北海道林業試験場報告-第7号-

(昭和44年5月 発行)

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競争力および密度と林木の生育との関係 (PDF,4.08MB) p.1~17
畠山末吉
わが国の林木育種事業は,精英樹選抜による採種園,採穂園方式がその主軸をなしている。育種計画が所期の成果をおさめ得るかどうかは,精英樹の選抜が正しくおこなわれたか否かによるところが大きい。個体選抜が正しくおこなわれるためには,それらの個体が正しく遺伝的性質を発現していることが必要である。ところが,林木の表現型の形質量はその個体のもつ遺伝的性質,それにあたえられる環境の効果,隣接する個体間の相互作用などによってきまる。種間,あるいは種内でも遺伝子型の異なる個体間の相互作用は,それらの個体がおかれた環境によって多様性をしめす。この相互作用のうち,遺伝子型の異なる個体間の競争が植物の表現形質の発現に重要な役割をはたしていることは多くの研究であきらかにされてきた(酒井:1955,秋浜:1967)。
林木の重要形質も,このような個体相互の競争によって表現形質の増減が影響されているとすれば,表現屋の個体選抜はむずかしい。また,選抜した精英樹の次代検定において,競争効果を考慮した検定方法が必要になる。これらのことを考え,この論文では林木の競争力について考究した。しかし,競争を自然淘汰の要因としてよりは主に混植がそれぞれの表現型の発現にどう影響するかを検討した。
その内容は,1) 競争力が遺伝子型によって異なるか否かの検討,2) 密度反応が遺伝子型によって異なるか否かの検討,3) 以上のことから競争力と密度反応との関係をたしかめ,4) 競争効果の量,性質をあきらかにし競争効果が林木の表現型の発現に相対的にどの程度の重要性をもつかをあきらかにしようとする試みである。

コバノヤマハンノキの密度試験 (PDF,600KB) p.18~23
森田健次郎・高橋幸男・花房 尚・水井憲雄
人工林を造成するとき植栽本数をきめることは樹種をきめるのと同様に重要な要件であり,植栽本数は樹種の性質や生産目標,立地環境,造成費などで増減される。立木密度や林分生産量の解析などすでに閉鎖した林分に対する本数密度の試験研究は古くから行なわれ,保育形式(坂口1962)としての詳細な林分密度管理の考えかたなどが報告されている。
この試験は,東北地方の切替畑で肥料木として植栽して生長が旺盛な短伐期樹種であるから(千葉 1966),最近北海道に導入されているコバノヤマハンノキAlnus Inokumae MURAI et KUSAKA を用いて,その適応性を検討するために,いろいろな密度に植栽した場合,生産量として樹高や直径と形質にあらわれる枝張りや枯上りとか被害などをしらべたところ,ある程度の傾向を得たので報告する。

トドマツ・カラマツのさしき試験 (PDF,283KB) p.24~31
森田健次郎・水井憲雄
近年になって植物育成のための環境調節装置が発達してきて,目的の温度や湿度が容易に制御されるようになったために,このような装置を用いて植物のさしきが数多く行なわれるようになってきた。筆者らはさしきがむずかしい樹種とされていた(陣内,1967)トドマツとカラマツのさしき発根性を検討するのに,ミスト灌水装置をつけたプラスチック簡易鉄骨ハウスで温度と湿度を調節して,さしき用床土,さしきの時期,母樹の樹齢と発根性,ミスト灌水管埋下でオーキシン類の発根促進効果などをしらべた結果について報告する。

カラマツ花粉の人工発芽に関する研究(1) (PDF,581KB) p.32~36
市河三次・久保田泰則・安達芳克
カラマツの育種は北海道の林業にとって極めて重要な課題である。特に本州中部高山地帯に分布するニホンカラマツ(Larix leptolepis)と,樺太,千島に分布する北方型の沿海性カラマツであるグイマツ(Larix Gmelim)との種間交雑によるF1は,生長,耐鼠性,耐寒性にすぐれ,このF1雑種の生産技術を開発することが急務といえよう。筆者らはこれらの研究を遂行する上で,交雑の技術的問題として欠くことのできない,花粉の長期超低温貯蔵について研究を重ねてきた。さらにその生死判定は極めて重要な課題とされる。
従来カラマツ花粉の人工発芽は極めて困難とされてきた1),2)。発芽床はいずれも強度の酸性培地を用い,わずかな発芽率のあることが報告されているが,筆者らは,通常の寒天発芽床上でのカラマツ花粉の動きを調べた結果,カラマツ花粉も一般のTaxodiaceae花粉の発芽過程と類似の経過をへて発芽することがわかった。ただし花粉管は一般的な花粉管とその形態をいちじるしく異にするので,電子顕微鏡を用い,花粉膜,花粉管膜の構造を比較し,花粉管膜の形成が認められたので,ここに人工発芽床上でのカラマツ花粉の発芽に関する知見を報告する。なおこれらの研究に多大の御教示をたまわった京都大学四手井綱英教授,北海道大学武藤憲由助教授,電子顕微鏡についてその利用と技術的指導をたまわった京都工芸繊維大学黒沢喜一郎先生及び研究におしみなく協力して下さった北海道立林業試験場の方々に厚く感謝の意を表す次第である。

