北海道林業試験場報告-第18号-

(昭和55年10月 発行)

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トドマツ花粉の採集,貯蔵および発芽検定に関する研究 (PDF,699KB) p.1~9
梶 勝次
トドマツ(Abies sachalinensis)の遺伝的なふるまいを解明するなかで,人工交配をおこなう機会がおおい。しかし,トドマツは産地および個体により開花時期がいちじるしくことなるため,人工交配を効率的にすすめるには,花粉を一定期間発芽能力を失わないように採集,貯蔵しなければならない。ところが,トドマツ花粉のとり扱いに関する報告はきわめて少なく,貯蔵方法や発芽検定があいまいな形でおこなわれてきた。
花粉のとり扱いは樹種により多少のちがいが認められるが,針葉樹花粉の発芽検定法および寿命に関するこれまでの報告を要約すると,花粉は自然状態で放置するときわめて短期間のうちに発芽能力を失う。しかし,貯蔵条件が適切であればかなりの長期間発芽能力を保持でき(市河ら,1971,1973),花粉の寿命は花粉粒を採集するときの相対湿度,花粉含水率ならびに貯蔵温度などと深い関係があることがすでに明らかにされ(DUFFIELD et.al.,1941;LANNER,1962),一般に低温下,気密な容器での貯蔵,低含水率花粉は生存期間がいちじるしく長くなる(武藤ら,1962;梶ら,1972)。一方,発芽検定方法は樹種により検定の温度ならびに培地の糖の濃度がことなる。
本稿は,トドマツ花粉のとり扱いに関する基礎資料を得るため,花粉の発芽能力を検定する方法を明らかにし(実験1),その結果をもちいて,いろいろな含水率をもった花粉を,貯蔵温度をかえてそれぞれ1年間貯蔵した場合の発芽能力の変化を調べ(実験2),花粉含水率と寿命との関係を中心に花粉の採集方法,貯蔵方法および検定方法についてとりまとめた。
この研究をはじめるにあたり,山梨県立女子短期大学市河三次博士および北海道立林業試験場久保田泰則副場長には終始ご指導を賜った。また,当場育種科の各位には実験にさいし助言と協力をいただいた。本稿をとりまとめるにあたり上記の各位に幸甚な謝意を表す。

トドマツ人工林の天然下種更新(2)
-林内更新のための施業指針-
(PDF,1.14MB)
p.11~23
菊沢喜八郎・福地 稔・水谷栄一・浅井達弘
北海道のトドマツ人工林には,これから主伐にかかろうとする50年生前後のものがかなりある。主伐時における皆伐-再造林は,気象条件からみてもきわめて不利な場合が多く,現存林分の有効な活用が望ましい。林内に天然に発生した稚苗をたくみに育て,更新を完了させることができれば,それは最も望ましい技術のひとつといえる。
しかし林内更新法には困難な問題が山積している。たしかに,林床に緑のカーペットをしきつめたように稚苗が発生している箇所はある。しかしそのような箇所も数年後には期待に反して稚苗が消失してしまっていたり,少しも伸長せずにもとのままであったりする。後者は稚苗が生長しなかったのか,それとも以前のものは消失してまた新たに発生した稚苗によってみかけ上はもとのままなのかも,実はよくわからない。おおかた林内が暗いために稚苗が伸びなやんでいるのだろうと考えて,上層木を間伐して光が入るようにしてやると,急激な疎開のため,乾燥によって稚苗が枯死したり,ササや雑草の侵入をまねいたりする。また,稚苗の発生の少ない箇所は,種子の結実が悪いためなのか,発芽床に問題があるのか,発生しても消失してしまうことによるのか,といったことも明らかでない。
以上のように課題は多いが,これらを解決し林内更新を技術として確立するためには,基礎的な事実に関する情報をまず集積する必要がある。このために私達は二つの方法をとっている。ひとつは,1箇所の試験地において,種子の結実・落下から発芽・生長・消失の過程を息長く追跡調査することである。すなわち,トドマツ稚樹個体群の動態とそれに関与する要因を解明することである。このような基礎的過程の解明をぬきにしては,断片的な知識をいかに集積しても,その体系化は困難であると思われる。したがってこれは,いわば全体の骨格をなす基礎的な方法である。私達は道有林岩見沢経営区(三笠市)に試験地を設定して継続調査を行い,その成果の一部は既に報告している(水井ら,1979)。しかしこの方法は,全過程を解明するのに長期間を要することや,一林分での過程を他の林分に無条件に適用できるかどうかについて問題がないわけではない。そこで第二の方法として,様々な林分において実態調査を行い,更新の良い場所,悪い場所をみきわめ,それらがどのような条件によるものかを考察した。この両者を組み合わせることによって,林内更新を一つの技術として確立,体系化することができるものと思われる。
この論文は,1978年度に行った各地のトドマツ人工林の実態調査の結果をまとめるとともに,先に報告した継続調査の結果をも合わせて,林内更新法のひとつの技術指針を作成したものである。
本論に入るに先立ち,ご協力を得た国有林芦別営林署,王子緑化K.K. ,道有林試験係および苫小牧,滝川,北見,名寄,岩見沢各林務署の各位に感謝する。

