北海道林業試験場報告-第3号-

(昭和39年12月 発行)

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稚樹の測定値を基礎にした成木時生長量推定の一考察 (PDF,238KB) p.1~15
畠山末吉・安達芳克
林木の育種も統計遺伝学から導入された形質の遺伝力や,形質間の遺伝相関の応用によって新しい展開がなされはじめた。しかしこの遺伝力や遺伝相関を推定するには戸田(1957,1961)のようにクローン集団をもちいることができる場合や畠山・酒井(1963)などの方法以外は,集団から母樹を選びそれらの家系群を養成して育種実験をおこなわなければならない。林木ではこの育種実験,つまり次代検定が非常に困難である。というのは林木の育種における目的形質は成木の形質であり一般に林木は幼苗から成木にいたるまで極めて長い年月を要するので次代検定を企だてても成木の成長に関係する遺伝的な能力の判定は短い年月の間に結論をえることができない。
林木育種の分野における次代検定は極めて多くの費用と時間を費やすものであるが,もし苗畑における2~3年の成績からその母樹のもつ生長に関する潜在的な遺伝能力の判定ができれば,成木になるまでの山地植栽試験は大抵有望とおもわれる系統の地域適応性,土壌適応性を検定するだけとなり,次代検定は早いペースでしかも安くできることになる。
林木における早期検定の問題についてはSCHRÖCK とSTERN(1957)がpine について発芽後1週間目の生長から生長に関する遺伝的能力が判定できると報告し,CALLHAM・HASEL(1961)はPinus Ponderasaの2年生の生長測定値から15年生の生長を推定する方程式がえられると報告している。
私たちは成木形質の遺伝的能力をあきらかにするうえで,不利な条件の林木についてどのようにすれば2~3年生の稚樹の測定値から成木形質の遺伝的能力を知ることができるか主として酒井(1957)の理論にしたがい実験的に検討した。

トドマツ開葉の変異について (PDF,544KB) p.16~26
久保田泰則・近久明男
全道各地から選抜されたトドマツ精英樹のツギキクローンによって,1963年,64年の産地系統別に開葉の遅速に関する検討を行なった。
ツギキクローンを使ったことにも関係すると思われるが,クローン内の個体による変動幅は11日にもなり,トドマツ全般の変動は14日~15日で,適例5月10日過ぎより5月25日頃までに開葉すると推測される。
遺伝的なクローン系統による差は明瞭で,その変動幅は9日間と推定された。当然のことながら,年によって多少の遅速を生ずることも認められた。
春先の晩霜期より,開葉が完全にずれる系統,もしくは集団の選抜は到底期待できないが,おそい系統,または集団の利用は一定の効果を保証することが認められた。集団としては厚岸地方のものは,全道各地のものより2~3日はおそかった。
トドマツ以外のモミ属の中でウラジロモミは,特におそく,またその中での特定のクローンは完全に晩霜期を脱した6月10日すぎに開葉し,本道での適応性と生長が順調であれば,造林樹樺としても可能であろうし,トドマツとの交雑による耐霜性雑種トドマツの育種を期待される。
開葉期と生長との関係は,地域集団としての生長と開葉期との関連を明らかにしなければ正確な判断はできないが,この調査をとりまとめての段階では関係はないとして差支えなく,開葉がおそく,かつ生長のよい系統は選抜できることを示した。

カラマツの次代検定における遺伝変動について (PDF,132KB) p.27~31
川口 優・久保田泰則
選抜育種事業として今日集団選抜による採種林施業が行なわれ,それから種子を採取することにしているが,採種林施業によって育種的にどれだけの改良効果があるかということを知るためには,集団選抜によるこれら採種林そのものにどれだけの遺伝的変動がふくまれているかを知らねばならない。これを知るためには次代検定を行なって始めてそれが達成されるのである。
現在では,林分および各個体の表現された形質で判断して,遺伝的に優れたものがかなり多く含まれているだろうという推量だけで実行が進められているのであって,確実に立証されたものによっているのではない。
そこで,これら個々の採種木について次代検定をおこない,それぞれの遺伝効果のふれをたしかめる必要にせまられている。
今回その一部を知ろうとしてこの試験をおこなった。すなわち,すでに施業されたカラマツの1級採種林において選抜された母樹について,次代検定をおこなう目的で始めたもので,林分内で母樹の自然交配種によってえられた子供群について各家系の苗長と根元径の両形質の分散分析をおこない,家系間の分散を求め,さらに分散の期待成分まで算出してみた。
また,タネの重さと苗高,苗径との相関,1年目と2年目の生長量の相関,母樹と子供との親子相関などそれぞれの相関関係について調べた。
今までの調査からは,その目的の一部しか知ることができないが,これまでにまとめたものを個々に述べ,それより綜合した考察を添えてここに報告する。

