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道産針葉樹材を用いた圧縮木質内装材の表面加工技術の開発

  ~平成21年度北海道地域イノベーション創出協働体形成事業・研究開発環境支援事業の成果より~

技術部 製品開発グループ 澤田哲則



 はじめに


 本研究は建築内装用に使用する木材の,凹凸を中心とする表面特性の違いが,人の抱く好感度にどのような影響を及ぼすかということを,官能検査や各種の性能試験を通じて数値化するための評価手法の開発と,ユーザーからの好評価が得られる表面特性を付与するための加工技術を検討したものです。これらの研究成果は当場のホームページにおいても「木の温かみを定量化し,それを実現する表面加工マニュアル」として公開されています。
 http://www.fpri.hro.or.jp/manual/atatakami/atatakami.htm

 本報告では,この研究に床,壁の試験材として用いた,平坦~微少な表面凹凸~顕著な表面凹凸のある道産針葉樹材,主にカラマツを用いた圧縮木材の生産技術の概要を紹介します。

 

 圧縮木材の概要と現状


 文字どおり,木材を全体的に,あるいは部分的に圧縮して密度を高めたものを圧縮木材,あるいは圧密化木材と呼びます。日本においては,第二次大戦下に鉄鋼不足を補うための強化木として広葉樹圧縮木材の積層材が用いられはじめました。民生技術としては野球用の圧縮バットをご存知の方が多いかと思われますが,圧縮バットには圧縮木材と樹脂注入の技術を併用した技術が利用されていました。その他にも国内における圧縮木材の技術蓄積は多岐に渡り,特許を主とする知財登録件数も比較的多い技術分野となっています。
 現在では本州以南の代表的な人工造林木であるスギ材を主な原料とした床,壁材などの内装材が普及,定着しつつあります。針葉樹人工造林木は,成長が早い代償として,材質が柔らかく傷つきやすい傾向があるため,圧縮木材とすることで密度が上がり,加工性や傷つきにくさが向上して広葉樹代替材としての利用が可能となります。北海道においても広葉樹資源が枯渇に向かう中で,人工造林木の大半を占めるトドマツ,カラマツなどの針葉樹材を圧縮木材とすることにより,床・壁材を中心とした内装材や各種建材への利用を図る必要性が生じています。

 圧縮方法


(1)全層圧縮
 図1中のAに示すように,木材の厚さ全体にわたって変形するまで圧縮するものです。この研究で用いた全層圧縮は,カラマツの原板を元の厚さの55%(圧縮率45%)になるまで圧縮し,表面が平滑な板材(凹凸率0%)としました。
(2)表層圧縮
 図1中のBに示すように,木材の表面付近のみ,あるいは表・裏面付近のみを圧縮するもので,圧縮したい面に水分を塗布するなどして軟化を促し,軟化した部分のみを圧力で部分的に変形させるものです。この研究においてはカラマツの表面に凹凸を付与する際に用いた手法です。

図1 圧縮方法と変形の概要

 使用する木材の部位


(1)芯の有無
 木材の木口断面では,同心円状に年輪を見ることができます。年輪の中心部分を随(芯)と呼び,その有無によって材料を区別します。木材を圧縮すると芯に向かって圧力が集中し,芯割れを起こしてしまう場合が多いので,圧縮木材の原板,特に全層圧縮の原板としては芯去り材が適します。
(2)木目による違い
 木材は製材時の木取りによって,板目,柾目,追柾といった板材表面の木目に差が生じます。全層圧縮の場合には,板目材を用いると内部割れなどの障害発生が少なくて済みます。表層圧縮で凹凸をつける場合には,木目なりの特徴的な凹凸が得られます。

 圧縮装置


写真1 ホットプレス装置

 林産試験場には圧縮,プレス装置が用途別に各種ありますが,本研究では写真1に示す木質系ボード製造用の平盤開放型ホットプレス装置を使用しました。主な仕様を以下に示します。
 加圧方式:油圧式平盤加圧(上ラム可働式)
 最大加力:11,768 kN(1,200 ton,2シリンダ)
 加熱方式:開放型熱盤加熱式
 加熱範囲:100~210℃(蒸気式)
 熱盤寸法:1×2m
 運転制御:手動,ステップ式プログラム

 表面凹凸の付与


写真2 木材同士のくい込みによる凹凸

 木材の表面に木目に沿った凹凸をつけるには,ブラッシングやサンドブラストといった技術を用いて,浮づくりとする手法が知られています。また圧縮木材においても,ローラープレスによる凹凸の付与が知られています。本研究においては平盤のホットプレスによる凹凸の付与技術を検討しました。技術の概要は,写真2に示すように,木材同士を厚さ方向に積層し,向かい合った面で表層圧縮によるくい込みを発生させて早材部分を凹,晩材部分を凸とします。また一方の木材を木材相当の硬さを有する弾性体に置き換えることで凹凸の精度を上げることが可能です。さらに本研究における最終段階での床,壁の試験体は,積層した木材の間に弾性体を挟み込むことにより,十分な凹凸の精度を確保したまま,一度の処理量を向上させることができました。
(1)くい込み量
 厚さ15mmを標準として,表1に示すくい込み量を設定しました。表中の凹凸率(%)は,分母が15mmに対する割合です。表1の評価からも明らかなように,人は足裏でわずかな凹凸を判別しています。
(2)木目
 板目,柾目に代表される木目の違いによって,同じくいこみ量を設定しても,凹凸のピッチが大きく変化するため,感じられる凹凸には差が生じることを確認しました。板目,柾目で凹凸の振幅(凸部と凹部との落差)は同じでも,周期(凹と凹,凸と凸の間隔)が大きく異なるからだと考えられます。

表1 凹凸の程度と床としての評価の例

 おわりに


 現在では,プリント印刷の木目にも凹凸がつけられ,どれが本物の木材であるかがわからないほどに印刷技術が発達しています。本研究で得られた好ましい凹凸も様々な手法での再現が可能ですが,凹凸だけが木材の良し悪しを決定している訳ではないとの結果も得られています。是非,マニュアルをご一読いただき,製品開発の参考にしていただければ幸いです。

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