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Q&A 先月の技術相談から

E等級と目視等級



Q:  JASの構造用製材機械等級区分のE等級はそれぞれ目視等級区分の何級に相当するのでしょうか?



 

A:  目視等級区分は木材の強度を低下させるような欠点の程度等で区分するものです。一方,機械等級区分は木材の強度との相関が高いヤング係数に基づくもので,機械等級区分は詳細な構造計算を必要とするような建築物への対応を可能とするために導入されました。目視等級区分では等級の上下とヤング係数の相関は一般的に低く,機械等級と目視等級の直接的な対応はありませんが,どちらも上位等級になるほど強度は高くなることに変わりはありません。そこで建設省告示の基準強度に基づいて機械等級区分と目視等級区分(甲種)を比較してみました。

図1 カラマツ構造用製材の基準曲げ強度


図2 カラマツ構造用製材の基準弾性係数



 図1はカラマツ構造用製材の基準曲げ強度で,E90~E150については目視1級を上回る強度が設定されています。一方,E50とE70については目視3級よりも低くなっていますが,目視等級区分では格外,すなわち構造用としては不適となるものでも,機械等級区分では基準強度が設定された構造材となる可能性があります。
 ところで,部材の設計では荷重が部材の強度を超えないようにするだけではなく,荷重によって生じる変形が一定限度内であることも求められます。梁などの横架材ではたわみをチェックしますが,たわみを計算する際にヤング係数が必要となります。ヤング係数の基準値は日本建築学会の木質構造設計規準で基準弾性特性値として示されています。図2はカラマツ構造用製材の基準弾性係数です。機械等級はヤング係数に基づいた区分であるため,基準弾性係数はほぼ2kN/mm2間隔になっています。これに対し,目視等級は冒頭でも述べましたようにヤング係数との相関は低いため,等級別の値ではなく,等級によらない樹種ごとの値となっています。E50では目視等級区分の値を下回り,E70ではほぼ同等,他の等級では目視等級区分の値を上回っています。

 基準強度と基準弾性係数の両方を考慮すると,E50とE70では目視3級より下(ただし,格外ではありません),E90以上では目視1級より上と極端な結果にしかなりません。E90と目視1級の差はわずかですが,E110の基準曲げ強度は目視1級の1.3倍,基準弾性係数では1.6倍であり,E150ではそれぞれ1.9倍,2.3倍にもなります。よって,単純に機械等級を目視等級に読み替えて使うのではなく,その性能に見合った使い方をすることが望ましいといえます。
 また,ここではカラマツを例にとりましたが,エゾマツ・トドマツでは目視1級の基準曲げ強度を上回る機械等級はE130以上,目視等級の基準弾性係数を上回る機械等級はE90以上となります。このように機械等級と目視等級の関係は樹種によっても異なり,一概に
    E○○=目視○級
とすることは困難です。

(性能部 耐久・構造グループ 藤原拓哉)

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