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ペレット暖房システムの利便性向上のための技術開発

利用部 居住環境グループ 小林裕昇



 はじめに


 林産試験場では,これまでに木質ペレット(以下ペレットとする)の利用を推進するため,ペレットの製造方法の改善や品質向上,ペレットストーブの開発および,それに伴う技術開発を進めてきました。石油の代替エネルギーとして期待されるペレットは,道内の製造工場が17か所と増え,2009年度の生産量は約3,900tに達しています。一方ペレットストーブは,一時期の石油高騰も収まり石油価格が77円前後(2010年10月~11月の配達価格・北海道経済産業局調べ)で落ち着き感があることから,一般家庭への普及も一息ついてしまったようです。
 ペレットストーブは,燃料のペレットが固形物であることからストーブの形や構造,使い勝手は石油ストーブと大きく違います。ペレットストーブ自体は古くからありますが,暖房システムとして最近の住宅や生活様式に対応した新たな技術開発を行っていく必要があると考えます。

 ペレットストーブの誕生


 国産のペレットストーブが誕生したのは,国内でペレットの製造が始まるのと同時期です。
 その第一号は,徳島県のコロナ工業(株)が1982年8月より販売を開始した木質系ストーブ「ひまわり」(写真1)です。「ひまわり」の本体は燃焼部と燃料ホッパーで構成され,燃焼時にはスクリューフィーダによりペレットが自動供給されていました。点火は,燃焼室下部のポットを取り外し(写真2)ペレットと灯油を投入後,再度ポットを本体に取り付け,上部よりマッチで火をつける方法となっています。また埼玉県のマルエヌ(株)は,ペレット状木質燃料専用ストーブとして「ダンディー」(写真3)を1983年10月から販売を開始しました。内部構造や点火方式は,「ひまわり」とほぼ同じです。
 マッチで火を付けるところなど昔の石油ストーブと変わりありませんが,ペレットを入れるタンクと一体化しているところが,当時のペレットストーブの大きな特徴であるといえます。

写真1 木質系ストーブ「ひまわり」,写真2 ひまわりの燃焼用ポット,写真3 ペレット状木質燃料専用ストーブ「ダンディ」

 

 新しいペレットストーブの登場


 海外ではオイルショック以降,ペレットストーブやペレット供給方法についての研究や技術,製品開発が進められ,1990年代後半にはそれら海外で作られたペレットストーブが輸入されるようになりました。日本国内では,2003年に「岩手型ペレットストーブ」が,2005年には「信州型ペレットストーブ」が相次いで発売されました。これら新しいペレットストーブも燃料タンク内蔵型であり,一部の例外もありますが,タンクスペースを燃焼室の後ろ側とするのが一般的でした。このため石油ストーブと比較して外形寸法が大きく,特に奥行が大きくなってしまっている製品がほとんどでした。

 ペレットストーブをもっと使いやすくするために


写真4 北海道型ペレットストーブ

 「北海道型ペレットストーブ」(写真4)は既製品の課題や改善点など念頭に置き,2005年よりサンポット(株)と共同で開発を進めました。特に前述したペレットタンク内蔵による奥行寸法の大きさを解決するため,タンクスペースを燃焼室の横に移動することで,奥行を小さくし,室内側へ大きく張り出さない形状としました。また,窓の前に設置する場合も考えられることから,一般的な腰壁の高さである70cmと同じ高さとすることにしました。
 このように「北海道型」は設置がしやすく圧迫感も少ないのですが,ストーブ本体そのものが小さくなった訳ではありません。ペレットのタンクを小さくすることで多少の小型化は可能ですが,連続燃焼時間が短くなったり,ペレットの補給間隔が短くなってしまうなど,デメリットの方が大きいと思われます。

 しかしながら「小型化」を図ることや,ペレット燃料を補給する時の「身体への負担低減」はペレットストーブの普及を左右するキーワードであり,これらの課題を克服するための技術開発が重要です。そこで,当場では2008年より(株)イワクラと共同で,外部ペレット貯蔵サイロおよび室内のストーブへ自動でペレットを供給するシステムの技術開発を行っています。システムのイメージをに示します。
 当場で開発した送風機を用いた供給システムは,本誌2009年10月号に詳しく記載されていますので,本稿では外部貯蔵サイロについて述べたいと思います。
(※ http://www.fpri.hro.or.jp/dayori/0910/1.htm

図 自動供給システムのイメージ

 木造ペレットサイロの開発


 外部に設置するペレットサイロについては,一部で,飼料用サイロなどを流用したり,鋼製やFRP製の小型サイロの試作を行ってきました。これらの材質のものは,金型や仕上げの方法により形状のバリエーションに制約を受けることもあったため,当場では製作・加工に自由度が高い木材を用いたサイロの設計・試作を行いました。

 一次試作は,部材の加工や組み立てやすさを考慮し枠組壁(2×4)構法としました。この構法は,構造が面と面で構成されているため,鋼製やFPR製のサイロと比較すると接合部分が多く雨水などの浸入のおそれがありました。そこで,それら接合位置の外側と内側にシリコンシーラントによるコーキングや防水・気密テープによる目張りをし,外壁下地面を防水ビニールシートで覆うなど,できるだけ水の浸入を防ぐような構造としました。

 二次試作(写真5)ではコーキング処理などの手間の多さを解消するため,在来軸組工法とし,接合部を構造用合板で隠すように取り付けることで,外部に対して隙間が生じないように工夫しました。またペレットの投入口は,共同研究先の試作サイロと部材の共通化を図り,供給システムの取出口も接続金具を交換することで様々なホース径に対応できるように配慮しました。
 木造サイロは敷地や住宅の形状に合わせて製作することが可能であり,住宅と同じ外装仕上げとすることもできます。これらは鋼製やFRP製のサイロと比べ,木造ゆえの大きなアドバンテージであると考えられ,今後の商品化へとつなげていきたいと考えています。

写真5 木造サイロ(二次試作)容量1,000kg未満

 おわりに


 外部貯蔵サイロや供給システムなどの新しい技術開発が進むことで,ペレットストーブが少しずつ使いやすくなっていくと考えます。ただ現状では普及のスピードが遅く,「小型化」についてはもう少し時間がかかるかもしれません。またペレット製造工場が増えても,販売流通などのインフラが整備されておらず,これも緊急に解決しなくてはならない課題と考えられます。今後も,一般消費者の方々にもっと便利に使っていただくために改良を重ね,ペレットストーブをより使いやすい製品にしていくように取り組んでいきたいと思います。

 

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