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Q&A 先月の技術相談から

家具から放散される揮発性有機化合物(VOC)について



Q: 家具から放散されるVOCの規制はありますか? 測定方法ついて教えてください。


A: 一般家庭にある家具の表面積は,床面積の3倍程度とされています。そのために,家具から放散されるVOCが,室内空気質に与える影響は大きいと考えられます。

■ 家具に対するVOC放散量の規制

 家具については,建築材料のように,使用面積の制限などの法律で定められた基準はありませんが,(社)日本家具産業振興会((社)国際家具産業振興会と(社)日本家具工業連合会が2010年4月1日に合併)では,F☆☆☆,F☆☆☆☆の材料を使用している家具に室内環境配慮マークを添付しています。また,トルエンやキシレンなどの溶剤を含まないか,非常に少ない材料を使用することで,VOC対策を行っている家具メーカーもあります。しかし,業界やメーカーの自主基準であり,法的な規制がないために,どのような材料を使用しているかわからない家具が多く,過去に安価な輸入家具の場合では,単位面積,単位時間当たりのホルムアルデヒド放散量が,250μg/(m2・h)という測定例もあります。これは旭川で製造された家具の15倍以上にあたります。このような状況において,経済産業省では今年度「家具のVOC対策の実態調査及び今後のあり方を検討する調査事業」が行われ,家具のVOC対策の実態調査が行われています。今後,国としてどのように展開するのか,注目されています。

■ 家具からのVOC放散量の測定方法

写真 大型チャンバー

 ボードや塗料などから放散するVOCは,JIS A 1460のデシケータ法やJIS A 1901の小形チャンバー法で測定します。この場合,5×15cmや15cm角の小形の試験体で測定します。家具は,大きいためJIS A 1911の大形チャンバー法で測定します。大形チャンバーの容積は1m3を超え80m3までと定義されています。当試験場の大形チャンバーは2.66m3で,やや小さめの大形チャンバーです(写真)。

 に当試験場の大形チャンバーの概要を示します。測定方法は小形チャンバー法と同様で,清浄空気を,温度28℃,湿度50%RH,換気回数0.5回/時の条件で供給します。
 小形チャンバー法の場合は,試験体を小さく切断したり,塗布面積を調整して,チャンバー容積に対する試験体の面積割合(試料負荷率)を一定にして測定し,単位面積単位時間当たりの放散量(放散速度)で評価します。しかし,家具の場合は,切断することはできないので,チャンバー容積に対する家具の表面積の割合を一定にすることができません。ある家具を1m3のチャンバーで測定した場合と,80m3のチャンバーで測定した場合では,1m3のチャンバーで測定した方がチャンバー内のVOC濃度は高くなります。つまり,同じ家具であっても小さなチャンバーで測定すると,VOC濃度が高くなるという結果になります。反対に,80m3(約20畳)のチャンバーで測定し,問題がないとされる家具を,4畳半(約13 m3)の部屋に置いた場合,室内濃度指針値を超過する可能性もあります。

図 大型チャンバーの概要


■ 家具からのVOC放散量の評価方法

 チャンバーが異なると,評価も違ってきます。ホルムアルデヒドでは,次の様な式が成り立つことが知られており,この式を基に,使用される室内での推定濃度を算出する方法があります。
   式
  C : 室内濃度 [μg/m3]
  Ce : 換気量が0のときの平衡濃度 [μg/m3]
  k : 物質移動係数 [m/h]
  n : 換気回数 [回/時]
  L : 試料負荷率 [m2/m3]

 わかりやすくするために,ホームセンターなどでよく見かける三段のカラーボックス(幅46×奥行30×高さ90cm,表面積2.9m2)を例として考えてみます。なお,濃度に関する値は架空の数値です。

(1)家具を設置したときのチャンバー濃度の測定
 換気回数0.5回/時と0回/時の場合の2条件でのチャンバー内濃度を測定します。そうすると仮に,
 C = 100 [μg/m3]
 Ce = 235 [μg/m3]
の濃度になったとします。このチャンバーで測定した場合,このカラーボックスは,室内濃度指針値100 μg/m3と同じということになります。

(2)測定結果の式への代入,k値の算出
 素材の場合,放散する表面積が基準となりm2で表し,L [m2/m3],k [m/h]で表されます。家具の場合,家具1個を単位とするため,1個をunitとして,それぞれ,L [unit/m3],家具の物質移動係数をkunit [m3/(unit・h)]で表わします。
 L = 1 [unit/2.66m3]
 n = 0.5 [回/時]
 C = 100 [μg/m3]
 Ce = 235 [μg/m3]
これらを「1」式に代入すると,家具の物質移動係数が
 kunit ≒ 1 [m3/(unit・h)]
と算出されます。

(3)家具の室内への設置による室内濃度推定値
 このカラーボックスを6畳間(24m3)に1個置くとします。
 L = 1 [unit/24m3]
 n = 0.5 [回/時]
 k = 1 [m3/(unit・h)]
 Ce = 235 [μg/m3]
を代入すると,C = 18.1 [μg/m3]となり,1個では部屋のホルムアルデヒド濃度が問題になることはありません。次に,同じものを9個置くと約100 [μg/m3]になると推定され,室内濃度指針値を超過する可能性があるということが予測されます。

(4)家具の材料評価
 測定した家具に使用されている材料が,どのような性能であるかを,「1」式で評価することができます。この場合,Lがチャンバー容積に対する家具の表面積となり,2.9 [m2/2.66m3]となります。これを先ほどと同様に,式に代入し,k値を求めると0.34 [m/h]となり,小形チャンバー法での試料負荷率を2.2 [m2/m3]として,チャンバー濃度を推定すると,141 [μg/m3]となります。単位面積,単位時間に放散する量(放散速度)で表すと,32 [μg/(m2・h)]となり,この家具に使用されている材料は,F☆☆と推定されます。しかし,家具の場合,凹凸があり,カラーボックスの様な棚の形状のものは,均一に放散しているとは限らないため,あくまでも推定値です。

 以上,ホルムアルデヒドの場合について述べましたが,トルエンなどのVOCについては,推定する方法が確立されていないため,個別にチャンバーで測定し,試料負荷率を考慮した放散速度で評価する方法しかありません。今後,ホルムアルデヒドの様に,推定する手法の開発が望まれます。

(性能部 居住環境グループ 秋津裕志)

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