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「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」林産試版



 NHKのラジオ番組に出演してお話した最新の研究情報について,番組でのやり取りを再現してお伝えしています。



道内の木製遊具のいまとむかし

出演:性能部 居住環境グループ 小林裕昇
放送日:平成22年7月27日(火)



■北海道の公園と木製遊具の現状

NHK  今日は道内の木製遊具の今と昔の話をしていただけるということですが,森林王国といわれる北海道の公園には,やはり木製遊具がたくさん設置されているのでしょうね?
小林  まず,北海道では一人当たりの公園面積が34.7m2です。全国平均が10.8m2であり,その3倍強,全国一のとても恵まれた環境と言えます。そして木製遊具は,今から15年位前に,道が木材の利用拡大を目的として積極的な導入を進めたため,各地に相当な数の木製遊具が設置されました。道内全体で何基の木製遊具があるのか,正確な数字は分かりませんが,一例を挙げると,札幌市には約3,500基,帯広市は約65基,釧路市は約100基といったところです。
 ただ,これらの木製遊具全体に道産木材を使用できるとよかったのですが,当時の道内人工林は,まだ細かったため,遊具の構造部材にはベイマツやベイツガなど,手に入りやすかった外国産の木材が主に使われていました。

NHK  なるほど,道産木材が使われていなかったのは残念ですが,木製遊具は結構道内にあるのですね。これらは設置されてから15年程度経過しているということですが,今では大分傷んできているのではないでしょうか?
小林  木製遊具の標準使用期間は10年ですが,ほとんどの木製遊具がこれを過ぎてしまっています。各市町村の公園管理者は,遊具が腐っていないかを年に数回調べ,まめな補修や必要であれば更新を進めていますので,遊具が古くなったからといって危険ということはありません。
 現在では,道内の人工林も太くなってきたため,この更新や補修に使う資材に道産材を使うことが可能となっています。また道では,子供を始めすべての人が森林や木材との関わりから豊かな心を育むことを目的とした「木育」を推進するため,身近な公園に木製遊具の普及を図ろうとしています。

■腐りにくくメンテナンスのしやすい木製遊具の開発

NHK  そうすると,これからどんどん木製遊具が各地の公園に増えていきそうですね。
小林  はい,そうなってくれると嬉しいのですが,その前に色々と考えなくてはならない課題もあります。
NHK  と言いますと?
小林  現在,国や関連団体により遊具全般の構造や仕様などの基準整備が進められていて,木製遊具もそれらに従った新しい遊具が求められるようになりました。特に木製遊具については腐りやすく維持管理コストが高いというイメージを改善するため,新たな技術開発や構造形式について検討を加える必要があります。

図 木製遊具のイメージ

 そこで林産試験場では,その新しい基準に対応するため,部材の一部に金属を併用した新しい木製遊具の開発を進めています。この木製遊具では,地面に接する部材に劣化程度の判定が容易な金属を併用することで安全性を確保すると共に,部材同士の接合を交換が容易となるような仕組みにすることで,遊具全体の長寿命化を図っています。これらの対応により標準使用期間が延び,ライフサイクルコスト(LCC)は相当低下するものと思われます。この総合的な維持管理コストの低減こそ研究の最終目標というべきものです。

 この新しい木製遊具は,旭川市の旭山動物園の近くの保育園に,平成22年秋,試験設置する予定となっています(図:イメージ)。今後3年間にわたって経過を観察し,その結果を元に,将来的な木製遊具の設計指針作成につながるよう研究を進めていきたいと考えています。

NHK  そうですか。多くの子供たちが木と触れ合えるよう,いろいろな工夫がなされているのですね。今朝は,道内の木製遊具の今と昔について,お話を伺いました。(以上)

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