北海道光珠内林木育種場報告-第1号-

(昭和37年3月 発行)

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第15号別刊
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第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号


カラマツの採種林施業 (PDF,30KB) p.1~5
久保田泰則・川口 優
1956年「林木育種事業指針」が生まれ,わが国における林木育種事業の大綱が定められた。これにもとづいて,精英樹選抜による育種計画がすすめられ,採種園造成が着々おこなわれているが,これら採種園からの種子生産が所期の軌道にのるまでの暫定的措置として,集団選抜による採種林事業がおこなわれ,採種林ならびに採種禁止林の措定がなされた。そこで,これら採種林を対象として,品質の向上をあげるための施業法を考えてゆかねばならないが,具体的に実証されたものがきわめて少ない現状である。
この意味から,池田町にあるカラマツ造林地について,試験的に採種林施業をおこなった。もちろん,これは完璧なものではなく,今後補足,修正しなければならない点はあるが,ここにその施業経過について述べ,将来施業上の参考にしたい。

採種園の土壌管理(予報) (PDF,1.35MB) p.6~16
畠山末吉
林木育種事業計画にもとづき設定される採種園は,優良な種子を多量に生産することを目的としている。
したがって,採種園の結実量が問題になるのは当然であり,経営目的としては単位面積当りあるいは単木の多収穫と充実した優良種子の生産が第一義となるだろう。
このためには,土壌管理や,施肥・剪定などの諸技術が要求されるが,これらは,個々に独立して成立するものではなく,環境も含めたこれらの技術の関連の上で達成されるものである。
特に,土地生産業である樹木の生産能力は,根の活動と地力にあずかる点が非常に多い。勿論,果実や樹体を太らせるには,葉の活動がなければならないし,活動的な葉の役割も非常に大切なものであるが,直接果実を太らせ,樹体を大きくさせるのは,根の活動である。葉が多くなったり,果実の負担が大きくなりまた,樹体が大きくなれば,それに伴って葉からの水分の蒸散活動も大きくなってくるので,これに充分な養水分を供給させるだけの広い根の分布と,活動的な根の存在が必要となってくる。
また,人為的に与えられた養水分を,いかに有効に消化する様に仕向けるかということも基本的な問題であり,これらは,土壌管理という管理作業により達成されるものである。したがって,土壌管理の目的は
1.土壌中に根が深く広く分布するような,人為的条件を作り出してやること。
2.根が常に活動的に保たれるような保護を加え,根の能力が最高度に発揮されるように仕向けること。
3.土壌の生産力を高め,その保続をはかる。の3点に集約されるわけである。
土壌管理の問題は,古くから果樹園芸の面で研究されてきたが,林木の場合にどの程度種子の結実量や充実度合と関係をもってくるか,また採種園の経営の面から考えた経済性との関連について検討することを目的とした。
以上の目的にもとづき,1959年光珠内林木育種場内に設定したカラマツモデル採種園を試験地とし,現在までにいたったが,1960年までの調査結果を報告する。
報告にあたって,土壌調査に御協力をいただいた北海道林務部道有林課寺田技師に深く感謝する。

トドマツ,カラマツのツギキ試験 (PDF,229KB) p.17~30
久保田泰則・川口 優
精英樹選抜による採種園造成のため,当場では1957年からトドマツ,カラマツを主体として,年間約50000本のツギキをおこなってきたが,林木についての経験は全国的にも浅く,とくにトドマツはむずかしい樹種とされてきた。そこで,1958年来,採種園造成の急激な時代的要請による,大量のクローン増殖を実行するかたわら,これらのツギキ成績を高めるための,技術的問題について試験をおこない,一応の成果をえたので,ここに報告する。

