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水系木材保護塗料の屋外利用

性能部 居住環境グループ 伊佐治信一



 はじめに


 日本における木製エクステリア市場は,住宅回りが約150億5千万円,公共系が約33億円,合わせて約183億5千万円と推定されており,これはエクステリア市場全体の約3.3%を占めるといわれています(金井徹 木材保存2009)。平成22年には,「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が公布され,国産材の利用促進が推し進められることになりました。よって,今後の木製エクステリア市場の活性化に期待したいところです。
 木材を屋外で利用する際には,長期にわたり美観を維持するための表面処理が重要です。今回は,この表面処理として使用される木材保護塗料の取り組みについて紹介します。

 

 木材保護塗料とは?


 木材保護塗料は,日本建築学会発行の「 建築工事標準仕様書・同解説 JASS18塗装工事」における木材保護塗料塗りにより定められており,「樹脂と着色顔料のほか,防腐,防カビ,防虫効果を有する薬剤を含み,木質系塗材の木目を活かした半透明の塗装仕上げに用いられる塗料」を指します。性能面では,「乾燥が16時間以内,促進耐候性試験480時間後に塗膜のふくれ,割れ,はがれがないこと,色が大きく変化しないこと」などが定められています。

 近年の動向


 塗料中の溶剤に水を使用した塗料(水系塗料)が多く販売されるようになってきました。これまでは,有機溶剤を使用した塗料が製品の多くを占めていましたが,有機溶剤の臭気が居住者や近隣からのクレームにつながることもあり,臭気の少ない塗料が現在では必要とされています。また,塗料・塗装業界の全体的な動きとしてVOC(揮発性有機化合物)削減の動きがあり,このことも塗料の水系化に影響を与えていると思われます。

 木材保護塗料の種類


 塗布後の仕上がり状態から,含浸形塗料,造膜形塗料などがあります。これらの区分けに,明確な定義はありませんが,木材への浸透性が高く塗膜が薄い塗料を含浸形,塗膜が厚い塗料を造膜形と呼んでいます。
 塗装した木材の仕上がりと断面の様子を写真1に示しました。含浸形塗料では,木目が見える半透明の仕上がりになり,塗膜の厚さは10~20μm程度となります。造膜形塗料では,塗膜厚さは100μm程度になり,顔料を多く含む塗料では木目が隠れることもあります。100μmは,およそ髪の毛1本分の厚さになります。

写真1 塗装の仕上がりと塗膜の厚み

 塗装した木材の劣化


 塗装面の劣化には,塗膜の割れ,はがれ,カビなどがあります。塗装を行っていない場合,徐々に灰色に退色してきます(写真2)。灰色になる原因には,木材表面の着色成分の分解や溶出あるいは表面に生えるカビなどの影響が考えられます。
 塗装をした木材の劣化形態は塗装の種類により大きく異なります。写真3に示したように,薄い塗膜の場合,劣化は徐々に進行し,特に晩材部から色が褪せてきます。厚い塗膜の場合,塗膜は長持ちしますが,劣化が始まると割れやはがれが目立つようになります。カビの発生は塗料の種類や環境によって大きく異なりますが,早いときには数ヵ月で発生してきます。

写真2 屋外に暴露された木材の劣化(トドマツ)

写真3 塗装した木材の塗膜劣化

 水系木材保護塗料の性能は?


 近年,販売量が増えてきた水系の木材保護塗料は,従来からある有機溶剤系の木材保護塗料と比べて,性能に違いはあるのでしょうか?
 図1に屋外暴露試験(写真4)による塗装面の色の変化(色差)を示しました。色差は劣化の程度を表しています。塗装を行っていない木材は,徐々に灰色に変色し色差は大きくなります(写真2参照)。一方,塗装を行った試験片では,未塗装の試験体に比べ色差の増加は抑えられています。また,今回試験を行った塗料の中では,全体的に水系の塗料の色差は小さく,劣化が抑えられていました。
 水系の木材保護塗料は,有機溶剤系の木材保護塗料に比べて,乾燥の早い塗料が多いため,作業性の良さが利点として挙げられます。

写真4 屋外暴露試験の様子

図1 屋外暴露試験による色差の変化

 おわりに


 今回は,水系の木材保護塗料について紹介しました。北海道の屋外では,木材は冬季に積雪や凍結の影響を受けます。木材保護塗料の塗膜は非常に薄いため,これらの影響を受け,劣化が促進されることもあります。この積雪寒冷地特有の影響を考慮に入れて,北海道ではどのような塗装がより適しているのか,今後も検討していく予定です。

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