北海道林業試験場報告-第8号-

(昭和45年6月 発行)

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カラマツ花粉の人工発芽に関する研究(2) (PDF,593KB) p.1~10
梶 勝次・久保田泰則・市河三次
北海道の造林にとってカラマツの育種はきわめて重要な課題である。とくにグイマツとニホンカラマツの雑種生産技術の開発,実用化が急がれていることは第1報で述べた。筆者らは,これらの研究を遂行するうえで,交配の技術的な問題として欠くことのできない,花粉の貯蔵および,それに関連して生存力検定のため,人工発芽とその方法,および受精機構についての究明を重ねている。また最近は,人工交配を行なう機会が多くなり,それにさきだっての花粉の生死判定は重要と考えられる。
カラマツ花粉の人工発芽についての究明はすでに,原田・柳沢(1964),百瀬(1955),BARNER and CHRISTIANSEN(1960),市河・久保田・安達(1969),CHRISTIANSEN(1970),そのほか多くの研究者により調べられているが,その人工発芽は困難とされており,最終的な発芽の仕かたについては,ほとんど明らかにされていない。筆者らは前報で,通常の寒天培地上でのカラマツ花粉のうごきを調べたところ,カラマツ花粉はスギ科(Taxodiaceae)の花粉と類似の発芽の仕かたを示すと考えられることを報告したので,さらに無菌操作を加えて,長時間発芽床上でのうごきを観察した。ここにその結果と実用的な花粉の生死判定法についての知見を得たので,その概要を報告する。なお,これらの研究を行なうにあたり御教示を賜った京都大学四手井綱英氏,渡辺光太郎氏,新潟大学船引洪三氏に厚く感謝の意を表する。

カラマツ花粉の超低温貯蔵に関する研究(1)
-とくに超低温処理の基礎的問題-
(PDF,771KB)
p.11~26
市河三次・梶 勝次・久保田泰則
北海道の林木育種をすすめていくうえで,急がれているものの一つにグイマツとカラマツの交雑育種がある。この場合開花期のずれから1年間花粉を貯蔵しなければならないことはすでに述べた。市河ら(1963, 64,)は花粉の発芽力を長期間保つ方法で,多くの樹木花粉が液体窒素(-196℃)の中で長期間の貯蔵に耐え,すでに8~9年間発芽力をおとさずに貯蔵していると報告している。当場においても,1968年,カラマツ花粉について予備的に6年間液体窒素に貯蔵されていた花粉を京都から空輸し人工授粉した結果,正常な種子がえられている(市河ら,1969)。とくに液体窒素を用いると実用的に他の冷媒や冷凍室を使用する場合に比較して経費が低廉であるばかりでなく,液体窒素は化学的に不活性であり,確実に-196℃を保つという利点があり,さらに適当な処理を行なえば,氷晶生成に対して,他の方法による低温長期貯蔵よりも安全である。
カラマツ花粉も他の樹木花粉と同じく超低温貯蔵が可能と考えられ,さらに超低温下における凍結傷害の発生もスギ,クロマツのほかタイサンボクなどの虫媒花粉とも類似の点が認められ,現在すでに超低温下での花粉貯蔵を行なっているが,今後実用的な貯蔵方法,とくに貯蔵容器などの研究も進めねばならない。
本論は液体窒素を利用した超低温長期貯蔵の諸実験のうち,花粉含水率と温度との関係,凍結による傷害,予備凍結などについての基礎的な実験の結果をまとめて報告する。
これらの研究を行なうにあたり御教示を賜った弘前大学田中清氏,京都大学四手井綱英氏,渡辺光太郎氏,横山正和氏,北海道大学酒井昭氏に厚く感謝の意を表する次第である。

