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接合部が住宅の構造様式を変える?

性能部 耐久・構造グループ 野田康信



 はじめに


 木造住宅に使われている接合部と言った場合には,いろいろな物を想像されることと思います。その中で金物が用いられた接合部について次のように三つに分類して考えたいと思います。
<1> 在来軸組構法における住宅用補強金物
<2> 在来軸組構法における接合金物
<3> 木質ラーメン構法における接合金物
   これらは金物接合とひとくくりにされているケースがあるのですが,金物に求められる性能が違うので,今一度,整理したいと思います。

 <1> 在来軸組構法における住宅用補強金物


図1 胴差に管柱と梁がとりつく場合の例

 これはいわゆるZ マーク表示金物に代表される耐震補強金物のことです。
 在来軸組構法はその設計思想の基本として,屋根や床にかかる鉛直力は,梁・桁を介して柱が支え,地震や風などの水平力に対しては筋かいや軸組に釘打ちされた面材などが柱,梁などど一体化して耐力壁として抵抗するというように,力の向きに応じて役割分担をしています。
 図1は在来軸組構法における柱と梁の接合部の一例です。ここで帯金物や羽子板ボルトといった補強金物がなく,木材同士の伝統的な仕口加工による接合部であった場合には,地震時には梁が柱から抜け落ちてしまいます。梁が抜け落ちてしまったら,鉛直力を支えられないだけでなく,耐力壁も十分に機能することができません。そこでこの抜け落ちを防止するためにこれらの金物が取り付けられています。

 

 <2> 在来軸組構法における接合金物


図2 梁受け金物の例

 補強金物は金物がなくても木材同士のかみ合わせで鉛直力を梁から柱に伝えられますが,接合金物は金物を介してこの力を伝達します。したがって,接合金物がなくなると建物として成立しないという点で,<1>の補強金物と異なります。俗に金物工法といわれているもので用いられている接合部はこれに該当します。図2に示すような梁受け金物がその代表で,この場合の柱の加工はボルト穴のみとなります。
 図1の例では柱の欠き込みが大きく,曲げ強度を大きく損なうことが欠点でしたが,このような柱と梁の加工部位をできるだけ小さくすることで,断面欠損による強度低下が抑制されるというメリットがあります。プレカットが前提となりますが,精度が良く,安定した性能が得られ,現場での施工性も高いことも利点としてあげられます。
 しかし,この種の接合金物は在来軸組構法における接合部の範ちゅうでの使用になります。つまり,梁や桁からの鉛直力を柱に伝える役割と,地震時に梁が抜け落ちようとする引抜き力に対して抵抗するためのもので,あくまでも水平力は耐力壁が負担し,その耐力壁が最後まで機能できるようにするためのものです。

 

 <3> 木質ラーメン構法における接合金物


図3 鋼板挿入ドリフトピン接合の例

図4 骨組み構造の変形のイメージ

 ラーメン構法は耐力壁を必要とせず,大空間を実現する構法ですが,接合部で地震に対して抵抗する構法と言えます。この構法は,壁が水平力を担うという前提が無くなるので,前述の在来軸組構法の通常の壁量計算による設計では建てることができず,設計法として上位に当たる許容応力度計算による設計が基本となります。接合部の性能としては,せん断力,引き抜き力に加えて,モーメントと回転剛性が重要になります。
 例えば,図3のように鋼板を部材に挿入して,ドリフトピンと呼ばれる丸鋼で連結するといった接合方法があります。
 このような接合部を用いた骨組み構造が地震力を受けた場合には,接合部は開こうとしたり,閉じようとしたりする力を受けます(図4)。
 この時に接合部に生じている力をモーメントと言い,接合部の変形抵抗性能を回転剛性と言います。ここで例に挙げています鋼板挿入ドリフトピン接合が開く方向に力が加わったときの変形イメージを図5に示します。モーメントによって接合部が回転しようとするのですが,それをドリフトピンが抵抗します。
 この接合部の性能はドリフトピンの径や配置,使用する部材の断面や樹種によって大きく変化します。また木材の繊維方向と繊維直角方向でめり込み性能が異なることにも配慮しなくてはなりません。

図5 鋼板挿入ドリフトピン接合部の変形イメージ

 

 おわりに


 接合部に期待する力をに一覧にして示します。<2>と<3>は「金物工法」とひとくくりに呼ばれたりしていますが,期待している性能が大きく異なりますので金物工法の中でも<3>については区別しておきたいところです。
 実際には在来軸組構法における接合部においても水平力によって発生するモーメントや回転変形に対して多少は抵抗します。しかし,壁量計算による通常の住宅設計においては接合部におけるモーメント抵抗性能を加味してはいません。したがって,在来軸組構法における金物接合とラーメン構法における金物接合の違いは,設計にモーメント抵抗性能を反映させるかしないかの違いとも言うことができます。これが金物工法=ラーメン構法とならない理由です。
 さて,ここまで来たらタイトルの意図がお分かり頂けましたでしょうか?接合部の性能が,地震時における住宅全体の強さ,変形性能,倒壊のし難さに直結します。接合部のモーメント抵抗性能を設計に反映する,しないの別はありますが,接合部の開発はすなわち,構法の開発であるといっても過言ではありません。
 現在,林産試験場では北方建築総合研究所と連携して,道産材を用いた場合における接合部の設計・開発の基本となるデータを収集し,新しい接合方法,新しい構法の開発をサポートするための基礎資料の作成を目指しています。

表 接合部に期待する力

 

参考文献
1) 坂本 功:“新版木造住宅構法”,市ヶ谷出版社,2003.
2) (財)日本住宅・木材技術センター:“Zマーク表示金物梁受け金物の使い方”,2008.
3) 日本建築学会:“木質構造接合部設計マニュアル”,2009.

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