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Q&A 先月の技術相談から(その1)

食品関係に利用する木製品の汚染について



Q1:  私は食品関係の針葉樹製品を製造販売していますが,生の角材をまとめて仕入れることから,気温が高くなる6月から10月に青カビのような汚染が起こり困っております。特に辺材に当たる部位によく起こります。食品関係なので,木材用の一般的な防カビ剤が使えません。何か良い方法はないでしょうか。

 

A1:  丸太の外側の辺材には,でんぷんが貯蔵されているため,カビ(青変菌を含む。写真1)が繁殖しやすくなっています。カビが生える原因は,(1)栄養源としての木材,(2)一定以上の水分,(3)温度,(4)カビの胞子の四つの条件がそろうことです。カビ対策としては,(2)(3)(4)のどれかをなくす必要があります。(2)の水分を少なくするには乾燥が良いのですが,生の材料をまとめてから仕入れるということですから,別の対策が必要です。(3)の温度を調節するのも,同様に困難です。(4)のカビの胞子に対しては,食品に用いても良い抗菌作用のある薬品があります。

写真1 針葉樹材にできた青変菌による汚染

 抗菌作用のある薬品はエタノール,酢酸,次亜塩素酸ナトリウムなどがあります。エタノールは,単独ではすぐ揮発してしまい,効果が持続しません。そこで,食品に使うことができる薬品をいろいろ混ぜた商品がいくつか市販されています。酢酸は,寿司や酢のものに使われるなど抗菌作用がありますが,アセチル化などの処理が必要になりますので,ここでは使えません。
 次亜塩素酸ナトリウムは漂白剤としても知られています。最近の大腸菌O-157,ノロウィルス対策の除菌に使われており,防カビ効果もあります。したがって,木材の防カビ剤として使用できます。2~4%の次亜塩素酸ナトリウム溶液の刷毛塗りやじょうろによる散布,その溶液に数時間浸せきすることによって,辺材への効果があると思われます。


Q2: 私は食品を入れる折箱の原料を製造しております。出荷時点ではきれいな材ですが,本州などに納めてから黒い汚染が起こることがあります。それが鉄汚染であれば問題は少ないのですが,カビであれば問題になるので,その見分け方と対策を教えてください。

A2:  汚染の原因が鉄かどうかは,3~5%のシュウ酸溶液を塗布して,色が淡くなるかどうかによっておよその判定ができます。詳しく調べるには,汚染部分を集めて酸で溶解して,鉄イオンを原子吸光法で分析することができます。黒カビまたは青カビの場合は,菌糸があるかどうかを実体顕微鏡で観察することによって判定ができます。

写真2 中心が穀見える刃こぼれによる鉄汚染

 鉄汚染の原因としては,切削刃物の刃こぼれによる場合と,鉄を含んだ水溶液が木材表面につく場合が考えられます。汚染部の中心が黒くて周りの色が薄い場合(写真2)には,刃こぼれの可能性が強いでしょう。刃こぼれがおきた時点では,まだ鉄が溶けず,温度もかかっていないので,汚染は現れないと思いますが,温度の高い本州などに送られて,使用する時に汚染が現れていることがあります。刃こぼれの対策としては,定期的,あるいは刃こぼれが見つかった時に,切削工具の刃を研磨する必要があります。この研磨は木材の切削現場と隔離された場所で行い,研磨くずによる汚染を起こさない注意が必要です。乾燥機のドレン水など鉄を含んだ溶液がつく場合には,特に汚染部の中心が濃くなることはありません。ドレン水の対策としてはパイプの材質が鉄の場合には水を酸性にしないなどの管理が重要です。

(利用部 研究主幹 梅原勝雄)

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