北海道林業試験場研究報告-第30号-

(平成5年3月 発行)

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落葉広葉樹の種子繁殖に関する生態学的研究 (PDF,1.46MB) p.1~67
水井憲雄
広葉樹の天然更新や種苗生産を効率的に進めるために,その初期の問題として種子の供給機構を解明することは重要である。本論文は,広葉樹の開花・結実特性,種子の豊凶習性,土壌中における種子の生存期間などを明らかにすることを目的とした。
広葉樹数種の開花・結実過程では,カンバ類やキハダを除く数樹種において、開花から果実成熟までに多くの果実が未熟で脱落する現象を観察した。これに関与する要因をキタコブシ,エゾヤマザクラで調べた結果,至近的には花粉が制限となっていた。キハダで明らかになったことは,種子サイズに現れた資源制限であった。
1981年から1991年まで,広葉樹の種子の豊凶を調べた。種子重と生産種子数との間には負の関係があり,数では小種子が多産,大種子は少産であった。種子重-種子数関係を用いて各樹種を統一的に評価する定量的な豊凶基準を示した。この基準により,主な広葉樹の豊凶を評価し,種子生産間隔の長短を類型化した。さらに,ミズナラの豊凶調査を北海道全域で行った結果,豊作木は地域的に集中することがわかった。
埋土種子の生存期間を実験的に調べ,主な広葉樹の発芽力の減衰パターンを4タイプに区分した。種子散布を鳥に委ねる樹種は埋土種子として長命であった。ただし,短命な樹種でも保存条件を制御することにより,また人工的な処理により発芽力を維持することが可能であった。

全道から収集したエゾヤマザクラの特性(2)
-開花特性-
(PDF,212KB)
p.68~73
佐藤孝夫・梶 勝次
全道から選抜し,1977年に植栽したエゾヤマザクラの114クローンの中から,鑑賞価値の高いと思われる開花量の多い個体や樹形に特徴のある個体など33個体を選び,開花の特性,花の形態を調べた。開花時期では,1990年に開花の早かった個体は1991年においても早く,遅かった個体は遅い傾向がみられた。開花量も前年に多かった個体は,翌年も多く,少ないものは少ない傾向があり,年度により大きく変化しないことが分かった。また,花の色は淡紅色のものが全体の69%を占め,花の大きさは2.9~4.3cm(平均3.7cm)で個体間に差が認められた。花弁の形も個体によって異なっていた。その結果,全道から選ばれたエゾヤマザクラのうち,13個体が樹形や開花特性,花の形態などにおいて特徴的なものであると評価された。

ハナイグチとシロヌメリイグチの培養性質 (PDF,749KB) p.74~87
村田義一
ハナイグチとシロヌメリイグチの菌糸成長に最適なC-N比の範囲は,菌株によって,80以下,40以下,40に分かれた。全供試菌株に共通した最適C-N比は40であった。
単糖類や寡糖類では,グルコース,マンノース,トレハロースがハナイグチの菌糸成長によく利用された。そのほか,フルクトースやセロビオースを利用できる菌株もあった。一方,シロヌメリイグチでは,これら以外に,マルトースがよく利用された。多糖類では,ハナイグチはイヌリン,デンプン,グリコーゲンをほとんど利用しなかった。これに反し,シロヌメリイグチはデンプンやグリコーゲンを単独でも炭素源として利用できそうであった。それらに少量のグルコースを添加したとき,無添加やグルコース単独のときに比べ,菌糸成長は明らかに旺盛であった。リグニン,セルロース,ガラクツロン酸はハナイグチやシロヌメリイグチに利用されなかった。
ハナイグチやシロヌメリイグチの菌糸成長に適した窒素源は,アンモニア態窒素化合物,尿素,アミノ酸の一部とそれらのアミド,蛋白質関連物質のペプトンやカザミノ酸であった。硝酸態窒素化合物は多少利用される程度であった。アミノ酸類では,アラニン,セリン,グルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸,アスパラギン,アルギニンが一般によく利用された。菌株によっては,これらのアミノ酸類の多くはアンモニア態窒素化合物よりも有効な窒素源と考えられ,なかには,単独でも,カザミノ酸よりも菌糸成長に有効なものがあった。
ハナイグチやシロヌメリイグチの菌糸成長適温は,どの菌株でも,20~25℃の範囲にあった。
ハナイグチは初期pHが5ないし6未満のかなり広範なpH域で,菌糸成長が非常に旺盛であった。pH6以上では菌糸成長は急激に悪化し,アルカリ側ではほとんど成長しなかった。一方,シロヌメリイグチのpHに対する反応は菌株によって異なり,ハナイグチのような一定の傾向が認められなかった。
ハナイグチやシロヌメリイグチは,チアミンによって菌糸成長が非常に促進された。その最低有効濃度は25~50μg/lであった。ビオチン,葉酸,ニコチン酸は一部の菌株では有効であった。塩酸ピリドキシン,パントテン酸などのビタミン類は,菌糸成長に効果がなかった。
風乾したカラマツ葉のアルコール抽出液は,ハナイグチやシロヌメリイグチの菌糸成長を著しく促進した。その効果は0.7~1.4%(v/v)の低濃度でも顕著であった。
ハナイグチやシロヌメリイグチの培養性質は,菌株によってかなり異なった。このことは一般的な種内変異を意味していた。種間では,後者はマルトースをよく利用し,デンプンやグリコーゲンの分解能が高いと思われる点で,前者と生理的性質が異なった。なお,供試菌株のなかには,カラマツに外生菌根をつくりにくいものが含まれていたが,それらの特徴は,アミノ酸類を単独ではあまり利用できないことにあった。

北海道の針葉樹を加害するタネバエ類について (PDF,10.2MB) p.88~105
上條一昭
1988年から4年間,カラマツ類,トドマツ,エゾマツ類の球果を加害するカラマツタネバエ,トドマツタネバエ,トウヒタネバエの生活史,習性,被害程度を調べた結果を述べ,種内・種間関係,タネバ工の球果害虫としての特徴についてもふれた。タネバエ幼虫の発育時期は球果害虫のなかでもっとも早く,3種とも花粉の飛散時期あるいはその直後の球果に産卵,6月下旬から7月にかけて発育を終了する。球果被害率は凶作~並作年には数十%,時には90%近くに達することがある。タネバエが頑丈な口器を備えた2齢幼虫で孵化するのは,穿入を容易にし発育期間を短縮するための適応と考えられる。幼虫はヤ二の中を自由に動くことができ,ヤニによる死亡は非常に少ないと思われる。2齢幼虫同士の共食いがかなりあるらしい。タネバエの食害した部分を食べる2次性昆虫が多く,1次性の蛾の中にも食害部に好んで産卵する種がみられた。


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