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●特集 2010木製サッシフォーラム「屋外の騒音とその遮断」

北海道の住宅の遮音性能の実態

北海道立総合研究機構 研究企画部 平間昭光


 はじめに


 林産試験場の平間と申します。サッシなど木製の開口部材の性能評価の研究をしております。今日は,今までの事例からサッシと音の関係についてお話をしたいと思います。
 私が子供の頃の木製サッシは,大変気密性が低く,すきま風が入ってきたり,風でガタガタ鳴ったり,冬は凍り付いて開かなくなるようなものでした。林産試験場では昭和50年代の初期から,高気密高断熱の木製サッシを目指して研究開発をしてきました。昭和59年に断熱防露性と気密水密性の各試験機が導入されました。断熱性や気密性を確保した上で,さらに,防火・遮音・ユニバーサルデザインなどの展開が生まれました。

 騒音はどこから入ってくるか


 林産試験場では,音がどこから住宅内に侵入しているかを,実験住宅(写真)を使って測定を行いました。住宅には,各種仕様の窓や,取り外し式の壁などを設置して音響インテンシティというものを測りました。音響インテンシティとは,音がどの方向から,あるいはどの方向へ進んでいくかを考慮に入れた音の大きさです。図1に実験住宅の測定結果を示します。数字は壁面に対して垂直に進む音の大きさを示しています。特に値が大きいところを網掛けで示しています。音が漏れてくるところはガラス面であることがわかります。また,同じガラス仕様であれば,より大きなガラスからより多く音が漏れています。また,ガラス面を持たないドアの場合は,空気が漏れやすいくつずり部分などから音が漏れているのがわかります。

写真 実験住宅 図1 開口部を持つ壁面の音響インテンシティ分布

 

 サッシの遮音性を測る


図2 残響室法による測定

 サッシの音響特性を測定する場合は,実験室で行う場合と,現場で行う場合があります。実験室で行う場合は,図2のように残響室を使って測定することが日本工業規格(JIS)で決められています。音を出す部屋と音を受ける部屋の間に試験体を設置して遮音性能を測定する仕組みです。部屋の形は,音がいろいろな方向に拡散するように工夫されています。過去に行ったサッシの測定の中から一例を示します(図3)。ガラスは一般的なペアガラスです。黒い点がガラスメーカーが提示しているガラス単体のデータです。もし,サッシの気密性に問題がなければ,サッシの音響性能と,ガラスの音響性能はほぼ一致するはずです。グラフを見るとほとんど同じ挙動を示していますが,2000Hzと5000Hzのところで,サッシの性能がガラスの性能を下回っています。これはサッシの気密性に原因があると考えられます。
 図4は,防音仕様の合わせガラスと普通複層ガラスを同一のサッシに取り付けて比較した例ですが,ガラスそのものの音響特性には大きな違いがありますが,サッシに取り付けた場合は,その効果が十分に発揮されないことがあります。ガラスの防音性能を向上させただけではサッシの防音性能は向上しないということがわかります。サッシの防音性能を向上させるには気密性能など基本性能を向上させることが求められます。

図3 サッシの音響透過損失測定結果例(一般的ペアガラスを使用)

図4 サッシの音響透過損失測定結果例(防音仕様併せガラスと普通服装ガラスを比較)

 サッシの遮音性を改善する


図5 サッシの改善例(箱窓)

 では,サッシの防音性能を改善するにはどのような手段があるだろうかという実験の例をご紹介します。木製サッシの利点を生かして,障子を一つ増やした結合窓やよろい戸を考案しました。木製の遮蔽物を増やすことによってガラスを増やした場合と同様の効果を期待しました。上下にガラリを設けてありますが,これを開閉しても防音性にはあまり影響がありませんでした。図5は,独立したサッシの間に空気層をとって防音性の向上を期待したものです。効果は非常に高かったのですが,気密性を確保しなければいけないので,引き違いの窓ではこれほどの効果は期待できないと思います。

 住宅の遮音性を測る


 図6は屋外で,実際の住宅の遮音性を測定する方法です。戸外のスピーカーから音を出して,室内のマイクロフォンで音の大きさを測ります。この方法で高気密高断熱住宅の測定をした事例をご紹介します。構法は在来・ツーバイフォー・軽量鉄骨・木質パネルといろいろありましたが,各構法とも30dB程度の遮音性を示しました(図7)。測定結果をまとめて開口部のある壁と,開口部のない壁で整理しました(図8)。開口部のある壁では遮音等級D-30を,内壁ではD-40が平均値として得られました。

図6 住宅の遮音性測定

図7 各構法の遮音度

図8 開口部の有無による構法別遮音度

 航空機騒音と住宅


図9 飛行場周辺の住宅に要求される遮音性能

 北海道の住宅にどの程度の遮音性を付与すれば,どの程度の騒音に対応できるのか問題になったのが1994年の新千歳空港24時間運用化です。航空機の騒音に対応した遮音レベルを調べるために,滝川市にある滝川スカイパークで研究を行いました。高度や経路を変えて飛行機を飛ばして,地上で騒音を測定しました。滑走路周辺で必要になる住宅の遮音性能を図9に示します。滑走路周辺ではD-35が必要ですが,少し離れるとD-30から25であれば騒音に悩まされずに屋内で過ごせると推定されます。先ほどお示ししたように,北方型の高気密住宅であれば開口部があってもD-30は確保されていますから,この地域では特に対策を施す必要はないと考えられます。しかし,D-30を確保した住宅はどのような住宅であるかというところは,しっかりとは把握できていません。この点に関しては実験室レベルや現場での測定を重ねていく必要があります。

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