北海道林業試験場報告-第17号-

(昭和54年10月 発行)

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広葉樹二次林の林分構造と生長量(1)
-道有林岩見沢経営区の例-
(PDF,489KB)
p.1~11
菊沢喜八郎・浅井達弘・福地 稔・水谷栄一
北海道にはシラカンバなどを主とする山火事跡の再生林や,ミズナラなどを主とする萌芽再生林など,広い面積にわたる広葉樹二次林がある。広葉樹林,とくにミズナラを主とするような林分は,樹種内容も豊富で多様な用途に応え得る能力を有しているものと考えられる。しかしながら用材生産の面にかぎっていえば,これら広葉樹林の多くは,従来は低質広葉樹林として林種転換の対象とされてきたのが実情である。近年,北海道の特産材であった優良広葉樹の大径材資源が枯渇するとともに,このような二次林を見直し保育を行い優良大径材を生産しようとする機運が高まってきた。広葉樹林の特性である多様性を活かしながら用材生産を行い得るならばこれは森林保護の面からもきわめて安定した有意義な事業であると考えられる。ただこの場合に,樹種内容が多様で林分構造の複雑な広葉樹林に対して,従来の針葉樹一斉林で開発された技術をそのまま適用できるかどうかはいささか疑問である。多様性を活かした技術の開発が望まれるわけだが,そのためには,広葉樹林の林分構造を正しく分析し,生長・枯損等の林分の動態についての資料を蓄積する必要がある。
著者らは以上のような見地から,道内数か所の広葉樹二次林において試験地を設定し林分構造の分析と生長量の測定を行っている。この報告はその一環であり,道有林岩見沢経営区において1974年以来行ってきた林分構造の分析と生長量の測定の結果と,1978年に行った保育試験の概要を述べる。
調査に際しては,岩見沢林務署および道有林試験係の方々の御助力を得た。ここに記して感謝の意を表する。

トドマツ人工林の天然下種更新(1)
-4年間の稚苗消長について-
(PDF,279KB)
p.13~22
水井憲雄・菊沢喜八郎・浅井達弘
トドマツ人工林の高齢化にともなって次代の林分造成方法が問題とされている。主伐時における皆伐一再造林は,気象条件などからみて多くの危険が予想される。できる限り現存林分を活用した方法が望ましい。その方法を天然下種更新にもとめるならば,主伐時までに十分な後継樹を確保する必要がある。そのためには,間伐を実施する時点から更新を促す配慮が必要であり,さらに発生した稚苗をたくみに育てなければならない。
トドマツ天然生林の更新については多くの事が調べられてきた(柳沢 1971)。人工林を取扱った報告では,山本ら(1968)が根室市別当賀の稚苗発生良好な49年生人工林において,林内照度の調節と稚苗消長を調べ人工林から天然林への誘導を試みた。さらに,高橋ら(1976)は同じ林分において8年間の稚苗消長を調べ,林内更新のための施業体係を検討した。甲斐(1970)は名寄林務署管内の40年生林分において,間伐後の稚苗の消長や林内照度の変化にともなう稚苗伸長量を調べた。これらの報告では,いずれも稚苗の消失率が高く,林内照度の減衰にともない稚苗伸長量が低下することを指摘している。また,札幌・帯広両営林局管内においても人工林から天然林への誘導が検討されている(1977,1972)。しかしながら,人工林は歴史が浅いため,種子の結実から稚苗の生長にいたる天然下種更新の一連の過程に不明な点が多い。
筆者らは,トドマツ人工林の更新方法を確立するため,1974年から固定調査地を設定し,天然下種更新の初期段階の問題について調査を進めてきた。ここでは,4年間の稚苗消長経過について報告する。なお,この報告の一部は,すでに日林北支講(水井ら 1976,菊沢ら 1978),日林論(菊沢ら 1977)に報告した。
試験地設定などにご協力をいただいた道有林業務課試験係,同岩見沢林務署の各位に厚くお礼申しあげる。

カラマツ林分化にともなう土壌の変化 (PDF,592KB) p.23~37
山根玄一・薄井五郎・菊地 健
かつて長野県下ではカラマツ2代目造林は不成績であるといわれたことがある(長野県 1978)が,現在このような懸念は地元では強くない(長野県 1978)。また北海道においても現在までとくに不成績であるとの報告はない(広谷ら 1972,原田 1974)。しかし道内においては,カラマツ2代目造林についての不安感がいまなお一部に残っている。
著者らは,カラマツ林の成立により土壌がどの程度の時間でどの程度変化するものか知りたいと考え,広葉樹林の土壌と対照しながら調査した。このことに関連して山本(1975)の報告がある。
植被が土壌に及ぼす影響には理化学的性質に対するもののほか,森林生態系内の物質循環の一部としての養分状態の変化,微生物相・小動物相の変化,植物生育上の有害物質の生成など種々の影響が考えられる。本調査はカラマツ林の成立が土壌の理化学的性質や養分分布に及ぼす影響の一部について検討したものである。
この調査の計画にあなり有益なご助言をいただいた農林水産省林業試験場河田弘土壌部長,ならびに調査地選定に協力いただいた名寄,帯広両地区林業指導事務所の方々に謝意を表する。

