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年頭のごあいさつ「二つの流れのなかで」

林産試験場長 浅井定美



 2011年,皆様に初春のお慶びを申し上げます。

   21世紀当初の十年をすぎ,次の十年のはじまりの年を迎えました。
 今年うまれた赤ん坊が成人する20年後(2030年代),家庭をもつ30年後(2040年代)は,それほど遠い時代ではありません。国連は,40年後の2050年の地球人口を今世紀はじめの5割増の92億人と推計しており,今後,人口増による地球の資源・環境・エネルギー・食糧制約の強まりが予想されます。
 2011年は,次の十年の起点として,どのように動いていくのでしょう。また,何をめあてに,私たちはどのように行動すべきなのでしょう。

   今世紀はじめの10年で,「世界の工場」から「世界の市場」の地位をも確立した中国をはじめ,新興諸国は,いずれも日米欧とは,質と量の異なる確かな存在として,世界経済の有力な牽引力に成長しました。経済の成長拠点の多極化と,生産と消費の「新興国シフト」はまず次の十年の基調と考えられます。
 世界の木材需給も,この10年で大きく変容,拡大しました。次の十年,二十年からやがて2050年へと繋がる長期トレンドでは,資源総需要の増大とあらゆる資源価格の上昇とともに,枯渇していく地下資源から地上の再生可能資源への逆代替もあって,森林・木材の価値=価格も当然に上昇することが期待されます。
 その一方,わが国では,世界各国の先陣をきって,人口の減少・高齢化が進行し,深刻な需要の収縮に直面しています。一昨年度の木材需要は全国,北海道とも,過去のピーク時の半分に減り,今後,新設住宅も80万戸の水準からさらに減っていくという見方が普通になりました。人口減少で国内総需要の規模が小さくなることは,避けがたい印象です。
 このように,次の十年は,世界全体の人口拡大・生活向上による需要拡大と,国内人口の縮小による需要収縮という二つの流れが,同時に進行していくと想定されます。すでに国内需要を上回る成長量と収穫可能量を確保するに至った国内の森林資源を背景に,林業・木材産業がめざすべき方向もまた明らかとなっています。資源の利用効率,循環の速度をあげてわが国土がもつ恵まれた自然の生産性とその経済価値を最大に活用していくことになります。
 そのため,「利」を生みつづけるには,いまだ力不足のわが国の木材製品を,技術革新により世界に通用する製品に育て上げること,また,外国製品から国内の市場を奪還するだけでなく,製品の輸出で世界シェアの一角を確保する展望をも開かなければなりません。さらに,金属やプラスチック,コンクリートなどに代替しうる新しい製品も開発し,新市場の創出をめざすことも重要です。
 これまで,2000年には建築材料の「性能規定」を強化した改正建築基準法や,住宅品確法の制定があり,近年では長期優良住宅法,公共建築物等木材利用促進法など,需要側から木材利用の領域を積極的に区画する動きが続いています。また,一昨年の年末から昨年末までの続いた新成長戦略・森林・林業再生プランの論議を踏まえ,昨年11月末には政府により「森林・林業の再生にむけた改革の姿」が示され,今後,これにそっていっそうの具体策が強化されると期待されます。
 国産材自給率50%をめざすこれからの10年は,森林・林業側から進められる原木の低コスト安定供給とその基盤づくりという強力な支援に呼応して,木材産業の側からも,国際競争に勝ち残る製品の価格・品質・安定供給を抜本的に実現していく10年です。
 今はトンネルのなかでも,イノベーションのカーブを曲がれば,その向こうには燦然と輝く大きな光が見えています。
 2011年も,当試験場は,道産木材製品の市場を回復し発展させる新技術・新製品の創造と提案をめざし,これからの展開にわくわくする思いで野心的に多くの試験研究に取り組んでまいります。
 本年もご指導,ご鞭撻のほど,どうぞよろしくお願い申し上げます。

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