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ヤナギからバイオエタノールを作る~効率的な製造に向けて~

利用部 バイオマスグループ 岸野正典



 はじめに


 植物バイオマス,中でも食料と競合しない木材や稲わらといったセルロース系バイオマス由来のバイオエタノールは,輸送用のガソリン消費量を削減する点から注目を集めています。ここでは,林産試験場で取り組んでいるヤナギを原料としたバイオエタノール製造の研究,とりわけ効率的な製造に向けた取り組みについてご紹介します。なお,林産試だより2009年11月号に,原料としてなぜヤナギを選んだのかということや,バイオエタノール製造の基本的な流れを紹介してありますので,そちらもご覧ください。

 前処理の役割


 ヤナギからバイオエタノールを得るには,グルコースという糖のみが鎖状に連なったセルロースを,酵素を用いてグルコースにまで分解(糖化もしくは酵素糖化)し,得られたグルコースを発酵させて作ります。
 表1に示すようにヤナギを硫酸で加水分解した場合,グルコースが約4割程度,キシロースが約2割程度,さらに分解されずに残った,フェノール系の高分子化合物であるリグニンが約2割程度得られますので,ヤナギはセルロースのほかに,主にキシロースが多数連なったキシラン,そしてリグニンから構成されています。
 これらのキシランやリグニンがセルロースの周りを取り囲んでいますので,容易に糖化が進みません。そこで,これらの成分を取り除き,糖化しやすくする必要があります。これが図1にもありますように前処理の第一の役割です。
 さらに,ヤナギからバイオエタノールをつくるには,大きさは20~30mmのチップ,もしくは1~2mmのおが粉から,最終的にはグルコースにまでする必要があります(図1)。これまで林産試験場で取り組んできた,チップを高温高圧の蒸気にさらす蒸煮処理ではチップの形状を保ったままで,酵素糖化に適した粒度や形状ではありません。そこで,粉砕という工程を加え,酵素糖化が進みやすいような大きさや形状にまで粉砕する必要があります。これが前処理の第二の役割です。
 そこで,ヤナギから効率的なバイオエタノールの製造に向けて,どのような成分の除去が必要なのか,またどのような大きさや形状にする必要があるのかということについてお話します。

表1 ヤナギを硫酸で加水分解した時に得られる成分

図1 前処理の役割説明図

 

 効率的な製造に向けた前処理の第一の役割


 図2は糖化の進み具合の指標である糖化率およびグルコース収率に及ぼす,キシランとリグニンの影響を調べたものです。キシランが少なくなると,糖化率およびグルコース収率ともに上昇しています。一方,リグニンはといいますと,キシランが少なくなっている分リグニンの含有量が増え,その結果見かけ上リグニンの増加に伴って糖化率およびグルコース収率ともに上昇していました。
 すなわち,ヤナギから効率的なバイオエタノールの製造に向けて,より糖化を進みやすくするためには,リグニンよりもできるだけキシランを取り除いた方がいいことが分かります。

図2 糖化率およびグルコース収率に及ぼすキシランとリグニンの影響

 

 効率的な製造に向けた前処理の第二の役割


 林産試験場では,蒸煮処理のあとカッティングミルタイプのロートプレックスという粉砕装置を用いて粉砕しています。このロートプレックスを用いた粉砕の場合,水を含んだ状態と,乾燥した状態で粉砕した場合とでは,粉砕のし易さとともに粒子の形状も異なります。表2は水を含んだ状態で粉砕した場合と,乾燥した状態で粉砕した場合の粒子の形状と,糖化の進み具合の違いを示したものです。これによりますと,水を含んだ状態で粉砕した場合の方が,繊維状や毛羽だった粒子が多く,一方乾燥した状態で粉砕した場合は粒状の粒子が多くなりました。さらに糖化は,繊維状や毛羽だった粒子の方が進みやすい傾向にありました。すなわち,酵素糖化率を向上させるためには,たとえば水を含んだ状態で粉砕するとか,ディスクミルというものを用いて磨砕するとか,高圧蒸気中で蒸煮したのちその圧力を一気に解放する「蒸煮爆砕」という方法のように,繊維状や毛羽だった粒子が多くなる粉砕方法を選択する必要があります。

表2 粉砕時の状態と糖化の進み具合

 

 おわりに


 これまでの研究において,ヤナギチップを高温高圧の蒸気にさらす蒸煮処理をバイオエタノール製造時の前処理として用いた場合,効率的な製造のためには,糖化に先立ってできるだけキシランを取り除くことと,繊維状や毛羽だった粒子が多くなるような粉砕方法を選択する必要があることが分かりました。今後はヤナギから効率的なバイオエタノールの製造に向けて,糖化率に及ぼすこのような処理方法や,粉砕時の粒度の影響を検討していきます。

付記  本研究は,北海道開発局「北海道に適した新たなバイオマス資源の導入促進事業」の一環として,日本データーサービス(株)と共同実施しました。

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