カラマツ採種園自然交配種家系の苗畑および植栽当年の生長 (PDF,415KB) p.39~50
梶 勝次・畠山末吉・石倉信介
林木育種事業の進展にともない,本道の主要造林樹種であるカラマツ,トドマツの採種園造成がほぼ終了し,将来の造林事業は,これら採種園から生産された遺伝的に優良なタネによってすべてがまかなわれる予定である。しかし,採種園から生産された苗木の生長についての報告は少なく,また採種園を構成する精英樹それぞれの特性も,現在次代検定林で検定が続けられている。
この報告は,カラマツ精英樹のいろいろな遺伝情報を得る目的で造成された次代検定林の調査結果の一部である。なおカラマツの次代検定は,つぎの2つの方法により継続的におこなわれている。
1).クローン相互の人工交配種による検定
2).採種園自然交配種によるクローン別検定
本報は,採種園自然交配種による次代検定林の調査結果の第一報で,各精英樹次代家系それぞれの苗畑時代および植栽後1年目までの生長結果をとりまとめ,さらに採種園産(育種種苗)と一般種苗(採種園以外の母樹林,採種林産など)の初期生長を比較した。
なお,本報をとりまとめるにあたり,これまで現地でいろいろお世話をいただいた岩見沢,滝川,浦河,北見および池田各林務署の関係各位ならびに道有林管理室業務課種苗係の各位に深く感謝の意を表する。

稚内市清浜におけるトドマツ天然性林の群落学的研究 (PDF,1.36MB) p.51~62
斉藤新一郎・水井憲雄
道北地域における海岸林の造成技術に関する研究に関して,筆者らは北海道北部に存在する天然生海岸林の現況を調査し,それらの成立条件を検討して,その成果を林帯造成方法に適用してきた(斎藤 1968,斎藤・伊藤 1971,斎藤・東 1971,斎藤 1976a)。本稿はこうした一連の調査報告のひとつであり,海岸林の成立条件のほかに,その更新についても検討してみた。
本稿の森林は,北海道最北端の海岸林であり,地形,人間の干渉,更新などの諸点が周辺の海岸林とかなり違っている。それで,林分構成,風衝状態,成立条件,林内更新,今後の推移などの観点から,1974年と1977年に調査し,検討した。
なお,本稿の一部を日本林学会北海道支部大会(1977年11月,斎藤・水井・小原 1977)および北海道林務部研究発表大会(1978年2月,水井・斎藤 1978)において発表した。

MSSデータによる有珠山噴火被害森林の判別 (PDF,708KB) p.63~79
前崎武人・鈴木 煕
1977年8月7日から14日にかけておこった有珠山の噴火は,周辺の地域に多量の火山灰を降下させて多大の被害を与えだが,森林に対しても,面積9千ha,金額130億円にのぼる被害(有珠山噴火災害対策胆振地方本部1978)をおよぼした。リモートセンシング・データは,このような広域にわたる被害の解析手段としてはきわめて利用価値が高く,すでに日本造船振興財団(1978)による被害地の分布状態や地表面温度の分布状態のは握,高畑ら(1978),福原ら(1978)および深山ら(1978)による農業被害調査,小木ら(1978)による噴出堆積物の流出危険地の判別などの成果が報告されている。
筆者らは,航空機からのマルチスペクトルスキャナ(MSSと略称される)データをもちいて,有珠山地域の森林の被害パタンの判別および降灰による森林のスペクトルの変化状態の解析を行った。ここに,それらの概要を報告する。

旭岳西斜面における樹木の分布相関 (PDF,848KB) p.81~87
嘉戸昭夫・前崎武人・鈴木悌司
勇駒別地域の亜高山帯森林は,大雪山系旭岳の西斜面に位置し,国立公園や水源かん養保安林などに指定されており,木材生産だけではなく,いわゆる公益的機能を発揮させることも要請されている。
筆者らは,この地域の森林施業に関する基礎資料を得る目的で,天然林の現況について調査をすすめている。これまでに,樹木の垂直分布や林分内における樹木の分布様式などについて報告した(鈴木ら1977,嘉戸ら1979)。今回は,樹木の分布相関について解析を試みた。
樹木の分布を決定する主要因子として,マクロには標高,地形,土壌などが,ミクロには繁殖様式,種内および種間競争などがあげられる。本報告では,この地域を標高によって区分し,各標高帯ごとに樹種間の分布上の関係について検討し,ついで標高間の比較をした。
報告にあたり,調査に御協力いただいた旭川林務署の各位に感謝を申しあげる。

ポットを利用した治山用広葉樹の育苗法と植栽試験 (PDF,1.61MB) p.89~105
新村義昭・伊藤重右ヱ門・成田俊司
ポット苗の特徴の一つに,植栽時期を選ばないということがあげられる。このことから,単年度事業でコンクリート工事と植栽工を実行しなければならない治山事業には,ポット苗の植栽が最も適合した工法になりうると考えた。しかしながら,ポット苗の育苗法や植栽試験は,北海道においては,経済林用の針葉樹でみられただけで(伊藤 1968,鎌田 1969),治山事業で用いるための,いわゆる治山用広葉樹の育苗法や植栽試験の一貫した研究はなかった。ここでは,じかまき法による育苗を中心としたジフィーポット苗の育苗法と,得られたポット苗を用いた植栽試験の結果を報告する。なお,育苗試験は1973年から,植栽試験は1974年からそれぞれ開始した。
本研究を進めるに当り,試験地の設定に快く協力された関係治山係の各位に深く謝意を表する。


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