浦幌地方の天然生針広混交林の林分構造と生長量 (PDF,1.68MB) p.25~41
浅井達弘・菊沢喜八郎・福地 稔・水谷栄一
木材需要の増加とこれに対応した林道網の整備にともない,利用林分の奥地化が進んでいる。これらの林分はその地利級の悪さから,これまで優良木の単木的な択伐がなされただけで放置されてきた林分である。そのために北海道の代表的な林相である針広混交林が比較的原生的な姿のまま残されているものも多い。これらの針広混交林はつい近年までは,中部北海道の全域にわたって,その極盛相として安定して存在し続けてきたとみられている。樹種内容が変化に富み,気象害や病虫害に対しても抵抗力のあるこれらの森林は北海道の開発のため伐りひらかれて,現在では数少ない木材供給源として,また自然景観としても貴重な存在となってきている。
現在,こうした針広混交林が施業の対象となり実際に伐採が進んでいるがその施業方法はまったくの模索の状態にあるといえる。この原因として,人工林と違い樹種,樹齢,立木密度,径級などが立地条件等によっていちじるしく異なり,林分構造を複雑多岐なものにしていることがあげられる。したがってこれらの森林の林分構造やその動態を把握し,これをもとに天然の力を十分に活用した施業指針を早急に作製することが要請されている。
筆者らはこの課題を解決するために道有林管理室と共同して浦幌経営区の森林を対象に1974年以降,研究を進めてきた。具体的には,まずこの森林を幾つかのタイプに類型化する作業を行った。そして類型化された林相ごとに固定試験地を設定し,林分構造の分析と生長量・枯損量などの測定を行ってきた。試験地の一つについては伐採を行い,その後の生長経過を追跡してきた。
この報告では,まず地形と構成樹種による森林の林相区分について述べ,つぎにこの区分にもとづいて設定された四つの固定試験地の林分構造とその動態の分析結果を報告し,つづいて98林班で実行した伐採の方法とその後の生長経過について報告する。最後にこれらのまとめとして林相別に基本的な施業への指針について考察する。
本論に入るに先立ち試験地の設定に便宜をはかられ,終始調査にご協力くださった杉本昌三氏(現胆振支庁)をはじめとする旧道有林第二課試験係の方々,中村利勝氏(現興部林務署)をはじめとする浦幌林務署の方々に感謝の意を表する。また道立林業試験場からは水井憲雄,斎藤満,嘉戸昭夫,開本孝昭(現林務部林業振興課),北条貞夫(現林務部道有林管理室業務課)の諸氏が調査に参加された。以上の方々に感謝の意を表する。

勇駒別地域の亜高山帯林における樹木の分布相関 (PDF,1.28MB) p.43~53
嘉戸昭夫・鈴木悌司
勇駒別地域の亜高山帯森林は,大雪山国立公園に属し,保健休養や国士保全などの面からも重要視されている。しかしながら,この地域は寒冷多雪といった厳しい気象条件下にあるために後継樹の育成が思うにまかせないのが実情である。このような地域の施業技術を確立するには,天然林の現況を把握し,森林の動態などについての資料を蓄積する必要がある。
近年,北海道の天然林の林分構造を樹木の空間分布などの面から解析し,森林の成立過程や法則性をとらえようとする試みが数多くなされている。代表的なものとして,太田ら(1969,1973),菊沢ら(1974,1979),酒井ら(1979)の報告があげられよう。
著者らは,この地域内に50m×50mのプロットを数ヵ所設け,プロット内における各樹種の分布様式(1979 a)や,各プロットを単位とした標高,地形などの変化にともなう各樹種間の分布相関(1979b)について検討した。しかし,森林の成立過程などを推測するためには,さらに群落内における各樹種相互の分布関係や母樹と更新木との分布関係などの面からも検討する必要があろう。
この報告は各プロット内における樹種間の分布相関について検討したものである。
なお,この調査に際して旭川林務署造林課の御協力を得た。また北海道立林業試験場からは,前崎武人(現林務部造林課),鈴木煕の諸氏が調査に参加した。以上の方々に厚くお礼を申しあげる。

