北海道林業試験場報告-第21号-

(昭和58年12月 発行)

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第15号別刊
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第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

林分の緊密度とそれを応用した収量-密度図の改良- (PDF,1.07MB) p.1~7
菊沢喜八郎
天然生広葉樹林を対象にして,保育間伐を行おうとするときは,先に提示した収量-密度図(菊沢,1978,1982)を利用することができる。これは各林分において,大きな木から積算した積算材積Yと積算本数Nとの関係をY-N曲線としてしめし,各Y-N曲線上の等しい直径をしめす点や,等しい平均直径をしめす点を結んだものであるから,それぞれの林分において,林分全体の本数・材積のみならず,各直径階についての本数・材積をも知ることができるのである。
ところで,現実の林分を対象にして,保育間伐に着手するかどうかを決定するためには,その林の゛混みあいかた″を判定する必要がある。人工林であれば,゛混みあいかた″は本数密度,あるいは林分材積レベルに応じた本数密度で判定される。しかし天然生林の場合,本数密度のみでは十分ではない。なぜなら天然生林においては,本数概念そのものがかならずしも明確でない(菊沢,1978)うえに,個体間の大小差がきわめて大きいために,同じ本数であっても゛混みあいかた″に差のある場合が生じるからである。先にしめした,ミズナラ林を対象とした収量-密度図も,よく混みあった一斉林を想定したモデルであるため(菊沢1979 a),さまざまな混みあいかたをした林分に適用範囲をひろげるためには,さらに一工夫を要するのである。
この論文では,林分の゛混みあいかた″を表わす指標として,林分緊密度(stand compactness)を定義した。次に,各緊密度に応じた収量-密度図を描くことにより,その適用範囲をひろげるとともに,実際の林分のとりあつかいに対しても,より有効なものにしようとした。

トドマツ人工林の施業法に関する研究(4)
-久保トドマツ間伐試験林の生長解析-
(PDF,10.3MB)
p.9~28
阿部信行
この研究の目的は,作業方法別に生長量がどのように変わるかを調べ,これを基にどのような施業方法がそれぞれの地域で最も適しているかを決定することを目指している。既に一斉林を対象としたトドマツ人工林収穫予想表(阿部,1980)を作成し,生長量の基礎となる林分葉量に関しての生態的を調査(阿部.1981)を終えている。
今回は人工林を施業していく上で,最も重要を間伐の問題を究明していくために,著名を「久保のトドマツ間伐試験林(池団林務署管内)」の解析を試みた。この試験林は1929年に植栽されたトドマツ林の一部に,馬渕冬樹氏及び当時池田林務署に在勤されていた方々により,1948年秋に設置されたものである。設定時の林齢20年生から,5年ごとに測定を繰返して既に30年を経過している。
本研究を進めていく上で,時系列的に測定されてきているこの試験地の情報は,きわめて重要であるので,1975年から道有材と共同で毎木調査及び立木位置図の作成を実行している。このたび試験林設定30年を迎えて,道有林側の依頼により,過去の測走値も含めて整理することになった。整理された数値を基に,林分の推移をとりまとめたので結果を報告する。
この貴重を試験地を設定し,そして継続的に調査されてきた関係者各位の御努力に心から敬意を表す。同時に,調査に際して現地の池田林務署の各位並びに電算機使用にあたり,格別の御配慮を頂いた前道有林業務課電算主査鈴木隆氏及び戸田治信電算主査に深謝申しあげる。また,前道立林業試験場経営科長佐々木野信悦氏(現雄武林務署経営計画専門員)には,取りまとめ方法に関して助言を受けた。 心からお礼を述べる。

