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ゴムチップパネル温水床暖房システムの機能性向上

技術部 製品開発グループ 澤田哲則



 はじめに


 北海道をはじめとする積雪寒冷地において,暖房の良否は冬季の住生活環境を左右する大きな要因です。ゴムチップパネル温水床暖房システムは安全性に優れ,振動に強く,体育館のような大面積の床においても床下に継ぎ目を設けずに敷設でき,さらに廃タイヤを主原料としたゴムチップパネルを暖房層に用いることからリサイクルにも貢献できる床暖房システムとして着実に普及してきました。その技術は特許を取得しており,体育施設における運動床や,福祉施設,幼児施設などの身体的弱者の方々が利用される施設,学校や図書館などの文教施設,病院などの医療施設の床などを中心に31都道府県で導入され,図1に示すように2009年現在で施工面積が30万m2を突破しました。現在の課題としては,エコ熱源への対応,畳敷床での床暖房の検討,フローリング張り床での防音性の付与,可動式重量物への対応などがあり,本研究では以下の課題を検討しました。

図1 大規模温水床暖房システムの累計施工面積


 エコ熱源への対応の検討


 熱源に写真1に示す空気採熱型ヒートポンプを用い,写真2に示す床暖房試験室を用いて,冬期間に各種の条件で床暖房を行いました。その結果,旭川のような寒冷地において,外気温がマイナス10℃を下回る時でも室温を25℃とする床暖房に必要な熱源を確保できることがわかりました。ヒートポンプ技術は地球温暖化防止に貢献するものとして,その能力は年々向上していますので,さらに省エネ化は進むものと考えられ,床暖房の熱源としても大いに期待できます。

写真1 空気採熱型ヒートポンプ熱源機 写真2 床暖房試験室


 畳敷床での床暖房の検討


写真3 畳敷とした試験室床

 生活様式の洋風化で畳の需要は減少しているものの,畳敷床の安全性や居住性は優れており,日本の住文化の代表的な床材として床暖房への対応が望まれています。現在,市販されている床暖房対応の畳は,従来の畳の半分以下の厚さとなっており,熱の通りが良い反面,畳本来の柔らかさや緩衝性が維持されているかという点で疑問が残ります。また,平成24年度から中学校保健体育の授業で武道が必修化されることを考慮すると,通常の厚さの畳を用いた床暖房の検討をしておく必要があります。
 そこで,写真3に示すように床暖房試験室の床に厚さ60mmの化学畳を敷き詰め,各部の温度変化等を測定して,現状の床暖房床に畳を敷いた場合の暖房状況を検討しました。化学畳は図2に断面を示すように断熱性の高い材料を積層した構成となっているため,畳の裏側から表側への放熱は少なく,フローリング仕上げの床暖房と比較すると室温の上昇は十分には得られませんでした。しかしながら畳の表側における接触温度は,少しの時間触れていると冷たく感じない程度にコントロールが可能でした。図3に床暖房を温水温度30℃で稼働させた場合の畳回りの主な温度の変化を示します。この結果から体育の授業で標準とされる床上120cmで13℃(シャワー施設がないので,過度に寒くなく,かつ汗をかかない温度)という基準は十分にクリアすることができるので,柔道などの畳を使う武道の授業実施には最適な環境を提供できると考えられます。
 体感温度では,畳の裏側に熱源が無い場合には室温が適温でも足元が冷えるため,寒く感じられ,熱源が有る場合には,室温が低めでも,寒さはあまり感じられなかったため,足元の温度が快適性を左右する一因であると考えられます。

図2 化学畳の断面構成 図3 畳敷床の主要部の温度推移


 フローリング張り床での防音性の検討


 床暖房層に用いるゴムチップパネルには防音性(軽量床衝撃音遮断性能)がありますが,ユーザーからはさらに1ランク上の性能が求められています。この性能の測定方法は写真4に示すように,軽量床衝撃音発生装置(タッピングマシン)で上階の床を上からたたき,床下に抜ける音を階下のマイクで拾って,その音の周波数ごとの音圧から性能値を算出するものです。に防音性の値と音の大きさの関係を示します。
 防音性を向上させるためにゴムチップパネルの原料や組成を検討して防音性の向上を図るとともに,化粧材となるフローリングとの組合せを検討することでLL-40の性能を確認することができました。しかしながら市販LL-40~LL-45製品と同様に,床の局部変形が大きく,使用箇所が限定されるという,今後に課題を残す結果となりました。この課題については引き続き企業と情報交換,技術相談などを通じて,新たな性能向上策を考案していく予定です。

写真4 防音性の測定 表 防音性(軽量床衝撃音遮断性能)の値の意味


 まとめ


 本研究においては畳敷床の床下地にも冬季には何らかの熱源を敷設した方が良いという結果が得られました。また,平成24年度からは中学校の体育の授業で武道が必修となりますので,柔道を選んだ中学生は畳に触れる機会が増えるものと考えられます。武道場整備の際の暖房計画には是非とも床下の熱源を考慮していただきたいと考えます。次年度からは武道場畳敷床を想定した研究を実施する予定ですので,参考としていただければ幸いです。

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