北海道林業試験場報告-第10号-

(昭和47年11月 発行)

第1号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号 第7号 第8号 第9号 第10号
第11号 第12号 第13号 第14号 第15号
第15号別刊
第16号 第17号 第18号 第19号 第20号
第21号 第22号 第23号 第24号 第25号 第26号 第27号 第28号 第29号 第30号
第31号 第32号 第33号 第34号 第35号 第36号 第37号 第38号 第39号 第40号
第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

カラマツ幼齢林分における単木の胸高直径生長量と隣接木の距離との関係 (PDF,838KB) p.1~10
阿部信行
人工林における立木の生長は,生長経過とともにまわりの密度によって影響をうける。その点に関しては,今までも,種々議論されてきたところである。とくに,カラマツのような陽樹では,除間伐の実行によって空間が変化した場合,以降の林分生長が大きな影響をうけることは容易に予想できる。しかしながら,どのような方法で表示すべきかはまだ確立されていない。さらに,生長経過とともに,その立木固有の形質が形成されてくる。形質は他種におよぶが,カラマツ人工林では,曲りの有無が収益に大きな影響を与える。
そのため,過去2度にわたり除伐が行なわれた15年生カラマツ人工林を対象として各立木位置を電子計算機に記憶させ,単木ごとに隣接木との距離を算出させて,胸高直径生長量との相関を主に,さらにそれら距離の因子と,曲りの有無にしぼった林木の形質面との関連性を調べたので報告する。
用いた電子計算機はNEAC2200-500であり,分析(本数305本)に要した計算時間は約5分である。

留萌地方における防災林造成法の研究 (PDF,1.73MB) p.11~48
斎藤新一郎・伊藤重右ヱ門・原口聡志
北海道の北西部に位置する留萌地方(留萌支庁管内)は日本海に面していて,冬期の季節風の影響を大きく受け,海岸線沿いには天然林が少なく,人為による防災林の造成事業もいまだ成林に到っていない。この地方の北部は,宗谷支庁管内とあわせて,「天北地方」とよばれる。気象条件の厳しさと,土壌条件の貧弱さとから,留萌地方も造林困難地域の1つに数えられる。土地利用の上からも,海岸の防災林と内陸山地の経済林の中間に,もう1つの森林帯を造成する計画が練られている。
しかし,わずか数10年ないし数100年間の森林伐採と,たび重なる山火事とによる消滅以前には,この地方の海岸線も森林におおわれていたのであって,決して昔からの無立木地(ササ山ないし海岸草原)ではない。自然のつくった無立木地ならともかく,人間のつくった無立木地には,条件さえ整えれば,森林の復元が可能であるはずであり,それゆえにこそ,林帯造成事業が実行され,狭くとも利用価値の高い海岸線の微気候緩和が計られている。そして,気象条件の厳しさから,この地方では農業も林業も林帯の保護なくしては困難であると考えられている(松井・篠原 1960,伊藤・今 1970,早坂・山田・水野 1972)。
林帯は農地,経済林,交通機関,生活空間を,風や雪から保護するものとして,「保護のための林帯」と考えられ,しかもこの考え方に加えて,保護対象の変化や社会の変化にともない,「保健休養林」的な要望が強まってきた(東 1971a,中島 1971,仲村 1971,鈴木 1971,斎藤・能登 1972)。また,森林の荒廃は沿岸の漁業を不振にさせる一因と考えられている(三浦 1971)。
これまでの林帯造成事業は,材料の不足,方法の不十分さ,生物工法における基本条件の検討の弱さ,社会的制約,および数多くの生育阻害条件に原因があるとされて,まだ十分な効果を発現していない。これは宗谷地方のそれとほぼ似ている(斎藤・伊藤 1971)。それゆえ,これまでの実験科学の方法論を,野外科学のそれへと考え方を変えてゆきながら,林帯造成の基本論と地域・地区に応じた応用論とを確立してゆく必要がある。
この研究は北海道全体の防災林造成事業のための基礎資料の1つであり,「宗谷地方における防災林造成法の研究」(斎藤・伊藤 1971)に続く第2報である。本報告は第1報の方法論・考察を,調査対象地を留萌地方に移して,そこにおける天然林の成立条件と,防災林造成事業という実験結果とから,さらに発展させたものである。この種の研究はさらに継続されてゆくはずであり,これらが北海道各地の林帯造成事業に活用されるならば幸いである。
なお,この研究の一部は第83回日本林学会で発表された(斎藤・伊藤・原口 1972)。