トドマツ人工林の林分閉鎖と密度管理に関する研究 (PDF,1.45MB) p.29~58
増田憲二郎
クローネの形と大きさは,林木の生長を判断する最良の指標と考えられている。しかしながら,クローネの形状に基づいて林分管理を行なうという手法は,現在までのところ開発されていない。
この研究は,トドマツ人工林の樹高生長を基準において,クローネの形状と林分閉鎖との関係を明らかにし,これをもとに,立木本数密度,林齢,年輪幅の相互関係にまで考察を及ぼし,年輪幅に目標を置いた林分管理の指針を得ようとしたものである。
この研究においてわたくしは,枝張りの競合に基づくクローネ形状の変化に着目した。そこで本来のクローネ形状を,梢頭部から下方に向うクローネ半径の外縁を表わす放物線状の曲線(クローネ曲線)と,林齢の経過によって上昇拡大する最大枝張りの生長経過を表わす曲線(枝張り生長曲線)との合成によるものとして理解した。これを表わす方法として,それぞれの曲線に適合する曲線式を導いて,両式で描かれる曲線の交点を幹軸からの距離で表わし,これを交点枝張りとして用いた。
この過程においてわたくしは,クローネ曲線が,林分生長に伴って生長することを,また同一樹高ならば,立木本数密度の影響をうけて変化することを見いだした。したがって,交点枝張りもまた樹高生長とともに生長し,立木本数密度の影響をうけて変化する。言い換えれば,交点枝張りを仲立ちとすることによって,樹高と本数密度との間にある諸関係を知ることができるし,それをもとに,林分の混み合い方についての情報をも得ることができるわけである。この関係を,樹高と交点枝張りとの関係で表わす交点枝張り図として図示した。
また,基準となるような林分の交点枝張りを仲立ちとして,同図に直径および林齢を導入し,これら相互の関係を把握することを試みた。
また,これらの試みによって得られた成果に基づいて年輪密度管理図を作成することにより,任意の年輪幅に目標を置いた最適植栽密度の選定にはじまる密度管理の指針を見いだした。
さらにまた,密度管理に伴って現われる枝打ち許容高の求め方のほか,林分閉鎖に関して,閉鎖現況の診断や,閉鎖の推移を予測する方法を見いだした。
本研究に用いた資料を得るための調査に際し,多大の協力を賜わった鈴木 巌氏,ならびに本稿の編集にあたり,とくに貴重な助言を賜わった道立林業試験場の菊沢喜八郎博士,東浦康友氏,ならびに,英文の校閲に協力を賜わったMr.+Mrs.─Saul&Mary Kay Stensvaag 両氏の各位に対し,心より謝意を表する。

亜高山帯における機械地拵えによる天然更新技術 (PDF,784KB) p.59~73
斎藤新一郎・斉藤 満
北海道中央高地の亜高山帯は,森林帯としては亜寒帯にほぼ対応し,北方系の落葉広葉樹および常緑針葉樹から森林が構成されている。他方,林業的には,この亜高山帯は,高標高・寒冷・多雪の地域であるため,苗木植栽による造林の成果があまり期待されない場所とみられている。
北海道有林では,このような高寒地において,天然下種更新作業方式を採用している。地拵え方法として,1972年より前には,全刈りないし火入れによる地表処理を行い,1972年からは,ブルドーザーによる地表処理(かき起こし作業)を行ってきた(青柳,1983)。これらの成果については,興部林務署,雄武林務署,当別林務署,および倶知安林務署の報告がある。
筆者たちは,旭川林務署管内の米飯地区にある亜高山帯(図-1)において,チシマザサ生育地のかき起こし地拵え地における樹木の更新状態を調査した。そして,地拵え方法,母樹の生育密度,なり年,種子の散布距離,稚苗の生育密度,生長量,生存競争,保育作業の必要性などを検討し,また,旭川林務署の1982年の調査資料(未発表)も参考にして,この地域におけるダケカンバ,エゾマツおよびトドマツの更新稚苗の成林に向けての技術的な提案をしようと試みた。
本調査地の東南に隣接する勇駒別(現旭岳温泉)地域においては,当場自然保護科が1974~1982年に,亜高山帯の森林調査を継続し,風致林施業,樹木の分布様式,標高による樹種構成の変化,樹木の分布相関,チシマザサの枯死と再生,その現存量,積雪調査,植栽成績,などの研究成果(嘉戸ほか,1976~80)を発表してきた。
本稿は,これら一連の諸研究を参考にして,亜高山帯における森林の施業技術のうちの,ブルドーザー地拵えによる天然下種更新の可能性に言及したものである。なお,本稿の一部を,北海道林業技術研究発表大会(1983.1.28)において発表した(斎藤新ほか,1983)。
本稿の作製にあたり,現地調査を支援された旭川林務署の前田雪郎署長,竹内恒夫経営計画専門員,金巻 亮造林課長,久富吉栄技師,旭川事業所の松木 登所長,浅沼竜彦技師,北海道立林業試験場の伊藤重右ヱ門緑化部長,および佐藤孝夫研究員に対し,感謝の意を表する。

