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NHK 今日は,お酢の成分を結合させたアセチル化木材のご紹介ということですが,お酢というのは,あの酸っぱいお酢のことでしょうか?
長谷川 今回ご紹介するアセチル化木材は,お寿司などに使われる「酢酸(さくさん)」というお酢の成分を木材に結びつけて作ります。
NHK 酢酸を木材に結合させると聞きますと,臭いまで酸っぱい木材というイメージがあるのですが,そのようなことはないのでしょうか?
長谷川 たしかに,原料としてお酢の成分を使うのですが,できたアセチル化木材は,ほとんど臭いはしません。これは,単に木材にお酢をしみ込ませたということではなく,木材とお酢の成分が化学的にしっかりと結びついて一体化した状態となっているためです。ちょっと専門的になりますが,酢酸エステルという状態になっています。そのため,酸っぱい臭いもほとんどしませんし,水に浸けて酢酸が流れ出てくることもありません。
NHK 見た目や触った感じは,普通の木材となにか違う点はありますか?
長谷川 アセチル化木材と聞きますと,なにか特殊な木材というイメージを持たれるかと思いますが,実際,酢酸の成分が入っているという以外は,普通の木材とほとんど変わりがありません(写真1)。
NHK この木材には,どんな特徴があるのでしょうか?
長谷川 いくつかありますが,まず一つ目の特徴として,木材が長持ちするようになります。例えば,木材を長い間屋外で使っていますと,表面にひび割れが出たり,腐ってボロボロになったりする場合があります。アセチル化木材にすると,こうした割れやひび割れがおきにくくなります(写真2)。
NHK 長持ちするようになるのは良いですね。ほかには,どのような効果がありますか?
長谷川 もう一つの特徴として,水分による木材の伸び縮みが少なくなります。木材自身は絶えず空気中の水分を吸ったり吐いたりしていて,それと同時に膨らんだり縮んだりを繰り返しています。この伸び縮みが大きくなりますと,例えば木でできた床を歩いた時にキィキィときしむ音がしたり,ドアの開け閉めがしにくくなったりするなど,住まいのトラブルが起きることがあります。アセチル化木材にしますと,水分による伸び縮みを普通の木材の1/3~1/4くらいに小さくすることができますので(図1),こうしたトラブルを防ぐことができます。
NHK いいことが色々ありますが,この木材はもう利用が始まっているのですか?
長谷川 日本での普及はまだこれからという状態です。林産試験場では,北海道内での利用を目指して,長さ2m位の木材をアセチル化できる装置を作りました。そしてアセチル化木材の特徴を活かした製品開発を行っています。
NHK 製品開発ということですが,どんな製品を開発していますか?
長谷川 アセチル化木材は,人や環境に安全・安心という特徴がありますので,たとえば,子供さんに安心して遊んでもらえるジャングルジムなどの木製の遊具(写真3),湿度変化に強いフローリング材などを試作しています。
NHK なるほど,さまざまに利用が拡がっていくといいですね。今朝は,お酢の成分を結合させて作ったアセチル化木材について,林産試験場の長谷川さんにお話を伺いました。(以上)