ヨーロッパアカマツの産地試験 (PDF,236KB) p.31~37
森田健次郎
林力増強計画の進展にともなって,短伐期樹種ならびに高寒地の造林樹種として,あるいはカラマツ,トドマツの不成績造林地,とくに最近カラマツ先枯病発生地帯の造林樹種として,導入育種に対する期待が大きくもたれるようになってきた。
従来その土地に成育していなかった外来種を新しく導入して,その土地に適応する造林樹種を検討することはしばしばおこなわれてきたが,本道においては適性な造林樹種があまりにも少なかったためとくに重視され,ニホンカラマツ(Larix leptolepis),ストローブマツ(Pinus Strobus)などにおいて顕著な成果がみられている。
∃ーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)の我国における試植は,野幌試験地が最も古く,旭川営林局,東大北海道演習林,鉄道防雪林として美馬牛,置戸,緋牛内等の造林地がみられるが,これらはいずれも種子の産地が不明で,東大北海道演習林の北欧系,南欧系の記録だけにとどまっている。
光珠内林木育種場においては,1957年開設以来,産地別に外国樹種を導入してその適応性の比較検討をおこなっている。
本試験に使用した資料は,元林務部次長蓑田茂氏が外遊に際して,Dr.B.LINDQUISTより寄贈をうけたもので,緯度別に採集された6系統のSweden産ヨーロッパアカマツの集団種子である。
報告にあたり,貴重な資料の供与にあずかったDr.B.LINDQUlSTならびに前田茂氏に対し深甚の謝意を表する。

改良ポプラの育苗試験 (PDF,545KB) p.38~48
森田健次郎
北海道における改良ポプラ類の適性範囲を検討するため,1957年より北海道光珠内林木育種場において,96品種187系統にのぼるクローン養成と,モれらの養苗試験を実施し,すでに2,3の結果については報告した(森田・岡本 1960,森田 1961)。
今回,これまでの成績よりみて寒害,サビ病に強く,将来本道において有望と思われる品種を選び,1961年4月29日にサシキし,1年間における成績を調査したので報告する。

改良ポプラの栽培成績 (PDF,795KB) p.49~64
森田健次郎
早期栽培樹種としての改良ポプラ類が我国に紹介されたのは,1952年東大三好名誉教授が,ハンブルグ系19系統を導入されたのに始まり,翌1953年山都屋が,アメリカの0P系10系統を導入し,また東大猪熊教授,高橋教授がイタリー,ドイツ,ベルギー,アメリカより積極的な導入をはかり,それらのものが増殖されてきた。
光珠内林木育種場においては,1957年開設時から,改良ポプラ類の本道における適性を検討するため,イタリー,ドイツから直接サシホを導入し,また東大ならびに東大北海道演習林,その他の試験機関などからの分譲により材料の蒐集をはかり,96品種187系統にのぼるポプラ類について種々検討を重ねてきた。
本道においても,改良ポプラ類は近年著しく増殖され,本年約30~40万本の造林が始められようとしているが,成長が早い樹種として,外国において改良選抜され推奨された品種でも,成育環境が原産地と異なる地域に植栽されるとき,適性についてじゆうぶん検討され,品種相応の適確な栽培法をもって取り扱わなければ,往々にして失敗する例が多い。
本試験は,1958年にサシキ養成された1/1 苗のうち,イタリー,ドイツ,ベルギーの代表品種に,巨大種,釜淵種と在来種であるP.Maximowiczii(王子社有林造林地選抜木,金山1号)を加え,1959年4月当場内に,キリなど特用樹木類の栽培にみられる最良の管理法,間作栽培をおこなった場合の本道における適応成績を試験することと,品種の保存と経営管理の見本展示のため団地式に設定した。
今回この展示試験林における過去3年間の調査成績をとりまとめ報告する。
報告にあたり,材料の御分譲を賜わった,東京大学猪熊泰三教授,高橋延清教授に対し深甚の謝意を表す。

北海道におけるクリ栽培の問題点 (PDF,2.00MB) p.65~74
中内武五朗
クリ栽培に対する要求は,北海道においても,他県同様に大きいが,適性品種のないのが現況である。道央地区まで分布しているシバクリ (Castanea crenata SIEB.et ZUCC.)も経済的には栽培品種として期待できなく,敬遠されている。粗放栽培で結実するという「クリ」も,実際には容易でなく,北海道では気候的条件からも失敗をかさねてきた。この原因を究明のため,道内のクリを調査したが,産地,品種などが不明のため一応これを打切った。しかし,育種的に耐寒性品種の解決をしなければならないので,筆者が今まで調査した資料および今後の問題点についてここに報告する。

