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●特集 2010木製サッシフォーラム「屋外の騒音とその遮断」

音の基礎知識と住宅の遮音

北方建築総合研究所 居住科学部 居住科学グループ 廣田誠一


 はじめに


 北方建築総合研究所の廣田です。音の基礎知識と住宅の遮音についてお話をさせていただきます。音の基礎知識について,皆さんが普段耳にすることのないような音を実際に出して体験していただきたいと思います。

 音の性質


図1 住宅内外の音の種類と大きさ

 音は非常に身近なもので,快適なものと不快なものがあります。私は熱の研究もしていますが,熱は冷暖房で制御できるのに対して,音の場合は外の騒音が問題になったり階上からの音が問題になったりと非常にやっかいです。図1に示すように室内外にはいろいろな音が存在しています。音は空気中であれば圧力が変化して伝わります。

 音の波長


 音には波長があります。波の長さが長いと低い音,短いと高い音になります。周波数は1秒間の振動数です。音の波長は,音の速さを周波数で割った物です。空気中の音速は340m/sですので,63Hzでは5.4m,125Hzで2.7m,1000Hzで34cmとなります。
 住宅の天井の高さは2.5m前後です。2階から床に衝撃を与えると,音が1階の天井から出て1階の床で跳ね返ってきます。すると120Hz前後で定在波が出やすくなります。このように波長は意外なところで身近なところで感じることができます。

 音の減衰


 音は遠くに行くほど聞こえなくなると言う特性も持っており,音源からの距離が2倍になると6dBずつ下がっていきます。1mから2mになると6dB下がって,2mから4mになるとさらに6dB下がります。
 ここで実演をします。スピーカーから雑音を発生させ,騒音計で音の大きさを測ります。スピーカーのすぐ前では80dBですが,スピーカーから2m離れますと74dBになります。16m離れると会場後ろの壁からの反射で大きな値が出て61dBです。このように周りの環境によって減衰量が変わります。そのため,距離を計算することによって距離減衰で音が聞こえないようにするという設計ができます。

 音の合成


 音の合成を実演します。二つのスピーカーから同じ音の大きさを出すと,音の大きさは大きくなりますが,騒音レベルは2倍になりません。70dBの音と70dBの音を合わせると73dBにしかなりません。これはdBという指標が対数であることから生じます。70dBの音を出すスピーカーが1000個あると100dBになります。すなわち100dBの音というのは大変な大きさであると言えます。

 周波数


 次に様々な周波数の音を聞いていただいて,音が大きくあるいは小さく聞こえるかということを感じていただきたいと思います。125Hz,250Hz,500Hz,2000Hz,8000Hzの5種類の音を出します。最初の音と次の音のどちらが大きく聞こえるかを挙手でお願いします。今お聞かせした音は,実はいずれの音も同じ音圧レベルになるように調節してあります。佐藤先生の講演にありましたように125Hzの音よりも250Hz,250Hzより500Hzの音の方がうるさく感じます。500Hzと2000Hzの音ではほとんど変わりません。8000Hzの音は一番聞こえにくい音です。ほとんどの方はこのようにお答えいただきました。このように人間の耳は周波数によって感じ方に違いがあります。

図2 A特性曲線




 音圧レベルと騒音


 音圧レベルは音の圧力ですが,最小と最大で100万倍くらいの大きさの違いがあります。このままでは数字が扱いにくいので対数をとってdB表示をしています。騒音レベルは,先ほどの聴感の実験にあったように人の耳で聞こえる感度で補正したものです。この補正をA補正(図2)と言います。等感度曲線とA補正の対応は非常によいとされています。

 吸音


表1 主な材料の吸音率

 音には吸音というものがあります。最近の住宅は床がフローリング,壁と天井は石膏ボードで室内の吸音率が小さくなっています。実際に測定すると残響時間が1秒以上あります。室内で会話をするには,残響時間を0.5秒以下にしたいものです。表1に主な材料の吸音率を示します。吸音率は,開放された窓のように音を全く反射しないものを1,入ってきた音をすべて反射するものを0としています。そのため,残響時間を短くするためには吸音率が大きい建材を多く使うとよいことになります。図3に示すように音を発生させてそれを急に止めるとどんどん小さくなっていきます。残響時間は音圧レベルが60dB下がるのに必要な時間を表しますが,その時間が長いほど音が響きやすいということです。住宅の残響時間の計算例を表2に示します。(3)のような部屋を作るとうるささをあまり感じない落ち着きを感じる部屋を作ることができます。

図3 残響時間 表2 残響時間の計算例

 遮音


 遮音は一様な材料であれば重いほど効果的です。ここで,遮音実験を行います。スピーカーを入れた箱に,ペアガラスの木製サッシがついています。スピーカーから各種の日常の音を流して,サッシの遮音性能がどのくらいなのかを体験したいと思います(写真)。スのくらいなのかを体験したいと思います(写真)。スピーカーから雑音を発生させてサッシを閉じると,箱の内外で40dB程度の音圧レベルの差があります。開いたときの音に比べて,閉めたときの音が高く聞こえるのがわかります。木製サッシは気密性能が高いですから,遮音性能はかなり高いと言えます。
 サッシの遮音性能を向上するには,ガラスを厚く,すなわち重くすること,ガラスの枚数を多くすること,気密性能を高くすることでかなり変わります。二重サッシは遮音性能的に有利なもので,空気層をなるべく広くとることによってかなりの遮音性能を期待することができます(図4)。サッシや換気口の遮音性能を高めるほかにも,障害物を置いて音を防ぐ,室内の吸音率を高める方法もあります。

写真 遮音の実演 図4 防音サッシの例

 住宅内を伝わる騒音


図5 住宅における音圧レベル差の実測調査結果

 木造住宅内の音には,床衝撃音,空気伝播音が問題としてあります。床衝撃音は床から天井を伝わる音が支配的で,階段などから回り込む音より遙かに大きいために,床の遮音対策をする必要があります。しかし衝撃力が大きいために非常に対策が困難です。
 空気伝播音は床から天井に抜ける音や,吹き抜けなどを経由する音などがあります。実際の住宅で音圧レベル差の調査をしました(図5)。吹き抜けや階段室のドアの有無で,音圧レベルがかなり変わります。住宅を設計するときに吹き抜けというのは魅力的な空間ではありますが,建具の遮音性能などの対策をとらないと音の問題が発生する可能性があります。

 快適な音環境


図6 住宅の外部騒音の遮断

 最後に快適な音環境を得るための方策について述べます。図6に示すように,屋根には雨音が響きにくい材料を使い,厚い断熱材を施すことで遮音性能を高めることができます。室内は吸音して残響時間を短くして落ち着いた空間を作ります。サッシは木製サッシのような気密性の高い物やトリプルガラスなどを使って外部騒音を遮断します。低い遮音性能を後から高めるのは非常に大変ですから,このような点に考慮しながら快適な住宅を造っていただければと思います。







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