カラマツ人工林の間伐試験(1)
-5年間の林分構造の推移と林分生長量-
(PDF,1.11MB)
p.55~70
阿部信行・佐々木信悦
従来の間伐は樹型級に基礎をおいた定性間伐が主であった。これは選木が困難であることや,間伐量を予め決定できない等の難点があるために,坂口(1961)は定量的間伐を提唱している。その後,この定量的な間伐は只木ら(1961)により発展させられ,競争密度効果を基礎とした生態学的立場から研究されている。
経営面からみると,実際の間伐は森林所有者が経営意識を持つことによりはじめて実行されるものであり,間伐方法は森林所有者の経営事情に大きく左右される場合が多い。また,実際の施業では経営的な側面から規定された間伐方法が,その後の林分構造や生長量などの生態的側面とどのように関係するのかが重要なポイントとなる。したがって,経営学的観点からの間伐の研究においては,これら量側面の構造的な解明に焦点をあてる必要がある。
こうした観点から,1971年新得町有林内に経営タイプ別に間伐試験林を設定した。この試験の目的は森林所有者を経営形態により4種の経営タイプに分け,それぞれの経営方針に応じた間伐方法を想定し,間伐後の林分構造および生長量の推移を検討して有利な施業条件を探求しようとするものである。ここでは試験林設定後5年間の推移について報告する。分析の方法は,従来の間伐試験のように平均値間の比較に終わることなく,林分構造の推移を具体的に表示することにつとめた。なぜなら,林業経営では平均値として表示される材を収穫するのではなく,生産目標にみあった材を収穫するわけである。そして間伐の目的は,このような生産目標を達成するために行うことにある。間伐により目標がいかに達成されるか─間伐効果─に関してはすべて解明されているわけではなく,この点を明らかにするには林分構造の推移を表示した間伐試験の多くの実行例のつみ重ねが大切であるといえよう。
こうした点に関しては,菊沢(1980)の間伐効果に関する問題提起に負うところが大きい。
試験地の提供から間伐実行および試験地の管理に関しては新得町に多大のご協力を得ている。新得町ならびに数々の御助言をいただいた菊沢喜八郎氏に深く感謝する次第である。

トドマツ人工林の施業法に関する研究(2)
-道有林におけるトドマツ人工林の収穫予想表の作成-
(PDF,1.17MB)
p.71~93
阿部信行
本研究は作業法別生長予測の値を基に,自然的立地条件に応じた地域別の施業方法の探求を目指して着手したものである。前報(阿部,1976)では,生長予測を行う時の基礎事項となる疎開木の相対生長関係について報告した。
従来の収穫予想は,収穫表,密度管理図共,平均直径の記載しかない。しかし,実際の林業経営を考えると,平均直径の表示だけでは不十分であり,生産目標を立てる場合,径級別本数の予測はさけられないといえる。西沢ら(1977b)は確率密度関数としてワイブル(Weibull)分布を用いて短期間の直径階別本数を推定している。ワイブル分布は林分の平均直径および変動係数が推定できれば簡単な計算で直径階別本数を求めることができ,現場でも十分活用できる利点があると考えられる。
一方,平均直径の予測は,既に樹高対直径の相対生長モデルがカラマツについて提示されている(小林,1978)。そこで,本研究ではまずトドマツ人工林を対象に,相対生長モデルを適用するための基礎的条件について検討を加えた。その結果,十分に適用できることが確められたので,道有林のトドマツ人工林を対象に,相対生長モデルと確率密度関数を利用して直径階別本数を表示した収穫予想表を作成したので結果を報告する。
相対生長モデルは新潟大学農学部小林正吾助教授のご指導によった。また,直径階別本数の予測では,この方面で先駆的研究を行っている九州大学農学部西沢正久教授にワイブル分布の理論面のご指導を頂き,分布のあてはめに際しては,九州大学農学部山崎英祐氏のプログラム(TI 58用)を借用させて頂いた。
こうした方々に心から感謝申し上げる次第である。また,調査,資料の収集にご協力頂いた道有林管理室業務課の各位に深く感謝の意を表する。


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