日高地方における海岸段丘斜面の植生実態と崩壊 (PDF,696KB) p.75~86
薄井五郎・清水 一・成田俊司・柳井清治
日高地方は海岸段丘の発達が著しい地域である。段丘上の平地は競争馬の生産牧場として利用されており,また段丘の下の平坦部は道路,鉄道,人家,田畑等に利用されている。
日高地方の平均的な年降水量は1000~1200mmであるが,1981年8月5日の日降水量は門別町で300mmに達したため,段丘斜面が大面積にわたって崩壊し,その規模は当地域では有史以来最大となった。
被害実態ならびにいくつかの環境因子解析については,すでに報告されている(北海道,1982)。その中で,1981年崩壊は斜面に成立する植生に関係なく発生したと述べられている。斜面上の植生は崩壊によって破壊・更新されるという観点にたてば,斜面上の植生は崩壊の指標として利用できる可能性がある。当報告ではまずこの点について検討した。つぎに,調査地の代表的樹種について根系の形態と分布について検討を行い,土壌保全機能との関連について考察した。

カラマツヤツバキクイの繁殖に及ぼす密度の影響 (PDF,491KB) p.87~94
鈴木重孝
1981年8月23日の台風15号は,洞爺丸台風(1954年)に次ぐ大きな森林被害を北海道にもたらした。被害材積は天然林,人工林あわせて370万m3 に達し,そのうちカラマツ林の被害は129万m3 であった。さらに同年10月23日夜には道北地方にひと晩で70cmもの湿雪が降り,3~4齢級のカラマツ林を中心に21万m3 の被害がでた。これらの被害地は,図-1にしめしたように広範囲にわたり,被害量も多かったので,流通上の制約もあって被害木整理が3年間にまたがる計画となった。その場合,整理の遅れた被害林分はカラマツヤツバキクイ(Ips cembrae HEER)の絶好の繁殖場所となり,大量の枯死木がでる危険性が予測された。
この種の生態や防除法に関しては,加辺(1949),井上(1951),井上・小泉(1952),篠原(1976),鈴木・新田(1981)などの報告はあるが,大規模な風害や雪害の後でこの種がどのような発生のしかたをするのか,またそれに対してどのような対策を講じるべきかといった点については明らかでない。そこで今回の風雪害を機会に,カラマツヤツバキクイの密度が増加する機構,立木被害発生とその伝播機構,天敵の働き,薬剤の効果などで,今まで十分に明らかにされていなかった事がらを調べ,今後の防除対策に資することになった。調査期間は1982年から1984年までの3年間の予定である。その第1報として,1982年度の調査結果をもとにカラマツヤツバキクイの発生消長ならびに密度と繁殖との関係をとりまとめた。
本文に入るに先だち,調査地設定に便宜をはかっていただいた鵡川町,津別町,足寄町,美瑛町,下川町役場の担当者,調査に際し助言・協力をいただいた北海道林務部造林課石田常正森林保護係長ならびに調査を直接に手伝っていただいた胆振支庁,網走支庁,十勝支庁,上川支庁の担当者,胆振東部,美幌,足寄,旭川,名寄地区林業指導事務所の各位に対して感謝の意を表する。

