けすると,特定の強度の材が不足したり,余剰となったりして,不経済な状況が生じてしまいます。
立木・原木の段階で,得られるラミナの強度が予測できれば,ラミナに加工する前に,ラミナに適した原木を選別することが可能となります。
そこで,カラマツ人工林材から得られるラミナの強度性能を,立木段階での測定で予測する方法の一つとして,立木の応力波伝播速度の測定方法を紹介します。
測定時期:樹木内の水分が凍る冬季は避ける。
測定機器:ファコップ(写真1),ハンマー,長さ1mのものさし
測定手順:
(1) 傾斜地では傾斜の山側,谷側の2方向とそれらを結ぶ直径に直交する2方向の計4方向,平坦地では東西南北の直交する4方向について測定する。
(2) 地上高0.5mの高さにSTOP側,地上高1.5mの高さにSTART側のセンサを打ち込む(測定距離は1m)(写真2)。
(3) START側センサをハンマーで軽く叩くと,本体に数値(伝播時間,単位はμ秒)が表示される。3~5回繰り返し叩き,安定した値を採用する(写真3)。
(4) (2),(3)の手順を4方向について行い,得られた値を平均したものを立木の伝播時間とする。
(5) 「応力波伝播速度」を以下の式から算出する。
応力波伝播速度(m/秒)=〔距離(1m)×1,000×1,000〕÷〔伝播時間(μ秒)〕
立木の応力波伝播速度とラミナのヤング係数の関係の一例を図1に示します。4か所の異なる林分から得た80本の立木の例ですが,比較的よい相関が見られます。
応力波伝播速度が4,000m/秒以上の立木では,ヤング係数10GPa以上の強度を持つラミナの出現割合が高まると考えることができます。