北海道林業試験場報告-第14号-

(昭和51年12月 発行)

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第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

緑地に対する札幌市民の意識(PDF,1.45MB) p.1~15
前崎武人
近時における都市化の進展や産業活動の活発化等は,環境問題をクローズアップさせるとともに,都市住民の環境緑化への関心を高めてきている。このことは,昭和46年に東京都が実施した「自然と環境に対する世論調査」において,「緑」に対する希望が「空気」,「日光」をおさえて第1位にランクされている(高原 1974),ということからも,その一端がうかがえよう。
こうした要請に対応した環境緑化の推進にあたっては,どの程度の緑地を確保すればよいかという量的な目標値を設定することも1つの重要な課題といえよう。この問題については,ワグネル(1915)の研究以来,さまざまな提案がなされている。これらのなかで,日本写真測量学会杉並区緑化基本調査委員会(1973)は,区全体の緑被率の目標値の設定方法として考えられるいくつかの方法を比較検討した結果から,現状では,科学的客観性に多少欠ける点はあっても,「住民の意向を斟酌し,妥当と思われる値を設定する。」という方法に頼らざるをえないとしている。また,こうした地域住民の緑地に対する意向の把握は,竹中(1972)らが指摘するように,環境の緑化を推進するうえからも重要なことといえよう。
一方,こうした環境問題の増大に呼応して,森林に対する期待も大きな転換を余儀なくされてきている。森林が人間生活に有効に作用するさまざまな種類の効用をもっていることは,古くから認識され,明治30年に公布された第1次森林法では,保安林制度がその重点の1つをなしていた(島田 1956)。しかし,こうした森林の公益的機能が,一般市民のあいだにどの程度理解されているかの把握については,必ずしも十分ではないように考えられる。
このようなことから,筆者は,札幌市の一部を対象にして,都市住民は現存する緑についてどの程度認識しているか,その緑で満足しているか,将来どんな緑をほしいと考えているか,また都市住民はどの程度の距離のところにあるどのような種類の緑地を身近な緑と感ずるか,さらに都市住民は森林のもつさまざまな機能のうち,どの機能に対してもっとも期待をよせているかということについての意識調査を行った。ここにその概要を報告する。
なお,この調査は,昭和49年度において,北海道生活環境部から依頼された「生活環境における緑地機能の実証的調査研究」の一環として行ったものである。
また,調査の実施にあたり,札幌市役所からは航空写真を借用する便宜を与えていただいた。ここに厚くお礼を申しあげる。

広葉樹幼齢林の林分構造と生長量(PDF,885KB) p.17~26
菊沢喜八郎
北海道の広葉樹二次林の多くは山火後に再生したものであると考えられている。それらについては現在までに,カンバ類を主とする数林分での現存量調査についての報告があるが,まだその実態が十分に把握されているとは言い難い。特に,林木の枯死・生長・再生等を含む林分の動態は,一回の現存量調査では把握され得ないためにまだよく知られていない状態にある。
この研究は山火後に一斉に再生したと考えられる広葉樹幼齢林に固定試験地を設定して反覆調査を行なったものである。試験林の林分構造・現存量・生長量について報告する。

トドマツ人工林の施業法に関する研究(1)
-疎開木の相対生長-
(PDF,327KB)
p.27~36
阿部信行
北海道における森林は,開拓使時代には無価値であったばかりでなく,むしろ開拓の邪魔物あつかいをされてきた。しかし,1886年,北海道庁が設立された頃になると,原始蓄積を終えた本州資本が北海道に進出し,木材市場が形成され,産業資本は採取林業に進出したとされている(小関 1962)。当時,無尽蔵にあると思われた森林も,採取が進むと,たちまち商品としての木材が欠乏し,価格が高騰するようになった。そこで,明治末期頃より国有林,民有林とも伐採跡地,山火跡地などに造林が実行され始めた。造林当初はニホンカラマツの養苗が成功したことと,生長が速いことからニホンカラマツが国有林,民有林とも造林された(松井 1965)。大正末期から昭和初期にかけて,国有林,道有林を中心に郷土樹種の見なおしが指摘され,当時やっと養苗法が確立されたトドマツが順次造林されるようになった(松井 1965)。昭和年代になると,国有林,道有林ともトドマツが最主要造林樹種となり,カラマツを大きくしのいだ。この傾向は,昭和30年に国有林で経営合理化方針が打ち出され,33年に実行された頃からより顕著である。
一方,民有林においても,カラマツ材の需要構造が最近になって大きく変化し,従来の短伐期による小径木の利用が減少してきた。また,昭和35年頃から,先枯病の蔓延,野鼠害の増加などがあり,造林傾向も変化をきたし,昭和49年度の造林面積では,トドマツがカラマツを抜いて首位に立っている(北海道林業統計 1974)。このように,トドマツは郷土樹種ということで,国,道有林では最主要造林樹種として取り扱われ,民有林でもトドマツ造林の比率は年々高まっている。
以上のように,トドマツはカラマツとともに本道を代表する造林樹種である。しかしながら,第2次大戦前に造林されたトドマツは戦時中の人手不足のため,不成績造林に終るものも多く,齢級構成では昭和33年の経営合理化が実行された以降に造林された5齢級以下の若い林分が圧倒的に多い(阿部 1976)。一斉拡大造林の種々の弊害が指摘されているが,現状は問戊適期に入った林分が多く,今後どう取り扱っていくのか大きな問題をかかえている。
本研究は,以上述べたように,若い林分が非常に多いトドマツ人工林に対し,その立地条件をあきらかにし,それに適合した施業体系を確立することを目的として着手したものである。林業経営において経営に相当するものは作業法とされている。作業法の分類は必ずしも明確ではないが,井上(1974)によれば,作業法を大別する要素は①林木の更新的性質②生産目的とされており,これを細分する要素として⑧伐採方法④更新方法があげられる。また作業法を説明するものとしては⑤樹種⑥伐期齢⑦林分構成などがある。作業法を分類するためには,経営目的に応じた森林の育て方および更新法を含めた取り扱い方が必要なわけである。そこで,経営計画を立てる上で不可欠な将来の材積の予測,つまり,作業法別の生長予測を立地区分に応じて行なうことにより,各地域に立脚した施業計画が立てられることになる。本研究の発展としては,このように作業法別生長予測の値を基に,自然的立地条件に応じた地域別の施業法の探究を目指すものである。第1報として,トドマツ人工林の生長予測を行なう時の基礎事項となる疎開木の相対生長関係について調べたので報告する。
カラマツの生長予測は,当場の小林経営科長が現在取りまとめ中であり,トドマツの生長予測に関しても,理論的根拠は同科長の指導によるものである。また,GOMPERTZ曲線の計算はプログラム・ライブラリー(北海道,1972)に登録されている同科長のものを利用させて頂いた。記して感謝する次第である。調査に御協力を頂いた道有林第二課試験係および北見,雄武,池田各林務署の各位に深く感謝の意を表する。