気象的見地からみた渡島半島におけるヒノキアスナロ造林適地の検討 (PDF,1.68MB) p.27~34
増田憲二郎
渡島半島には,ヒノキアスナロの自生地帯があり,とくに,桧山・江差地方には純林を形成し,その景観は下北・津軽両半島における美林に並ぶものがある。蓄積は913,000m3で,道内のスギ人工林の総蓄積929,000m3に近い量である。しかし,その自生地域が,北は熊石町,東は上磯町を限界とし,それ以西の地帯に限られていることから,自生分布のないそれ以東または以北の地域への施業地拡大には種々の懸念がともなう。
本稿では,ヒノキアスナロ自生地帯を中心とした気象環境から,渡島半島内での造林適地範囲を検討してみた。観測値には,主として北海道ならびに青森・岩手両県の気候誌(1940~1960)を用いて,ヒノキアスナロ分布地域に近接した気象管署ならびに観測所の測定値を用いた。

カラマツ3種の生長と先枯病に対する罹病期間 (PDF,499KB) p.35~40
小口健夫
Guignardia laricina(SAWADA)YAMAMOTO et K.ITOによるカラマツ先枯病が東北地方,北海道に大発生して以来,この菌の生活史,生理,また被害発生環境,薬剤防除などに関する研究が種々発表された。これらのなかで,本病の発生と風との関係については,中川ら(1960),加藤ら(1962),岡本ら(1962),横田ら(1964)などの報告があり,いずれもカラマツの生育期間中風当たりのよい場所に被害がいちじるしいことを明らかにしている。また横田ら(1964,1969),横田(1970)は生育期間中の風をなんらかの保護帯で少なくすることによってカラマツ先枯病の発生を激減させることができることを明らかにしている。
一方カラマツ先枯病に対するカラマツ属の各種間の耐病性については,横沢ら(1958),柳沢ら(1960),佐藤ら(1962),千葉ら(1963),またニホンカラマツのなかでのクローン間の耐病性については小口(1963)が報告している。これらの報告からカラマツ種間の耐病性の差はヨーロッパカラマツ(Larix decidua MILL.)は最も罹病性が高く,グイマツ(L. gmelinii var.japonica PILGER)は抵抗性であり,ニホンカラマツ(L.leptolepis GORD.)はこの2種の中間の罹病性であるとしている。
筆者は,カラマツ種間に罹病性の差が生じる原因の1つとして,風による新梢の機械的損傷の多少が関係するのではないかと考え,1967,1968年の2ヵ年,ニホンカラマツ,ヨーロッパカラマツ,グイマツの3種のカラマツについて生長,とくにカラマツ先枯病菌の侵入個所である新梢の伸長生長と,これにともなう木化の早さを調査した。また1968年にはこれらカラマツ3種の罹病時期,罹病程度をしるための試験をおこなった。

北海道中央部における天然林と人工林の鳥相の比較 (PDF,1.10MB) p.41~51
藤巻裕蔵
混交林では単純林に比べて害虫の大発生が起こりにくいが,これは混交林では単純林より動物相が豊富で,特定の種が異常に多くならないというのが,一般的な見解である。このことは森林保護にとって重要な問題であるが,わが国では具体的な研究がほとんど行なわれていない。そこで,森林に生息する動物のうち,害虫の天敵として重要と思われる鳥類について,このような問題を明らかにすることにした。まず,混交林と単純林とで鳥相がどのように異なっているかを明らかにするため,1967年から調査を進めてきたが,一応の結果を得たのでここに報告する。
この研究を行なうにあたり,いろいろとお世話していただいた旭川林務署の各位にお礼申しあげる。

トドマツ林におけるハマキガ相の地域差 (PDF,561KB) p.52~60
鈴木重孝・上条一昭
ここ数年の間,北海道中央部のトドマツ壮齢人工林(30~40年生)にコスジオビハマキ(Choristoneura diversana HUBNER)が大発生し,かなりの被害がでている。北海道林務部では,道有林でのコスジオビハマキの発生状況を知るために,全道17林務署で24ヵ所の林分をえらび,1969年6月中旬に調査を行なった。その結果を検討したところ,ハマキガ類の種類構成や個体数,ならびにコスジオビハマキの発育にかなりの地域的差異のあることがわかったので,ここに報告する。
なお,この資料を報告するにあたり,調査を担当して下さった各林務署ならびに道有林第2課の水谷栄一技師に深く感謝の意を表する。


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