トドマツ暗色雪腐病の薬剤防除試験 (PDF,2.24MB) p.75~82
小口健夫
トドマツ稚苗をおかす雪腐病は北海道でもっとも重要な苗畑の病害である。
この病害はふるくはエゾマツの雪腐病といわれ,日本では1938年笠井によって北海道天塩郡音威子府にあった鉄道の苗畑で発見され,さきにアメリカ,ノース・カロライナ州のカナダツガ林で発見され,1937年Rosellinia herpotrichioides HEPTING et DAVIDSONと命名されたものと同一であるとした。そのご1955・1956年にいたって,佐藤・魚住はこの雪腐病菌をRosellinia属にいれることに疑問をいだいた。1957年に小野らは1956 年に北海道内に発生したエゾマツ・トドマツの雪腐病を分離すると,Botorytis菌,Fusariun菌も分離されるが,暗緑色あるいは暗灰色の菌がもっともおおく分離されたことを報告している。1958年佐藤は,東北地方の各種針葉樹雪腐病苗から分離した暗色~暗褐色の糸状菌と北海道各地のエゾマツ・トドマツ・ストローブマツの雪腐病苗から分離した糸状菌とを比較して同一菌とみとめ,この菌による雪腐病を暗色雪腐病と命名し,この病原菌をRhizoctonia sp.とした。
さらに1959年にRhizoctonia菌とRosellinia菌との病徴・形態・生理的性質・病原性などを詳細に研究し,エゾマツ雪腐病をおこす病原菌はRhizoctonia菌であると報告したが,1960年にいたってRhacodium属にいれるのが妥当としてRhacodium therryanum THUEM と同定し,この菌の病徴・生理的性質・病原住・生態・発病と環境・薬剤防除などの詳細を報告している。
この病原菌の薬剤防除についての試験研究は,さきの佐藤および熊坂・桑山らなどによって報告されているが,当場の苗畑でも本病の発生をみたので,1960年根雪前に各種の薬剤を散布し,その防除試験をおこない結果をえたので,ここに報告し,本病防除の一資料にしたいとおもう。
この試験のため薬剤を提供していただいた北海三共株式会社および同社高岡恭氏ならびに,種々御指導をいただいた林試北海道支場樹病研究室の遠藤克昭氏に厚く謝意を表する。

ポプラを加害する蛾類の天敵 (PDF,30KB) p.83~90
上条一昭
我国におけるポプラの害虫については,最近遠田暢男,西口親雄および岡本光男・桃井節也などの報告があり,種類,生活史,防除法などが明らかにされつつある。しかし,その天敵については若干述べられているだけで,ほとんどの害虫については,天敵の種類さえもわかっていない。このため,筆者は,1961年より天敵の調査を進めているが,まず蛾類の天敵について,この1年間に得た結果を報告する。なお,北海道におけるポプラの蛾類目録もあわせて報告する。
この調査にあたり,貴重な資料を提供され,またいろいろ御教示下さった東京大学北海道演習林西口親雄氏,天敵の同定をしていただいた北海道大学昆虫学教室渡辺千尚博士,高木貞雄博士,兵庫農科大学昆虫学教室桃井節也博士,蛾類の同定をしていただいた北海道大学昆虫学教室久万田敏夫博士,北海道立農事試験場奥俊夫氏に深く感謝の意を表する。