北海道における農民による林地経営形成(PDF,48KB) p.37~47
柳生 修
わが国の林業生産の現状は,木材供給の60%以上を外材が占める一方,自然保護の論調による開発の規制等を主たる要因として,停滞を余儀なくされている。北海道においても国有林の減伐方針や,全道的な造林の滅少傾向がみられる。
北海道の林野所有の構造は国,道有林等の国家的所有が支配的で,全国的な傾向とは異なる。しかし,179万haの民有林が存在し,59万haがカラマツを中心とする造林地となっており,今後の林業生産に関与する重要な一部分をになっている。
ここでは民有林のなかで,最もまとまった部分として農民による所有をとりあげ,造林進展の現段階を,林地経営形成の過程を中心として考察した。

利尻島における天然生海岸林の群落的研究 (PDF,6.32MB) p.49~60
斎藤新一郎
海岸林の造成技術に関する研究は,北海道立林業試験場道北支場の主要テーマの1つであり,1970年から継続されている。筆者はこれまでに,北海道北都に存在する天然生海岸林の現況を調査し,それらの成立条件を検討して,その成果を林帯造成方法に適用してきた(斎藤1968,斎藤・伊藤1971,斎藤・菓1971,斎藤・伊藤・原日1972)。本稿はこうした一連の海岸林調査報苔の1つである。
北海道本島北部の天然生海岸林と比較して,利尻島のそれらは多くの点で著しく違うことが,1973年の踏査で明らかとなった。そこで,1974年9月に,この島の天然生海岸林を,林分構成,風衝状態,成立条件,今後の推移,地質・土質との関係,その他の観点から調査・検討した。
この成果は,この島の屋敷林の現況(斎藤ほか1974a)および防風林造成事業の経過(東海林ほか1967)と併せて,この島を含む道北地方の林帯造成,一般造林,環境緑化木の植栽,および天然生海岸林の健全な維持に関する基礎資料の1つを提供するであろう。
なお,本稿の一部を日本林学会北海道支部大会(1974年10月)で発表した(斎藤・小原・豊田1974b)。

十勝,日高地方における防災林造成法の研究 (PDF,1.02MB) p.61~76
伊藤重右ヱ門・新村義昭
この報文は,北海道における防災林造成法に関する研究の第5報であり,現地調査は,太平洋岸に位置する十勝,日高地方の民有林および国有林の中からえらんだ林分を対象として,1975年に行われた。
この研究のまとめに当り,北海道治山課をはじめ現地調査を支援された十勝支庁林務課の前田吉彦Sp,中野茂雄森林管理係長(現胆振支庁),小沢義昭技師,日高支庁林務課の宗像茂寿森林管理係長(現上川支庁),米沢喜代志技師,浦河営林署えりも治山事業所の石川隆主任および当場開本孝昭研究員の各位に深く謝意を表する。

治山用広葉樹苗の育成法の研究-実生法による各樹種の苗木の特徴- (PDF,540KB) p.77~85
新村義昭・伊藤重右ヱ門
この報文は,北海道における治山用広葉樹苗の育成法に関する研究である。すなわち,筆者等がこれまでに行ってきている天然生海岸林の現況調査,海岸防災林造成地での成績調査,試験植栽および山腹植生工での木本導入試験などの一連の調査,研究を通じて,治山用樹種としての価値が認識されてきた郷土樹種の中から14樹種と,代表的な外来樹種であるイタチハギ,ニセアカシアの計16樹種について,実生法による育苗結果から得られた各樹種の特性を考察した。なお育苗は美唄市光珠内の北海道立林業試験場の苗畑で行った。


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