岩見沢地方の天然生落葉広葉樹林における繁殖期の鳥類群集 (PDF,1.86MB) p.95~103
鈴木悌司・斉藤新一郎・斉藤 満
北海道には広大な面積の天然生林がある。近年,森林施業が針葉樹の一斉造林を重点としてきたために,天然生林が,とくに広葉樹林が減少しつつあるのが実状である。しかしながら,樹種が豊富で,林分構造の複雑な天然生広葉樹林は,野生鳥類の繁殖環境として重要な位置を占めている。とくに,森林に生息する鳥類には,有害昆虫や野鼠の天敵となっているものが多い。このようなことから,野生鳥類の適正な保護管理をするためには,広葉樹林に生息する鳥類群集の実態を明らかにする必要がある。
このような見地から,筆者たちは針葉樹の混交しない天然生の落葉広葉樹林に試験地を設定して,1981年と1982年の繁殖期における鳥類の生息状況を調査し,岩見沢地方における森林と鳥類の関係について考察した。なお,この研究は,北海道生活環境部から依頼された「森林性鳥類の個体数推定法に関する調査研究」の一環として行ったものである。
試験地の設定に便宜をはかられた北海道営林局岩見沢営林署の関係各位に感謝の意を表する。また,調査に協力いただいた北海道生活環境部の小川 巌氏および当場の嘉戸昭夫氏(現富山県林業試験場)に厚く御礼申し上げる。

照査法に関する基礎的研究-北海道有林置戸照査法試験林の分析- (PDF,6.28MB) p.105~170
加納 博
本試験林の施業は昭和30年設定以後満26年を経過し,その間総合的に事業の運営が行われた。昭和54年度において,施業区の全林班は主伐が2巡し,2経理期の生長量の測定結果が得られ,林分構成が林分生長に及ぼす影響が明らかとなってきた。
本研究における結論の第1点は,これまで,北海道における天然林の生産力は人工林よりも低く,かつ,後継樹の不足による森林の恒続性の低下ないし欠除が問題点とされてきた。本試験林の長期にわたる天然林施業試験において,照査法を適用した結果,天然林の生長量が人工林の生長量に決して劣るものでないことを実証した。
加えて,形質の点ではむしろ優れており,かつ,森林の恒続性が確保されていることもしめした。
北海道の森林の総平均生長量は年・ha当り1.9m3であり,また,北見経営区での集約な択伐作業の生長量は5.9m3である。しかし,本試験林の施業結果で得られた生長量は,施業区平均で年・ha当り10SVであり,最小で4.5SV,最大で15.1SVの値を得ており,きわめて大きな生長量となっている。
このことは,照査法では,伐採手段,すなわち,収穫行為が林分生長量の増加をもたらしていると同時に,更新の確保にも直接的に関与していることをしめしている。さらに,本試験林での伐採木選定基準の妥当性が確認された。
第2点は,森林の取扱いは,対象樹種並びに森林環境によって異なり,スイスにおいてビヨレイ等がトウヒ,モミ,ブナの混交林を対象としているのに対して,本試験林では,トドマツ,エゾマツ,シナノキその他広葉樹の混交林を対象としている。従って,これら樹種の特性を考慮した本試験林特有の森林の取扱いを行っている。かかる樹種からなる林分を対象として,収穫の保続を可能とする条件としての生長量の多寡を決めるものは,林分構成であることをしめした。
従って,林分構成の各要因と生長量の多寡について分析した結果,次の点が関係していることをしめした。すなわち,生長量を大ならしめている林分構成の要因は,択伐林型をなしていること,針葉樹の材積混交割合が多いこと,小径木の直径階別本数割合が多いこと,大径木の直径級別材積割合が多いこと,さらに,進級木本数が多いこと等の諸点である。
土壌型との関係はあまり大きくなく,林分構成が主であることをしめした。理想の林分構成については,施業をさらに繰返すことによって,直径級別材積割合について調整を加えたい。
第3点は,照査法が北海道の天然林において,先に,問題点と方向の項にも述べたように,適用の条件さえ整えることができるならば,その応用は可能であることをしめした。
おわりに,本研究の成果が北海道の広大な天然林における施業技術の改善に貢献するならば幸いである。


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