北海道の天然林におけるエゾマツ,トドマツ単木の胸高断面積生長量について (PDF,172KB) p.37~50
高田和彦・小林正吾・阿部信行
1968年8月5日~11日の間,林業統計研究会のメンバーによって,未開発林調査法の研究を目的に,北海道有林北見経営区のチミケップ湖周辺の天然林の調査が行なわれた。この調査では,対象区域の森林にあらかじめ空中写真上で幾つかの林相区分をほどこし,このうち最も面積比の大きい区分に属する針広混交林の1森林(158林班)中に1ha(100×100m)のブロックを設定し,ブロック内の森林構成諸因子の測定が行なわれた。この調査をに参加した筆者らは,とくにこの資料を用いて天然林の生長法則の解明と生長量の推定法の研究をとりあげることにした。
天然林は,森林構造が多様で一般的な生長法則の解明は極めて難かしい問題である。しかし,一見複雑で多様な天然林も,その構成単位である単木の集合体に外ならず,単木の組合せの様態によって,さまざまな林型が構成されているものである。したがって,単木の生長と,それに影響をおよぼしている範囲の立木群との法則的関係が明らかにできれば,任意の林型の天然林の生長過程は,単木の生長法則を組合せることによって再現できる筈である。以上のような考え方にたって,まず単木の生長法則の解明を試みることにしたが,測定上の制約と生長錐片の年輪幅の読みとりなどの関係から,エゾマツ・トドマツの胸高断面積生長量の解析に限定せざるをえなかった。他の樹種,生長量については,今後,再測の資料がえられる機会にゆずり,ここでは,本調査でえられた両樹種の胸高断面積生長量の解析結果について報告を行なうものである。

トドマツを加害するコスジオビハマキの薬剤防除 (PDF,93KB) p.51~55
上条一昭・鈴木重孝
1965年以来,トドマツ造林地に発生をつづけているコスジオビハマキ(Choristoneura diversana HUBNER)とトドマツアミメハマキ(Zeiraphera truncata OKU)を主体とするハマキガ類は,まずまず増加する一方で,被害は北海道全域に広がってきている。これらハマキガに対する薬剤防除は1967年,旭川林務署管内の激害林分ではじめて行なわれたが,コスジオビハマキは10%減少したにすぎなかった(上条ほか,1968)。この結果,当年生葉はほとんど食べつくされ,枯死のおそれはさらに強まったので,1968年には名寄,美深の各林務署の激害林分も合わせて,120ヘクタールにヘリコプターを使って薬剤防除を行なった。効果は全般に著しく,ほぼ完全に食害を防ぐことができた。この防除効果の調査は1967年と同じ旭川林務署管内の73林班で行なったので,その結果をここに報告する。
調査に際し,種々御協力をいただいた旭川林務署造林課の諸氏,および北海道林務部の水谷栄一氏に厚く御礼申しあげる。

トドマツを加害するハマキガ類の防除薬剤の評価 (PDF,2.85MB) p.56~61
川上功二
近年,北海道のトドマツ人工壮齢体にハマキガ類の害がめだちはじめ,1967年と1968年にはヘリコブターによる薬剤防除が実施されるに至った。これらハマキガ類の種の構成や天敵との関旅,発生消長などの生態面での研究は現在さかんに行なわれているが,その薬剤防除に関する研究は未だあまり行なわれていない状態である。薬剤防除を成功させるためには,薬剤,施用方法,施用時期などが適当でなければならないが,ここでは,まずどのような薬剤がこれらのハマキガ類に対して有効であるかを知るために,浸漬試験と散布試験を行ない,その効力の評価を行なった。これらの実験は,1968年6月に美唄市光珠内の北海道立林業試験場(以後・道立林試と略称する)構内に試験地を得て実施したものであり,一応の成績を得たのでここに報告する。森林保護関係の各位になんらかの参考となれば幸いである。
本文に先だち,いつも御指導をいただいている北海道大学農学部昆虫学教室の渡辺千尚教授,また本調査にあたって種々御協力下さった道立林試昆虫野兎鼠科の上条一昭博士,その他同科の諸氏に厚く御礼申しあげる。

天然林におけるネズミ類の生息密度と個体群構成の変動 (PDF,1.36MB) p.62~77
藤巻裕蔵
エゾヤチネズミClethrionomys rufocanus bedfordiacによる林木食害は,北海道のカラマツ造林が始まったときから目立つようになり,今日にいたるまで造林事業上大きな障害の一つとなっている。そのため,本下(1928)をはじめ多くの研究者によってエゾヤチネズミの生態・防除などの研究が行なわれてきた(上田ら,1966)。北海道野鼠研究グループ(1956)はこれらの研究を検討し,それ以後の研究課題の一つとして,個体群の内部法則を追求して発生予察を確立すべきであると述べた。その後,ネズミ類の個体群変動の機構が,すみ場所の条件,気象条件,食物条件と関連させて明らかにされている(太田ら,1959;木下・前田,1961;桑畑,1962;前田,1963)。しかしこれらの研究では,繁殖活動や生命表などの解析によって変動の機構が明らかにされているとはいえ,密度の変化と個体群構成の変化との関係など,変動機構についてまだ不十分な点が多く,また主としてエゾヤチネズミを対象としている。
この研究は,北海道野鼠研究グループがあげた課題を解明するために,ネズミ類の個体群変動の機構を明らかにしようとしたものである。1963年5月から1966年11月まで,札幌市にある藻岩山の天然林で,エゾヤチネズミ,ヒメネズミApodemus argenteus,エゾアカネズミApodemus speciosus ainu の3種について調査した。今回は,それらの結果から生息密度と個体群構成の変動について述べ,これまでの研究であまり明らかにされていなかった個体群変動の型についてもまとめてみたい。
この研究を行なうにあたり,ご指導,助言をいただいた北海道大学農学部の島倉亨次郎教授と太田嘉四夫講師にお礼申し上げる。


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