北海道林業試験場研究報告-第29号-

(平成3年10月 発行)

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第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

カラマツ芽ばえの菌根形成と成長 (PDF,721KB) p.1~13
村田義一
ハナイグチとシロヌメリイグチによるカラマツの菌根形成を試験管内の接種試験によって確認するとともに,苗齢60日の芽ばえを用い,菌根形成に伴う苗木形質の向上について検討した。
ハナイグチの2菌株,シロヌメリイグチの1菌株をそれぞれ接種すると,カラマツに良く発達した外生菌根が形成された。それらの菌根は形態的にほとんど違いがなかった。
ハナイグチの菌根は接種菌量が多いほど形成されやすかった。オートクレーブ滅菌した林地土壌では,培養期間中に,良く発達したシロヌメリイグチの菌根は形成されなかった。しかし,B-2液などを添加すると菌根形成は順調に進行し,B-2液にカラマツ風乾葉の抽出液を添加した栄養区で菌根形成は特に良好であった。ハイポネックスの希釈液は,カラマツ風乾葉の抽出液を加えたB-2液やB-3液に比べ,ハナイグチやシロヌメリイグチの菌根形成にあまり有効ではなかった。この傾向は,シロヌメリイグチの菌根形成についで特に顕著であった。3者の栄養区で比較すると,ハナイグチやシロヌメリイグチの菌根形成は,カラマツ風乾葉の抽出液を加えたB-3液を添加したとき最も旺盛であった。なお,試験管開口部をアルミ箔で封じた場合に比べ,一時期アルミ箔を除去してやや乾燥ぎみにカラマツを育てたときの方が,ハナイグチの菌根形成は促進された。シロヌメリイグチの菌根形成は,グルタミン酸を窒素源にしたときも,無機態窒素化合物のときに比べてあまり劣らないように思われた。ハナイグチやシロヌメリイグチの菌根形成は菌株によって非常に異なった。
ハナイグチとシロヌメリイグチの菌根形成の効果は,カラマツの芽ばえの発根促進と葉の総重量の増加に顕著に現れていた。親和性が高いと考えられる菌株の場合は,苗長,地下部の長さ,着葉数なども増加した。これらの効果は,接種菌量,培養方法,栄養条件などで非常に異なった。本稿の一連の接種試験では,接種菌量が多く,カラマツ風乾葉の抽出液を添加したB-3液を栄養源として,やや乾燥ぎみにカラマツを育てたとき,菌根形成が最も旺盛になり,それに伴って上記の苗木形質が最も向上するものと思われた。

標高メッシュデータから求めた土壌重力水の残存日数とトドマツ樹高成長の関係 (PDF,1.37MB) p.15~20
薄井五郎・宮木雅美
地形は林木の成長に重大を影響を与える。森林立地学的に地形を数量化する妥当を方法は現在まで示されておらす,地形の位置や形状の区分別に,成長差をうまく説明するように続計的に与点する合目的的な方法がとられてきた。この方法は,生態的を根拠から発想されたものではないために,カテゴリーの与点のされかたに再現性や論理性を欠くことが避けられない。地形図から,生態的根拠がもてるように地形因子を数量化できれば,林地生産力の広範囲な評価が可能になると同時に,地形以外の因子の関与を推定することも可能になるであろう。
この目的のためには,次に説明するように,土壌重力水の残存日数が有効であると考えられる。いま,土壌が十分に湿った後に地形に応じて乾燥してゆく過程を考えると,凸地形では速やかに乾き,凹地形では適潤を期間が長い。土壌水分が適潤である期間が長い地形では,水溶性養分も集積しており,土壌層も厚く,さらには風衝から守られることなど,林木の成長に有利を環壇であることが示されるであろう。土壌水分の移動は地形にしたがって,重力水によって起こるから,ある地点における重力水の残存日数は森林立地の良好な指標と考えることができる。
前報(薄井1989a)では,地形を標高メッシュデータから,窪田ほか(1987)の方法を応用して垂力水残存日数を計算し,樹高成長との対応を検討した結果,応用が可能であることがわかった。なお,そのとき蒸発散量を一定とおいたため,改善の要があった。本報告ではこの点を改め,地点ごとの斜面方位・傾斜から蒸発数量を推定し,また地下への浸透項を加えて土壌重力水の残存日数を推定した。
また,本報では検討対象を3つの反復区すべてについて行い.192プロットに増やした。
その結果,残存日数は地形によるトドマツ樹高変動の半分以上を説明する有力を因子であることがわかったので報告する。

カラマツ疎仕立て林分の成長と間伐効果 (PDF,772KB) p.21~26
福地 稔
利用価値の高い大径材を早期に生産できる施業技術を確立するため,「カラマツ間伐施業指針」とほぼ同様に本数管理された林齢の異なる3つの林分で間伐試験を実施した。間伐後5年間の林分材積成長量は,それぞれ施業指針の予測値にほぼ相当した。
間伐効果をベータ型Y-N曲線を用いて検討した。間伐効果は若齢林分ほど顕著に現れた。また,林齢にかかわらず疎仕立ての施業方法により,Y-N曲線の傾きは一様化する傾向にあった。

ヘリコプター小面積散布による殺そ剤の落下分散状況 (PDF,137KB) p.27~32
中田圭亮
農林水産航空事業実施指導要領に従って,空中散布における殺そ剤の落下分散状況を調べた。飛行諸元には2条件を設定し,対地速度を操作した。試験ではベル206B型ヘリコプター機を利用して65km/時と80km/時の指定速度で小面積の仮想造林地に無毒粒剤を散布した。航空機の対地速度はほぼ指定通りであった。粒剤は散布予定量を超えて消費されていた。単位面積当たりの平均落下粒数は予定数に達していなかった。65km/時の対地速度を指定した場合に,ほぼ計画通りの散布状況が確認できた。