カンバ類の林分調査と枝張り直線 (PDF,1.17MB) p.91~122
畠山末吉・横山八郎
造林上の安全性は造林樹種の適性として重要な課題である。特に,北海道は,気象上の特異性から植物の耐寒性,つまり,低温による生理的な障害にたいする抵抗性や,土壌にたいする要求度の低いことなどが必要条件となる。
そのうえ,経済性の問題として成長量とか対象とする樹種の将来における木材の需要構造などについても考慮をはらわなければならないだろう。
このような前提から,最近,工業原料材として広葉樹類の需要が増大している傾向と,本道に広く分布し,みごとな一斉林を形成しているカンバ林の現況から,カンバ類のうちで主要樹種であるシラカンバ(Betula piatyphylla SUKATCHEV var.japonic(MIQ)),ウダイカンバ(Bitula Maximowiczii REGEL),ダケカンバ(Betula Ermani CHAMISSO),の3種について,1958年から3年間,将来の造林樹種としての見地から道内の22林分を一部農林漁業応用研究費の助成により天然林の調査をおこなった。この林分調査および単木調査の結果は,カンバ類の単木成長量では,本道の造林樹種の中で最も優れた成長をしているニホンカラマツ(Larix leptolepis GORD.),と比較できる成長量をしめしているが単位面積当りの林分蓄積量でははるかに少ないのが実態であった。
林分蓄積量の少ない原因は,単位面積当りの立木本数が少ないためであるし,立木本数の密度を制限している因子として,林分が成立する当時から現在までの経過に関係した外的な諸条件もあるが,クローネ幅のひろさが関係するとおもわれたので,調査結果にもとずきカンバ林の法正な立木本数を推定する意味と,広葉樹類の育種研究の足ががりとする意味から胸高直径とクローネ幅との関係を調査し,いわゆる枝張り直線について検討を加えた結果について報告する。

ヨーロッパトウヒの造林成績 (PDF,1.38MB) p.123~171
川口 優・横山八郎
ヨーロッパトウヒ(Picea Abies(LINN.)KARST.)の天然分布区域は,大陸的な冬の寒さのきびしい∃ーロッパ中北部一帯にまたがり,分布範囲は広い。また,垂直的分布はオーストリヤの中央アルプスで,最高1500~2000mのところまで達している。
北海道に導入されたのは明治の末期頃からで,大正時代から昭和の初期にかけてもっとも多く造林された。1952年の調査(川口,1953)によると,∃ーロッパトウヒの植栽面積は5432haで,本道に導入された外来樹種の87%を占めている。これらのうち約50%が中央部にあり,優良な林分成績を示しているものが多い。しかし,∃ーロッパトウヒは立地に対しきわめて鋭敏な樹種であるため,わずかな立地の差異による成長差も大きく,条件のよくないところは非常に成績がわるく,全般的には,優良林分と不良林分の割合は約半々であるといえる。
最近林業の生産性を高めるため,林木育種事業が全国的にとりあげられ,北海道においても「林木育種事業指針」にもとづいて,精英樹選抜による育種がすすめられてきているが,導入育種についても同時におこなわれている。
現在北海道において有望と認められるものはヨーロッパトウヒ,ヨーロッパアカマツ,ストローブマツ,バンクシャマツ,レジノーザマツなどであるが,なかでも∃ーロッパトウヒは,前に述べたように,古くから導入されもっとも多く植栽されているところから,立地条件さえ吟味して植栽すれば,期待のもてる樹種と思われる。
今後,この∃ーロッパトウヒを本道の造林樹種としてとりあげ,その植栽を計画的に推進してゆくためには,まず現在の林分構成状態および立地による造林成績の差を検討し,育種的見地から,本道における適性範囲を知ることが重要である。
ここに,本調査は1958年林野庁の委員等旅費の助成をえておこなったものである。
報告にあたり種々の援助を賜わった,農林省林業試験場北海道支場高樋勇,加藤亮助氏に対し深甚の謝意を表する。

北海道光珠内林木育種場樹木目録 (PDF,47KB) p.172~191
森田健次郎
この目録は,北海道光珠内林木育種場(美唄市)において,1961年8月現在育成している樹木類をまとめ学名,和名,分布地域,入手先について記載したものである。
1. 分類大系および学名は,大井次三郎;日本植物誌(1953)によった。外国樹種の学名についてはREHDER:Manual of cultivated trees and shrubs (1956)により,また園芸品種については上原敬三:樹木大図説(1959)を引用した。
2. 分布地域についても上記の文献を参考とした。
3.Populus, Juglans, Castanea 属の交雑種は,目録の最後に配列した。ポプラの交雑品種の和名は猪熊泰三:ポプラ栽培品種の標準和名,Ⅰ (ポプラ, 2 : 16-17, 1959)によった。
4. 目録中,学名の次の123はそれぞれ和名,分布地域,入手先をあらわす。ただし,Populus属交雑種目録の②は産地系統名を示す。


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