北海道林業試験場報告-第12号-

(昭和49年10月 発行)

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第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

カラマツの胚珠の発育と種子不稔性 (PDF,857KB) p.1~12
梶 勝次
カラマツの育種をすすめて行くうえで最も急がれているもののうちに,採種園での結実促進と交雑技術的進歩とがある。採種園からの種子の生産量は次第に増えつつあるが,当初計画された生産量までにはほど遠いのが現状である。そのため採種園での結実促進方法の開発と,種子稔性の向上とが期待されている。また交雑育種については主に耐兎耐鼠性を得られる点で,カラマツ類の生長増大を目的とした基礎および実用化の研究が以前から続けられてきた。
本報告は上記の目的でカラマツの育種をすすめて行くうえでの基礎資料を得て,さらに受粉から結実までの諸機構を明らかにして不稔種子ができる原因を探るため,すでに報告された多くの発生学的解明と比較し,後述の問題点の解明を試みたものである。
本研究を遂行するにあたり多大なるご指導を賜った京都大学四手井綱英教授,新潟大学船引洪三教授,京都家政短期大学渡辺光太郎教授,京都市立四条中学校教諭市河三次博士ならびに農林省林業試験場造林部遺伝育種第三研究室および種子研究室の各位に深く感謝の意を表す。

カラマツ林分における単木の直径生長量に及ぼす周囲密度の影響 (PDF,748KB) p.13~27
阿部信行
人工林における立木の生長は,生長経過とともに周囲密度の影響をうける。
筆者(1972,1973)は密度を隣接木までの距離として表示した場合に,単木の胸高直径生長量に与える影響をカラマツ林分について報告した。前報は,調査時の胸高直径1回かぎりの測定値による分析であった。そこで,本報では,カラマツ60年生高齢林分を対象に,過去の生長にさかのぼって,5年間隔の定期断面積生長量および各年時の直径生長量を求め,この生長量が時間の経過とともに,周囲密度によってどのように影響されるのか,また,その際の周囲密度の影響範囲および方位による影響を調べたので報告する。
用いた電子計算機はNEAC2200-500であり,計算に際し,種々の御便宜をおはかり頂いた道林務部太田馨主査に厚く御礼中し上げる。
なお,本報の一部は,第84回日本林学会大会および第22回日本林学会北海道支部大会で発表した。

名寄のシラカンバ林の現存量について (PDF,641KB) p.29~37
高橋幸男・浅井達弘・菊沢喜八郎
本州中部から北海道全土にわたって広く分布するシラカンバは,山火跡地の先駆樹で天然更新が良好であり,しかも初回生長の旺盛な樹種として知られている。シラカンバを主体とした二次林の多くは林種転換のために伐採されたり,そのまま放置されたりしている。こうした二次林を林種転換によらずに施業しようとするとき,どうしてもこれらの林の現存量や生産量などを把握しておく必要がある。そのために間伐,除伐などの撫育が全く行なわれていない二次林を選び林木および林床植生の現存量推定の調査を行なった。
調査は1965年8月に名寄林務署管内道有林において大阪市立大学小川房人氏の指導のもとに京都大学の斎藤秀樹・河原邦彦両氏および当場造林科・育種科・経営科職員ならびに名寄林務署員の参加・協力を得て行なわれた。ここに指導ならびに協力を得た関係各位に深く感謝の意を表する。

