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●特集 2010木製サッシフォーラム「屋外の騒音とその遮断」

意見交換会(抜粋)

パネラー:佐藤,廣田,平間(講演者,敬称略)
司会:企業支援部長 石井 誠


石井: 講演の内容,それ以外にも身近な問題等がありましたら,ざっくばらんにご意見をいただければと思います。

 断熱材の遮音性の違い

会場: ウレタンとグラスウール断熱材では遮音性にはどのような違いがあるでしょうか。
廣田: 繊維系の断熱材とプラスチック系の断熱材では遮音性能の違いはほとんどありません。断熱材は遮音性能よりも吸音性能に大きな違いがあります。壁の中に繊維状の断熱材を入れると,その中を通るときに音が減衰して遮音性能が10dB程度あがります。プラスチック系の断熱材は,断熱材そのものが振動しやすい特性があるので,遮音性能はかえって悪くなる場合があります。

 二重ガラスのスペーサーによる遮音性の違い

会場: ガラスの遮音性にはスペーサーの材質の違いによる差はあるでしょうか。
平間: スペーサーの剛性がガラスの音響透過損失に影響を与えるとは考えにくいと思います。ガラスメーカーに問い合わせるとデータがあるかもしれません。

 各種サッシの遮音性

写真 意見交換会での発表者席の様子

会場: 木製サッシ・アルミサッシ・樹脂サッシの間で純粋に枠の材料の種類に起因する遮音性の違いはあるでしょうか。
平間: サッシの遮音性は,周波数帯によってガラスが支配的なところと,それ以外の部分が支配的なところがあります。枠が支配する部分はサッシの構造に左右されるので,枠の材料で遮音性がどの程度変わるかというのを一概に言うことはできません。
会場: 同じ形状のサッシをそれぞれの材料で作った場合遮音性に違いは出るでしょうか。
廣田: 枠の部分だけを考えて,木製かプラスチック製かの比較をするとします。遮音性能は質量が大きいほど高くなります。木とプラスチックの密度はほぼ同じですが,木製サッシが無垢であるのに対し,樹脂サッシは中が空洞になっています。単純に考えれば軽いプラスチックのほうが不利ですが,空洞が空気層になっているので,遮音性能が若干上がるかもしれません。ただし強度を増すためのブリッジがありますので,結果的には木製の枠の方が遮音性能は若干高いと思います。ただし,窓の面積の大部分を占めるガラスの性能のほうが支配的なので,枠の影響はほとんどないと思います。

 騒音を言語尺度で評価する意味

会場: 騒音の評価について,アンケート調査で言語尺度を用いる意味について教えてください。言葉を使わなくても0から10の数字で十分のように思えます。
佐藤: 「通常,言葉で表現するものだから言葉を使うべきだ」あるいは,「『全くうるさくない』から『非常にうるさい』の間を数値で表現した方が個人差が少ない」とする二つの主張があります。この二つの方法での調査を比較すると,ほとんど同一の結果が得られます。今のところどちらを使っても結果はほとんど変わらないという印象を持っています。

 なぜ北海道には建築と音の研究者が少ないのか

石井: 建築と音の問題は普遍的な問題ですが,北海道では今回の講師の御三方以外に研究者がほとんどいらっしゃいません。北海道では,なぜこの問題に関する関心が薄いのでしょうか。
佐藤: 私は建築環境工学と呼ばれる分野で仕事をしていますが,研究費が当たるのは熱のテーマばかりで,音のテーマは当たりにくい状況です。全国的にもこの傾向はありますが,北海道は寒冷地ですから熱の問題が注目されやすいのが原因の一つと思います。
廣田: 私も熱と音の両方に取り組んでいます。音の研究に必要な設備は大きく高価なので,測定に必要な環境を整備しにくいという背景もあります。
平間: 北海道の人たちが騒音に対して寛容というわけではなく,林産試験場にも住宅の騒音に関して測定依頼が来ます。解決すべき課題は潜在的に存在するのですが,相談が本州に流れている事例もあるのではないかと考えています。
石井: 音は非常に難しい問題です。音は物理量なので数字で表すことができますが,数字を実感として感じる機会がないこと,感じ方に個人差があることが問題を困難にしていると思います。私が経験した,高層マンションのエレベータシャフトに隣接した部屋からのクレーム事例では,測定値そのものは問題にならない大きさでしたが,住人は眠れないと訴えていました。騒音問題は個人の感覚によるところが大きく,そこが問題を大きくしているので,研究者から敬遠されていると感じています。