全道から収集したエゾヤマザクラの特性(1)
-選抜個体別の成長,樹形および開花状況-
(PDF,325KB)
p.33~38
佐藤孝夫・斎藤 晶・梶 勝次
全道各地から開花状態の優れたエゾヤマザクラ140個体を選び,つぎ木で養成した苗600本を1977年に林業試験場グリーンプール内に植栽した。1990年に残存していた114クローンについて,被害状況,樹高,胸高直径,枝張り,開花回数,開花量,開花時期を調べた。その結果,クローンごとにみた樹高は2.7~11.0m,胸高直径は3.0~21.5cmであり,成長にはクローン間に大きな差がみられた。また,連年開花するものと樹齢15年を経ても開花しないもの,開花量の多いものと少ないものがあった。さらに開花日の早い選抜個体と遅いものには13日間の差がみられるなど,道内から選ばれた個体間の諸形質にいずれも大きな変異が認められた。

登別市温泉町の山腹斜面における森林植生および根張り (PDF,1.69MB) p.39~49
斎藤新一郎・成田俊司・清水 一・柳井清治
登別市温泉町の市街地周辺には,急斜面が発達し,不安定な降下火山灰層の存在と集中豪雨の頻発とから,斜面崩壊による災害が発生しやすい。これらの急斜面には,天然生の落葉広葉樹林が生育し,樹冠や林床植生による降雨の遮断,深い根張りによる不安定土層の緊縛などに貢献している。これらは,ダケカンバを主体とする亜寒帯林とミズナラを主体とする冷温帯林であり,人為の影響を受けているが,林冠高が10~20m,胸高直径が10~50cm,林冠構成木の密度が500~600本/haであった。また,根張りでは,ミズナラ,ハリギリは深くて,基岩にまで到達しているが,ケヤマハンノキ,コシアブラなどは浅くて,降下軽石層にとどまっている。現存する森林を伐採することなく保存し,復旧治山工事では,植生工として,浅根・先駆タイプの樹種,深根・後継タイプの樹種および耐陰性・下生え樹種を組合わせて導入することが望ましい。

トドマツ高齢人工林の収穫・更新試験(2)
-孔状地の大きさと植栽木の成長-
(PDF,1.41MB)
p.51~61
木幡靖夫・浅井達弘・由田茂一・対馬俊之
径級伐採後の林分で発生した孔状地の面積を調べたところ,胸高直径32cm以上の立木を伐採した区では平均248㎡,同36cm以上の伐採区では148㎡,同40cm以上の伐採区では81㎡となり,孔状地の面積が伐採の強さと比例的に大きくなる状況が確認された。この中の34箇所の孔状地を対象に照度を測定し,孔状地の面積と平均相対照度との間に密接な相関関係を認めた。得られた回帰式より,面積200㎡の孔状地では平均相対照度が約47%,400㎡では約60%と推定された。また,相対照度測定値の頻度分布は孔状地の面積が増大するに伴ってL字型からJ字型の分布となった。L字型の分布型は面積110㎡以下の孔状地に多く,J字型は230㎡以上の大きさの孔状地でみられた。しかし,同程度の面積であっても分布型は異なる場合があり,特に面積110㎡以下の孔状地ではかなりの違いがみられた。このようなことから,孔状地内の明るさが単に面積だけではなく,その形状や周囲木の大きさ,林分密度等の影響も受けていることが推察された。孔状地内に植栽されたトドマツ,工ゾマツ,アカエゾマツの‘85~‘89年(4~8年生)の樹高成長状況を解析した結果,トドマツおよびアカエゾマツの‘89年樹高と孔状地の面積との間に極めて密接な相関関係が認められ,孔状地面積の対数函数的に樹高が大きくなっていた。この状況は,特にトドマツにおいて顕著にみられた。一方,エゾマツではこのような関係が認められなかった。トドマツ,エゾマツ,アカエゾマツとも相対照度70~80%の孔状地では良好な樹高成長を示したが,相対照度30%未満の孔状地では樹高成長が明らかに劣っていた。孔状地内の相対照度が30%以上であれば,トドマツ,エゾマツ,アカエゾマツを植栽しても樹高成長が大きく低下する恐れはないと考えられた。

ブナ二次林の上層木伐採試験-林分構造と7年間の林分成長量- (PDF,849KB) p.63~70
菊地 健
伐採後7年を経過したブナ二次林の上層木伐採試験地において,伐採前の林分構造および伐採後7年間の残存木の成長状況について解析した。
ブナを主とする二次林の構成樹種は,直径階別の本数分布のパターンが,L字型と1山型に大別できた。前者に属する樹種は,ブナ,カエデ類,アズキナシ,サラサドウダン,アオダモ,アカシデ,後者に属する樹種はミズナラ,ホオノキ,コシアブラである。地形と植生出現の頻度を種多様度指数によって解析したところ,斜面中部,下部に比べ上部の樹種多様度が高かった。
超強度伐採区(材積伐採率76%),強度伐採区(材積伐採率53%)および無施業区の7年間の林分粗成長量は,それぞれ16m3,27m3,38m3 となり,超強度伐採区は無施業区の半分以下となった。このように低い成長量で推移したのは,伐倒時のキズが原因で枯損した個体が多かったためで,ツナが腐朽しやすい樹種であることを示している。残存木の材積成長率では,超強度伐採区が5%前後で無施業区の2倍以上となった。斜面位置別の材積成長率は間伐区では斜面下部ほど大きかった。
直径成長は,伐採前の直径が大きいほど,また伐採率が高いほど大きかった。伐採による成長促進の効果は,伐採後1~3年間にもみられた。


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