クルミの人工交配による殻果の変異について (PDF,621KB) p.39~44
開本孝昭・中内武五朗・斎藤 晶
クリについては,従来から各品種間の交配によって当年生産される堅果に現れる変異性の実験例は多くある(梶浦1936,大崎・佐宗1942,中原1964,新津1936,大畑・佐藤1961 など)。しかし,クルミについてはこれ等の報告が殆ど見られない。クルミは一般に雌雄異熟現象が認められ,特にこの現象が顕著な品種系統においては,授粉樹(Pollinizer)の選択が問題となる。クルミの花(写真-1)は相互授精を行うため,道内に自生するオニクルミ(Juglans Sieboldiana MAX.)の花粉でも当然交配する。もしこれを授粉樹として用いた場合,殻果にオニクルミの影響が現れるとすれば,それはカシクルミ(Juglans regia L.)の商品価値にも影響するため,花粉の飛散範囲にあるオニクルミは淘汰されなければならない。しかし,それほど影響を受けないとすれば授粉樹として期待されてもよい。
そこで筆者らは,クルミの交配技術の開発と異品種間の交配によって当年生産される殻果の形態上,および果仁にどのような変異が現れるかを調査し,今後の交雑育種の足がかりとする目的でこの試験を行った。この調査は個体数が少ないので性急な結論づけはできないが,予報的な形で報告する。

安山岩山地の土壌分析値の変動 (PDF,1.65MB) p.45~50
杉浦 勲
薄井・杉浦(1970)は,先白堊紀粘板岩を母材とする山地で,小面積林地内の土壌分析値の変動について報告したが,今回はさきのものより土壌が安定し,変動も少ないと考えられる安山岩山地で調査,分析をこころみた。この場合,現地土壌がより安定していることから,変動というよりは採取技術および分析技術に由来する誤差成分が大きくなると思われる。
また,今回は土壌生成にともなう深度による土壌分析値の変動についても調査したので,先白堊紀山地の上壌と比較しながら報告する。

後志,桧山および石狩地方における防災林造成法の研究 (PDF,2.05MB) p.51~76
伊藤重右ヱ門・今 純一・新村義昭・斎藤新一郎
北海道における防災林造成技術のための地帯別区分(伊藤・斎藤1971)から,後志および石狩地方は日本海岸中部に位置し,桧山地方は日本海岸南部に位置する。日本海岸中部ではイタチハギ,ニセアカシヤ,カシワ,トドマツなどが適樹として考えられ,また日本海岸南部では本州から導入されたクロマツによる海岸砂防技術が成功した例があるため,クロマツを多く採用してきた。しかし,これらの地方においても他の地方とおなじように,防災林造成法の確立がまだなされていない。これまでの海岸林造成は,その歴史も浅いことから,試行錯誤し,失敗をひとつの実験として,その中から造成技術を改善することが計られた。それゆえ,造成法の研究は既往造成地の成績調査を重要視した。しかし,過去の造成地は一般造林用として育苗された中から樹種が選定されたために,耐寒性があっても耐塩性におとる外国産マツ類が海岸林に植栽されたりした。ここでとり上げる地方においても,天然生林の調査結果から郷土樹種の使用を強調されながら(掛下 1951),育苗法が解決されないこともあって,それまで経験しない樹種の採用は試験の域を出なかった。筆者らはこれまでの成績調査にくわえて,海岸に分布する天然生林の成立現況を数多く調査した結果,その地域の環境にもっとも適して生育を続ける郷土樹種の価値がみなおされてきた。そして海岸林の主要構成樹種の大半を占める広葉樹の育苗技術が開発され,海岸林の造成位置,林帯幅,適用樹種とその植栽などの林帯造成法が明らかにされてきた(東 1967,1971,伊藤 1968,1969,斎藤 1968,伊藤・今 1970,伊藤・斎藤 1971,伊藤・斎藤・今 1973,原口 1973,今・伊藤 1974)。微気候と土壌条件などの十分な環境改善と豊富な適用樹林をもつことによって,より安全に防災林造成がなされるはずである(東 1967,1971,川村 1967,伊藤 1968)。
この報文は,北海道における防災林造成法に関する研究の第3報であり,宗谷,留萌地方の1,2報(斎藤・伊藤 1971,斎藤・伊藤・原口 1972)に続くものである。なお,この研究の一部は第13回治山研究発表会(伊藤・今・新村 1973),昭和49年度北海道林業技術研究発表会(今・伊藤・新村 1974)で発表された。


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