外国産マツ類の樹種別適応試験 (PDF,935KB) p.32~42
森田健次郎
本道において,外来樹種が植栽されたのは,明治の初期から行なわれていたが,明確な原産地がわからないのと,林分的な規模で植栽されたのが少なかったため,適確な適応性を判断できない不備がある。J.W.WRIGHT(1963)はミシガン州におけるヨーロッパアカマツの更新の目的で遺伝的に適した材料を選択するために,19カ国の122系統からなる産地試験を行ない,またD.LANGLET,W.SCHMIDTらも産地試験から生態型を論じ,造林樹種として産地の適否を生態型からみちびく研究をとりあげている。わが国におけるこれらの研究はスギ,アカマツなどの国内樹種については多くの試験が行なわれているが,外来樹種についてはごく最近になって始められたばかりである。
この試験では,本道に適応する造林樹種として諸害の抵抗性,早期栽培性などの特性をあきらかにするため,殊に本道に実績のすくないマツ類をも含め,明確な産地のものを林分的規模で道内3ヵ所に1961年に試植林を設定した。この樹種試験の結果から,導入樹種相互間の適応性をみつけ出し,その結果からマクロなかたちでの樹種の選択を行ない,選択された樹種について,ひきつづき産地問題をとりあげてこの研究を一応完成する予定である。
前記3試植林のうち,今回光珠内実験林は3ヵ年を経過したので種子鑑定結果,育苗成績および試植検定林の成績につき,とりまとめ報告する。

コバノヤマハンノキ稚苗の有機水銀剤による薬害 (PDF,495KB) p.43~45
佐藤平典・森田健次郎
コバノヤマハンノキは,近年早期育成樹種として特に東北地方において注目され,育苗,造林技術についての研究がすすめられている。
当場においても,北海道の郷土種であるケヤマハンノキと,∃ーロッパから導入したグルチノーザハンノキをあわせて,道内における適応性ならびに,実用技術開発試験によるコバノヤマハンノキの育苗試験を行なってきた。
これらハンノキ類は,発芽状況は良好な成績を示したにもかかわらず,発芽揃い後の稚苗期に生ずる枯損がおびただしく,このため秋期の得苗が極めて少ない。この原因について育苗途時に観察した結果から,病害防除のため薬剤撒布を行なった後の被害が大きいため,薬害ではないかとの推論を下し,これを実証するための試験を行なった。

Pestalotia菌によるAphelenchoides sp.の培養温度 (PDF,777KB) p.46~50
小口健夫
線虫の生態学的,生理学的な研究または殺線虫剤の効力検定の材料として豊富な個体群を随時に供給するために,線虫を人工的に培養するこころみがおこなわれてきた。
すなわちBERLINER&BUSCH(1960 線虫研究指針)は,土壌のかわりに寒天培養基をもちい,それに寄主植物を無菌的にそだてて線虫を接種する方法でHeterodera Schachtii の培養をおこない,またBYARS (1914)はPrefferの培養基をもちいて,トマトなどをそだてこれでMeloidogyne sp.の培養をおこなった。その後おおくの研究者によりこの方法が応用されて線虫の生活史や生態的な研究に役立ってきた。
しかし,この寄主植物の幼苗や組織をもちいて線虫を培養する方法は寄主植物をそだてにくいこと,寄主植物が大きいと困難になる不便がある。微生物を利用して線虫を培養する方法では,AphelenchoidesAphelenchus,Ditylencus,Dorylaimus属などの線虫が培養に成功している。とくに植物寄生性線虫のなかでも比較的腐食性なAphelenchoides属の線虫では,おおくの報告がなされている。
CHRISTIE&ARNDT (1936)は,corn mealに培養したNeurospora sitophila菌上でAphelenchoides parietinusAphelenchus avenaeが培養できることをあきらかにした。また,CHRlSTIE&CROSSMAN(1936)はAlternariacitri菌をもちいてAphelenchoides fragariae を培養し,TODD&ATKINS(1952)はHelminthosporium菌あるいはFusarium菌を利用してAphelenchoides oryzae (?)を培養した。このほかに弥富・西沢,TODD&ATKINS,古山(1960線虫研究指針)はともにAlternaria菌をもちいてAphelenchoides besseyiを培養している。このようにAphelenchoides属の線虫は菌による培養が比較的可能である。
著者はNitsckia tuberculifera菌によるスギのこぶ病を研究中,Pestaloitia shiraiana菌におかされたこぶの表組織内にAphelenchoides sp.がいることを顕微鏡下で発見した。このためこのAphelenchoides sp.がPestalotia菌で培養しうるかどうか,またその培養適温をしるための実験をおこなった。
この実験をすすめるにあたり種々御指導をいただいた農林省林業試験場真宮靖治技官,材料の採取に御努力下された松前林務署江口完造林課長ならびに課員の方々に厚く謝意を表する。

剥接を改良した一接木方法 (PDF,453KB) p.51~56
中内武五朗
接木の方法として,一般的には切接,割接,腹接,袋接法がおこなわれているが,その他に剥接法がある。この方法は寒冷な地方の凍害防除策として「クリ」や,「モモ」などの大径木に高接をする場合に効果をあげている。しかしこの方法は難かしい操作を必要とするので,筆者はこの剥接法を改良して,さらに能率をあげることを考え,クリを材料にして実験したところ,操作が簡単で,よい成果を得ることができたので,この方法を改良剥接法と名づけその成績をここに報告する。なお本実験に種々指導いただいた,元林野庁企画官,小野陽太郎氏に深甚な謝意を表する。


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