カラマツ花粉の超低温貯蔵に関する研究(2)
-含水率別、温度別による貯蔵結果と貯蔵方法に対する考察-
(PDF,667KB)
p.49~58
梶 勝次・市河三次・久保田泰則
雑種カラマツの実用化研究をはじめとして,人工交配を行なう機会が多くなりつつある。筆者らは第1報でカラマツ花粉の長期貯蔵の必要性を述べ,低温貯蔵に対する基礎的な問題と考えられる凍結耐性および凍結による傷害を調べてその類型の分類を試みた。
一般に花粉の生存力は樹種によって差があるが,カラマツをはじめ多くの林木花粉は超低温,低含水率下で長期間発芽力を維持できるようである。また液体窒素(-196℃)に6年間貯蔵したカラマツ花粉を当試験場において人工交配に用いた結果,完全な種子が得られたことはすでに報告した(市河ら,1969,1970)。
本報告では花粉貯蔵の実用化研究として,温度別,含水率別の試験を行ない,最適貯蔵方法および花粉の採集,調整方法に対する知見をまめた。
これらの研究を行なうにあたり,ご指導を賜った京都大学四手井綱英教授,新潟大学船引洪三教授,京都家政短期大学渡辺光太郎教授,農林省林業試験場,育種第3研究室長福原楢勝氏,生理研究室佐々木恵彦氏および実験を行なうにあたり惜しみないご指導と貯蔵温度の便宜を図っていただいた王子林木育種研究所所長千葉 茂博士,また液体窒素による超低温実験に便宜をいただいた北海道家畜改良事業団札幌家畜人工授精所の各位および当場育種科の川辺,藤田各嬢に深く感謝の意を表わす次第である。

エゾヤチネズミの繁殖活動
1.春の繁殖活動の地域差
(PDF,848KB)
p.59~67
藤巻裕蔵
エゾヤチネズミ Clethrionomys rufocanus bedfordiae の数の変動には,根釧地方を中心とした東部でみられる「激変型」とその他の地域における「非激変型」の2型があることが知られている(井上,1943)。さらに,北海道の一般民有林で行なわれているネズミ調査の最近の資料を整理することによって,エゾヤチネズミの数は,北部でも東部と同じように秋に非常に多くなるが,南部ではそれほど多くならないことが明らかとなっている(藤巻,1969,1971)。ネズミ類の発生予想のためには,このような個体群変動の地域差の機構を知る必要がある。エゾヤチネズミの研究は古くから行なわれているが,限られた地域での研究が多く,北海道全体を対象としたものはきわめて少ない(上田ら,1966)。そのため上に述べたような地域差については,十分に明らかにされてない。
繁殖活動は,数の増加に関与する点で,個体群変動では重要な意義をもつものである。ここでは,北海道数ヵ所から集めた資料にもとづいて,まず春の繁殖活動にみられる地域差について報告する。
この報告をまとめるにあたり,ネズミ類の採集,送付などいろいろと御協力いただいた北海道林務部道有林第二課,および函館,倶知安,留萠,旭川,美深,池田,厚岸の各林務署の各位にお礼申しあげる。

北緯42~45度の山地斜面における晴天時の直達日射量 (PDF,75KB) p.68~81
薄井五郎
山地における斜面方位,傾斜角は単位面積が受ける直達日射量に大きな差異をもたらし植生や土壌の温度,融雪の状況,土壌の乾燥などの立地条件に影響を与える。
これらの現象を理論的に扱うとき,山地斜面が受ける日射量を知ることが必要となる。日射量の計算はやや煩雑であるので,例は少ない。ここでは岡上(1957)の方法によって北緯42~45度における3月から10月までの各月1日,10日,20日の山地斜面が受ける晴天時の直達日射量とそれをもとに旬間,月間の日射量を計算した。


ページのトップへ