 高齢者に音が聞こえやすい家は可能か

会場: 先ほどの実演で1000Hz以上の音が聞こえませんでした。私の家では母親の耳が遠くなって,テレビの音量を上げるのでうるさくて仕方がありません。建物側の工夫で高齢者にも音が聞こえやすいような仕組みはできないでしょうか。
廣田: 音の聞こえやすさには個人差があります。1000Hz以上の音は加齢によって聞こえにくくなるようです。12000Hz以上の音は学生には聞こえても我々には聞こえません。これを住宅側で解決しようと吸音を行うと,低い音は吸音しにくいので高い音ばかり減ってしまいます。つまり,高い音を聞こえやすくするというのは困難です。正直なところ建築で対応するのは難しいと思います。
佐藤: ここ,大雪クリスタルホールのような音楽ホールでは,低音域から高音域までの残響時間を適正な物にするために建築材料と構造を調整します。しかし,高い音のみを明瞭に聞こえるように建物側を工夫することは難しいと思います。
会場: 部屋の残響時間を0.5秒以下にするのが理想的ということでしたが,当社で建てている住宅では,断熱ではなく吸音目的で間仕切りの壁の中にグラスウールを入れていますが,効果を測定する装置がありません。何か簡単に測定できる手段はないでしょうか。
廣田: 残響時間を計る方法を簡単に説明すると,ペンレコーダーに接続した騒音計で「バーン」という音を受けて,30dB下がる時間を2倍すればよいと言うことになります。これが入手しやすい機械で測定する方法です。騒音計単体で残響時間を測定できる物もありますが,80万円程度します。石膏ボードの中に吸音材を入れても吸音率はほとんど変わりません。ほとんどは表面の状態で決まってしまいます。普通の家では壁・床・天井の吸音率と面積で決まりますので,そこから計算するのがよいと思います。

 穴あきボードの有効性

写真 会場からの質問の様子

会場: 穴の開いた石膏ボードは,穴のない石膏ボードに比べて吸音率が大きいのでしょうか。石膏ボードの裏にグラスウールを入れてある場合はどうでしょうか。
廣田: かなり差が出ると思います。穴を開けない場合は石膏ボード自体の共振で吸音するので,200~300Hzまでの低い周波数での吸音率は若干ありますが,高い音はほとんど吸音しません。しかし,石膏ボードに穴を開けると,穴の間隔と径によって吸音する周波数が変わりますが,中高音域の広い範囲で吸音することが可能になります。もちろん,中に入れるグラスウールや空気層の厚さによっても変わります。
会場: 上から薄い壁紙を貼っても吸音の効果はあるでしょうか。
廣田: 壁紙が若干の抵抗になりますが,薄い膜状のものならば音が透過するので,吸音の効果があります。穴が開いている壁は好き嫌いが分かれますので,穴が見えないような仕上げは見た目と吸音の両方で有効かもしれません。

 遮音性と窓の気密

石井: 窓の気密材,パッキンは消耗品です。10年以上が経過したら交換を考えてもよい物ですが,そのような認識を皆さんお持ちではない。パッキンが古くなると気密性が変わります。気密性が悪くなると,中高音域の音が入ってくるようになります。
平間: 音響インテンシティを測定すると,どこからどのくらいの音が漏れているかがわかります。ただし,実験室レベルでははっきり出ますが,実際に現場で測定できるかどうかは疑問です。
石井: 気密材の劣化の目安として,例えば「自動車の音が聞こえやすくなってきた」というようなことが使えるでしょうか。
平間: 音が漏れてくる原因がすべて気密材によるものなのかどうかという問題があります。複層ガラスのゴムが破裂してしまうことがあります。これも音が漏れる原因になります。
石井: 外の音がはっきり聞こえてくるようになった場合は,どこかがおかしいということになります。問題は新築の時に,そのような意識を持って外の音を聞いているかです。住宅全体の気密性が多少変わっても,遮音性はそれほど変化しません。遮音性が大きく変わった場合は,窓・ドア・換気関連だと思って間違いないと思います。
廣田: サッシの場合は,台所のレンジファンを「強」で運転すると気密が悪いところから外気が流入しますから,手をかざして空気の漏れを探すこともできます。
会場: パッキンは簡単に手に入れられません。
石井: 木製サッシの場合は,サッシメーカーに言えば手に入ります。
 時間になりましたので意見交換はここまでとさせていただきます。講師の先生方ありがとうございました。音の問題には,難しい問題が含まれています。設計・施工をする上で今回のフォーラムがお役に立てればと思います。

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